地代を払わないと贈与になる?
他人の土地を借りて家を建てる場合は地代を支払うのが通常だが… |
あまりお金をかけずに広めの家を建てたい。そんな希望を満たすために一般的にみられるケースとしては、親が所有している土地に子が住宅を建てて住む場合があります。親が複数の土地を所有しているとか、親の家の敷地に十分な空きスペースがあるなどといった状況でないと実現は困難ですが、可能であれば土地を取得する分のお金を準備する必要がなくなるわけですからメリットは大きいでしょう。
しかし、実際にこのような住宅取得をしようとする人から、「親子間でも地代をやり取りしないと、(親から子への)贈与に該当するのではないか」という質問を受けることがあります。
確かに、他人の土地を借りて家を建てる場合では、賃料として地代を支払うのが通常です。この地代を無料にすると、貸主から借主への地代分の贈与とみなされてもおかしくはありません。
ところが、親子間での土地の無償による貸し借りは、「使用貸借」というものに該当し、贈与にはならないと判断されるのが通常です。したがって、親子間で地代のやり取りをしなくても問題ないわけです。家を建てる子にとっては、建物部分の費用だけを考えればよいので、負担は軽くなるでしょう。
相続時の優遇措置がなくなる?
ただし、この使用貸借については注意点もあります。それは、将来、相続が発生した際にかかわる問題です。一般的に、土地を持つ親などが死亡した場合、一定条件を満たす土地には「小規模宅地の評価減」という特例が適用され、その評価額の一定割合が減額されます。特に、亡くなった人の自宅の土地などのように、「特定居住用宅地等である小規模宅地等」に該当する場合は、240平米までの部分について評価額を80%減額できるのです。つまり、評価額は実際の2割で計算できるということです。
一般的な家庭で、マイホームと多少の貯蓄のみを保有する人が亡くなった場合、残された家族に相続税がまったくかからないケースが多いのは、現在の相続税の基礎控除(法定相続人の人数×1000万円+5000万円)が比較的大きいことと、小規模宅地の評価減などの特例があるためだといっても過言ではありません。相続税によって残された家族が住む自宅を取り上げられてしまうことのないように、一定の配慮がなされているわけです。
ところが、親の土地を子が借りて家を建てている場合、相続が発生した際(親が死亡した場合)に借りている土地が相続財産になりますが、この借りている土地の評価額は「更地(さらち)」での評価額となってしまうのです(「小規模宅地の評価減」を使えないということ)。
次ページで解説します!