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保養所が隠れ家旅館に~「たてしな薫風」(2ページ目)

06年再生旅館レポート第一弾。蓼科高原の森の中に10室の隠れ家が誕生。元銀行の保養所の再生事例です。

井門 隆夫

執筆者:井門 隆夫

旅館ガイド

現代風ソフトを取り揃えた絶好の事例

薫風のかしはで前菜
「薫風のかしはで」の前菜。合鴨ロースや豆腐田楽など。酒かすの醤油揚げ(右上)がうまい。
私がまず注目したのは、宿泊料金。
ホームページでもわかりますが、端数もある細かな料金表です。
でも、これが、利用者のことを考えた合理的なもの。
通常、旅館の宿泊料金は、季節の需給バランスやお客様の希望値により「なんとなくこのくらいと料金だけ決めた後で部屋・食事の内容を旅館側で調節する」という「団体客発想」が主流です。
ところが、きちんと、先に「部屋と食事の内容を明示」し、「利用者に選択してもらおう」と考えた結果、こういう料金表になったのだと思います。
たてしな薫風では、部屋の広さやグレードで「室料」が決まっています。一番高い露天風呂付きの「くろゆり」の室料は37,800円。一番安い「和のついん」は17,850円です。二人で泊まれば室料÷2となります。
それに、三種類から選べる夕食代5,250円~7,350円と、朝食代1,575円を足せば、一人当たり宿泊料金となるのです(休前日は+2,100円)。朝食に端数の5円がつくので、端数料金の多い料金表になってしまったのでしょう。
これからは、個人客の時代。部屋のタイプが選べるのが当然。食事も内容を表示するのも当たり前。そうでなきゃ、自信のある料理は出せないですからね。それに、この宿のように、二泊目は夕食や朝食なしも選べるというシステムも滞在の場合は必要でしょう。

さて、再生宿の共通点は「脱・京風会席」料理ですが、こちら、たてしな薫風でも、あまり旅館ぽくない、料理長の創作料理。真ん中の料金の「薫風のかしはで」コースをいただきました。見て楽しく、食べてボリュームのある前菜から始まり、旅館でよく出る固形燃料の小鍋の代わりに「黒毛和牛のたたきステーキ」が焼き物として出されるなど、おおむね現代人向け。地の井筒ワインにとてもよく合います。調理場に近い、ダイニングで美味しくいただきました。夕食の特長は、最も遅くて“21時スタート”もできること。新宿発18時のあずさでも間に合います。
「遅い夕食」というシステムも、都市圏に近い宿ではこれからの必須アイテムですね。
お部屋は、露天風呂付きが2室。その他、「和のついん」ルームなど、食事の部屋出しや布団敷きといった客室への出入りを、極力しない方式。これも、「少ない人手でサービスする」ため、新しいタイプの旅館の標準形となりつつあります。
温泉はというと、男女別の中くらいの浴室がそれぞれ一つずつ(時間により当日予約の貸切利用)、そのほかに新設の貸切露天風呂が一つ。少し濁った酸性泉がかけ流されています。元保養所なので「大浴場」とはいえませんが、10室ですから、貸切が主体となるのかもしれませんね。とてもよく温まる温泉です。
そして、何と言っても、素晴らしいのは、窓を明ければ冷気が入ってくる「森の環境」。早朝から鳥のさえずりがうるさいくらい。よくある、朝のめざまし放送ではありません(笑)
保養所を再生するということは、すなわち、その環境を買えるということ。宿の外観にこだわらない、気の合う仲間や夫婦での旅行には、もってこいかもしれません!


たてしな薫風
所在地 長野県茅野市北山4035-552(蓼科高原)
電 話 0266-67-2292
地 図 Yahoo!地図情報
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