遺産分割の方法は3つある
遺産を分ける方法は、現物分割、換価分割、代償分割の3つ
●現物分割
一つつひとつの財産ごとに取得者を決める、最も一般的な遺産分割の方法です。例えば「A土地・建物が長男、B土地が次男、C銀行の預金2億円が長男、D銀行の預金1.5億円が次男」といった方法です。
●換価分割
遺産をすべて換金し、相続人に金銭で分配する方法です。例えば、「金銭以外の財産をすべて売却して、遺産のすべてを金銭に換える。その金銭を長男と次男で半分ずつ相続する」といった方法です。
●代償分割
特定の相続人が財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを与える方法です。例えば、「長男がすべての遺産(5億円)を相続し、その代わりに長男が次男に代償金(1億円)を支払う」といった方法です。
代償分割が行われるケースとは
代償分割が行われるのは、自宅・農地・その他事業用地などの不動産や自社株が主な遺産である場合です。これらの財産を分割してしまうと、後々の不都合が生じるからです。代償分割が行われた場合の相続税の計算方法
遺産額が増えるわけではないため、相続税の総額は他の分割方法と変わりません。また、各人の相続税の負担も次のように計算されるため、誰かの負担が重くなることはありません。※以下の事例は平成27年1月以降に発生した相続とする
●事例1
相続人が長男と次男の2人で、長男がすべての財産(5億円)を相続し、長男が次男に代償金として1億円渡す場合
<相続税の総額>
1億5210万円
<各人の相続税>
長男:1億5210万円×((5億円-1億円)/5億円)=1億2168万円
次男:1億5210万円×(1億円/5億円)=3042万円
●事例2
長男が4億円、次男が1億円の現物分割をした場合
<相続税の総額>
1億5210万円
<各人の相続税>
長男:1億5210万円×(4億円/5億円)=1億2168万円
次男:1億5210万円×(1億円/5億円)=3042万円
以上のように結論は同じになります。
代償分割をした場合の資金繰りはどうなる?
●代償金をもらう側代償金をもらう側(一般的には別居の相続人)は、受け取った代償金の中から相続税を納めればいいので特に負担はありません。
●代償金を払う側
代償金を払う側(一般的には同居の相続人)には、非常に重い負担がかかります。売却できない事情があるために代償分割をする訳ですから、代償金と自分の相続税については、自らの収入ですべてまかなわなくてはなりません。さらに厳しいのは、収入には所得税・住民税がかかる点です。税金を引いた後で代償金を払うことになります。
代償分割で代償金をもらう側は、支払う側の重い経済的負担を理解する必要があるでしょう。金融機関からの借り入れや分割払いなど、将来の収入から代償金を支払う場合の支払原資は、収入から税金などが引かれた後の残ったお金になるという理解です。
したがって、相続分に相当する金銭を相続人に要求する際には、相続財産を要求するのと違って、税金などを引いた額を目安に折り合いをつけるのが適当だといえます。
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