雪駄+下駄のような新しい履物の登場
和工房みずとり「男の下駄 茶人 ブラック」14,580円(税込) サイズは25~25.5CM対応のM、26~26.5CM対応のL、27~27.5CM対応のLLの三種類(写真はLLサイズ) |
着物や浴衣、甚兵衛といった和服を着た時に履くものとしては、通常、男性の場合、下駄か雪駄になると思います。明治や大正の書生さんは、和装に靴というスタイルだったりもしたようですが、あれは、過渡期の時代ならではの風俗。現在は、むしろ、洋服に下駄や草履という、逆のパターンの方がカッコ良いような気もします。
実際、ガイド納富は、ビーチサンダルがあまり好きではないこともあって、夏場は下駄を履くことも多いのです。ただ、下駄は、比較的重いため、鼻緒を挟む親指と人さし指の付け根にキュッと力を入れる必要があって、長距離の歩行だと疲れてしまうこともあります。そういう時は、雪駄の方が軽くて便利なのですが、雪駄は雪駄で、土の地面を歩くために作られていることもあって、アスファルトだと衝撃が直接伝わってしまいます。
左から、ベージュ、オレンジ、ブラックの3色のカラーバリエーションがある。サイズは各色とも、25~25.5CM対応のM、26~26.5CM対応のL、27~27.5CM対応のLLの三種類 |
和工房みずとりの「男の下駄 茶人」は、そんな下駄と雪駄の良いとこ取りのような履物。雪駄の形状を削り出しのひのきで再現した、言わば木製の雪駄なのですが、実際に履いてみると、鼻緒を挟む指に力を入れなくても、足の裏にぴたりと追従してくれるので、下駄に慣れない人でもかなり歩きやすい、本当に、雪駄のような感覚で履ける下駄になっていました。
千利休がデザインしたと言われる形
左がガイド納富愛用の「手彫り下駄」、同じ下駄でもコンセプトが違うと、これだけデザインも違ってくる |
雪駄は、竹の皮で作った草履の底に革を貼ったもので、濡れた路地や雪の上を歩く際に濡れないようにと、千利休が工夫したものと言われています。かかと部分に後金が付いていて、前方が上に沿った形は、何とも風流で、千利休やノ貫が考案したという伝説も、あながち嘘ではないかもしれないと思わせるものがあります。
その雪駄の意匠を、下駄に取り入れるにあたって、足裏の形をシンプルな曲線に置き換えた「男の下駄 茶人」のデザインは、とてもキレイで、その形を見ているだけで、足を乗せたくなりました。ガイド納富が普段愛用しているのも、「男の下駄 茶人」と同じ、和工房みずとりの「手彫り下駄」なのですが、この下駄がまた、やたらと足裏へのフィット感が良いのです。それを知っているだけに、この「男の下駄 茶人」が描く微妙な曲線に、足が反応したようです。
木目が美しいひのき削り出しのボディ。足の裏への当たりが優しい |
本体は、静岡産のひのきの削り出し。元々、ひのきの下駄というのは、その足へのフィット感と言うか、足裏にあたる木の感触の心地よさが魅力です。そのひのきの感触を、絶妙な曲線と、見事に磨かれた表面の仕上げの見事さがさらに強調。ちょっと驚くほどの履き心地の良さでした。
下駄が苦手な人でも歩きやすい構造
柔らかい帆布で作られた鼻緒は、使っていると馴染んでくる |
鼻緒は、ガイド納富が愛用する「手彫り下駄」よりも、少し固めですが、普通の下駄に比べると、相当柔らかいもの。そのため、慣れない人でも指への負担は軽くなっています。もっとも、柔らか過ぎると、鼻緒を挟む指の力が必要になるので、本来は、少し固いくらいが歩きやすいのです。そのあたりのバランスが良く、「手彫り下駄」のように、カランコロンとは鳴りませんが、その分、指先に力を入れなくても、歩く足の裏にぴたりと下駄がついてきてくれます。
裏は、前方にゴムの滑り止めがかかと部分は柔らかめのプロテクターが貼られている |
ただ、挟む指には力がいらないけれど、鼻緒が足の甲に当たる部分が擦れて痛い場合があります。この「男の下駄茶人」の場合、「手彫り下駄」ほどではないけれど、柔らかい帆布が使われているので、履いている内に柔らかくなります。ただ、それ以前に擦り傷などを作ってしまうと、そこが痛くてしばらく履けなくなってしまいます。慣れない内は、絆創膏などを擦れる箇所に貼っておきましょう。それだけで、すっかり快適な下駄ライフを楽しむことが出来ます。
ガイド納富の「こだわりチェック」
それにしても、和工房みずとりさんの下駄は、履くたびに、その履き心地に感動します。しかも、今回の「男の下駄 茶人」のように、雪駄と下駄の良い所を合わせた上に、現代の道路事情まで踏まえて、普段歩くのに使える、しかも心地よい下駄を作り出すのですから、凄いものだと思うのです。「男の下駄 茶人」については、ガイド納富の奥さんも「このままの形でサイズが小さい女性向きが欲しい」と言っていました。シンプルなデザインは女性も十分使えるものです。
細かいことを言うと、これは染料の関係かも知れませんが、ベージュやオレンジに比べ、ブラックの鼻緒だけが、やや固い感じがしました。足の指や甲の皮が弱い人は、オレンジやベージュを選んだ方が良いかも知れません。また、雪駄のように後金が付いているのではなく、削れないようなプロテクターが貼られているので、雪駄独特の足音はしませんが、多少かかとを引きずっても、十分に長く使えるようになっています。
下駄とは言っても、スタイルは雪駄だし、かつてビーサンのことを雪駄と呼ぶ人達もいたように、この「男の下駄 茶人」は、洋装にも似合います。ひのきの木目の色合いも涼しげだし、大人の男の夏の履物として、とてもカッコ良いと思うのです。雨の日にも履いてみたのですが、高さも思ったよりあるので、問題なく歩けました。
浴衣の女性の隣を歩く時、和装までは出来なくても、この下駄を履いてるだけで、随分と格好がつくと思います。そういう意味でも男性必携の夏グッズかも知れません。