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獣医さんがつくる究極のドッグフード(2ページ目)

動物の栄養学を在学中に学ぶ獣医さんはほとんどいませんが、それをみっちり勉強して犬の食性に合わせたフードづくりに取り組まれてきたのが、獣医師の資格を持つ「ほりんふ」の浦元進先生です。

執筆者:坂本 光里

犬の食性に合わない食材を使わない

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普及版のドッグ ホリンフード
浦元先生は、こうした形で一頭一頭の年齢や既往症、健康状態を聞いた上で個別に対応してつくる「ドッグ ホロブロート」と、とくに問題がない子向けの普及フード「ドッグ ホリンフード」をつくられています。
では、この2つが量販店などで売られているドッグフードとどう違うのか? 浦元先生は、その最大のポイントは動物の食性を考えた材料選びにあると言います。

「犬は今や準雑食性であるとよくいわれますけど、じゃあ犬の消化管は雑食動物のように長くなり穀類も消化しやすく変化したかというと、そんなことはまったくありません。犬の消化管は解剖学的には肉食動物に近いものですし、消化酵素の分泌状態などを見ても、犬の身体は生理学的にもまだまだ肉食動物なのです。かれらの消化管は短くシンプルで、肉を消化吸収するのに最適な形をしています」(浦元先生)
先生によれば、今の日本での飼育環境などを考えれば、犬の食性にもっとも適した食べ物は以下のような原材料からつくられるものだそうです。

●肉類等 50%以上
(魚や卵類、乳製品などで一部を置き換えてもよい)
●穀類等 40%
(米、小麦粉、小麦胚芽、玄米など)
●野菜等 10%
(トマト、にんじん、キャベツ、ブロッコリー、果物等)

他に、海草、ごま、酵母、胚芽など栄養補給したいものを少量

では、量販店などで売られているフードはこれらの条件を満たしていないのでしょうか?
「ぼくが業界の中にいて感じたドッグフードの問題点は、なんといっても原材料にあったんですね。従来のドッグフードに使われるようなものではなく、きちんとした食材と呼べるようなものでつくらないと、本当に犬の食性に適したものはできませんよと。要は、人間がワラとか牧草を一生懸命食べて健康になれますかということです。動物には、もともと彼らが野生にいたときに食べていたような食材を与えてあげないと、長年暮らしているうちに無理が出てくると思うんです」(浦元先生)

ドッグフードに多く使われる素材といえば、すぐ思いつくのがトウモロコシや大豆。それは犬の食性に合わないということでしょうか?

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人間用の食材を使ってほしい
「トウモロコシも大豆も、人間の食品として使われる部分ならそんなに悪くはないんですけど、一般的にドッグフードに使われるトウモロコシというのは、芯の部分までを含む丸ごと全部が入っていることが多い。人がトウモロコシとして連想する黄色い粒の部分だけじゃないわけです。
これのどこが問題かというと、粗繊維がすごく多い。もともとそんなに消化しやすい穀類じゃないのに、粗繊維が多いまま使われる。同じく大豆の場合も、大豆の油をとった後の粕が使われる。これもすごく粗繊維が多くて、こうした材料をたくさん使うと、犬たちは十分に消化できないんですね」(浦元先生)

う~ん、しかしドッグフードの袋にある説明だけを読んでも、こうしたことは確かめようがありません。浦元先生がドッグフードをつくる側にいた人だからこそ知り得る情報といえるでしょう。もしそんな形ではなく、人間用の食品に使われる部分だけを使ってつくるとしたら?との問いには「人間用の食材を使ってつくれば人間の食品と同じ価格になる。今の価格ではとてもつくれないと思います」との答えでした。

衛生管理はほんとに大丈夫?

いっぽう、お肉の方はどうか? これについては、東京新聞03年12月25日号に掲載された「BSE心配だワン」という記事にこんな記述があります。

ペットフード工業会によると(中略)ドライには、トウモロコシや小麦粉のほか牛の皮や骨などを粉砕、乾燥させたもの(ミートボーンミール)をタンパク源として加えている。これにはBSE感染部位として警戒されている牛の脊髄や脳などが含まれている。「だから、現在、各企業に対し、米の系列会社から輸入した製品に危険部位が含まれているかどうか、緊急に調査している。23日まで米国はBSE発生国ではなく、ミートボーンミールを国内で自由に使用できたのに…」と危機感を募らせる。

こうした経緯から、最近のペットフードの多くからは牛肉の文字が消え、かわってチキンやラムが中心になってきましたが、そうした肉類についても浦元先生は問題点を感じておられるそうです。問題点とは、人間の食品用に使われた残りがドッグフードに回されるため、正肉といわれる筋肉はほとんど使われず、またそうした材料はもともと肥料として使われるのが常だったため、あまり衛生管理のよくない状態で扱われることが多いということ。

「製造工場の衛生管理が悪いので、原材料がそこで繁殖した菌に冒される。菌は加熱すれば死滅しますけど、内毒素は残る。また、加熱工程以降の衛生状態も悪いため、多くの肉骨粉がサルモネラ菌で再汚染されています。そうしたものを食べ続けていると健康状態に悪影響が出てくるということです。たとえ内容が皮や毛や骨や内臓であっても、ペット用に仕分けをして冷蔵状態で送られてきたものを衛生的に処理さえすればけっこう良い材料になるでしょうが、それは大幅なコストアップにつながるだろうと思います」(浦元先生)
こうした内毒素や細菌に汚染された肉骨粉を使用したフードを犬たちが食べると、どうなるか? 下痢などの胃腸障害も起こりますが、犬に多発するアレルギー性疾患の原因にもなっているのではないかと、先生は推測しておられるそうです。

「体内に入り結腸まで届いた内毒素は、腸粘膜に炎症性の損傷を引き起こします。
通常、腸の粘膜は消化吸収しても大丈夫な小さな粒子しか通さないようにできていますが、そこに損傷があると、普通なら吸収されないはずの大きな粒子が入り込んでしまう。たとえば消化の悪い植物性のタンパク質の粒子ですね。すると、身体はそれを異物だと認識・記憶して、次に同じものが入ってきた時にアレルギーを引き起こすのではないかと…」(浦元先生)

続いてのお話は健康食への思いです!


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