事例をご紹介する前の前提

相続税,仕組み

まずは相続税の計算法を見てみましょう

さて、今回の3つの事例はすべて
●遺産額:1億4000万円
●相続人(法定相続人):配偶者と子2人の合計3人

という条件でご紹介していきますが、基本的にこの場合の相続税の総額は下記の計算によって750万円となります。まずこれを頭に入れておいてください。

■相続税の計算(基礎控除を引いて、法定相続分で按分し税率を乗じ、その金額を合算)
1億4000万円-8000万円(基礎控除)=6000万円
6000万円×1/2(法定相続分)=3000万円 → 3000万円×15%(税率)-50万円(控除額)=400万円
6000万円×1/4=1500万円 → 1500万円×15%-50万円=175万円
6000万円×1/4=1500万円 → 1500万円×15%-50万円=175万円
★400万円+175万円+175万円=750万円(相続税の総額)

ただ、相続税は、配偶者が財産のどれだけの割合を相続するかで納付すべき税額が違ってきます。しかし相続税が安くなることだけが配偶者の相続の割合を決めるポイントではなく、それぞれの家庭にとってのベストな配偶者の相続の割合はそのほかの事情によっても違ってくるのです。では、実際の事例を見ていきましょう。

事例1:配偶者(妻)が夫から遺産を全く取得しなかったケース

さて、この事例、配偶者である妻が夫から遺産を全く取得しなかったのは、配偶者の年齢が90歳と次の相続(配偶者からその子どもへの相続)が近く、さらに、配偶者の固有の財産が1億円もあったためです。

この場合、納付すべき相続税額は750万円(特に軽減はなく、上記の相続税の総額と同額)。配偶者の代わりに2人の子どもが代わりに財産を相続するわけですが、相続税は財産の取得割合に応じて決まります。例えば、1人の子が遺産の60%を取得したときは、その人は750万円の60%の450万円を負担します。

ちなみに、今回の相続では配偶者の取得する財産が1000万円増加するごとに、相続税は配偶者軽減で53万円ずつ安くなります。

【なぜ53万円ずつ安くなるか…】
相続税の総額750万円×(配偶者の取得財産1000万円/遺産1億4000万円)=53万円(配偶者軽減)

しかし、それでも配偶者が1円も相続せずに2人の子どもに全額相続させたのには理由が。今回の相続のあと、今度は配偶者が亡くなって子どもに相続する際には、配偶者の固有財産1億円に今回の相続で夫から取得した財産が加わります。すると相続税は、取得財産が1000万円増加するごとに150万円ずつ高くなってしまうのです。

【なぜ取得財産が1,000万円増加するごとに150万円ずつ高くなるか…】
子2人で遺産1億円の場合の相続税は350万円、遺産が1億1000万円の場合の相続税は500万円。その差額150万円。

このように、今回の夫から配偶者の妻、子ども2人への相続においては妻が1000万円相続するごとに相続税が53万円安くなるのですが、その場合、次の母親から子ども2人への相続においては、相続税は子どもの取得財産が1000万円増加するごとに150万円高くなってしまいます。従って、今回と次回の相続をトータルで考えると配偶者は何も取得しない方が得になるというわけです。

この事例のように配偶者の年齢が高く固有の財産がある場合には、今回の相続税だけでなく次回の相続税のことも考慮が必要です。