インフルエンザ/インフルエンザワクチンの予防接種

インフルエンザ予防接種の効果・費用・対象者は? 季節性・新型ワクチンの基礎知識

【小児科医が解説】インフルエンザの予防には手洗い・うがいだけでなく、予防接種も有効です。予防接種の効果や費用、インフルエンザワクチンが接種できる場所等について、分かりやすく解説します。

清益 功浩

清益 功浩

家庭の医学 ガイド

医師

小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院小児科・アレルギー科で診療に従事。論文・学会報告多数。診察室外で多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。

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インフルエンザワクチン

インフルエンザワクチンの効果は?


インフルエンザ対策に有効と考えられている、ウイルス増殖を抑える薬とワクチン。インフルエンザが心配な場合、予防接種はした方がいいのか、費用はどれくらいかかるのか、持病がなくても誰でも受けられるのか等、インフルエンザワクチンの予防接種に関して解説します。
特に、従来の季節性インフルエンザ、2009年に流行し、その後季節性になった新型インフルエンザ、そして、今後、また発生するであろう新型インフルエンザについて考えてみましょう。
 

季節性インフルエンザ・新型インフルエンザの症状

季節性インフルエンザ、また、以前流行したことがある新型インフルエンザは、いずれも同様の症状が出ます。新型インフルエンザの場合は、多くの人が抗体を持っていないため、感染力はより高くなり、大流行するリスクがあります。

いずれの場合も、インフルエンザウイルスは主に気道上皮に感染し、咳や鼻、唾液を介してヒトからヒトにうつります。主な症状は、以下の通りです。

  • 突然の38℃以上の発熱
  • 咳、くしゃみ
  • 頭痛
  • 関節痛
  • 全身倦怠感

インフルエンザの予防法

マスクは口と鼻をある程度はガードできます。完ぺきな予防法ではありませんが、特にN95と呼ばれるマスクでは、ウイルスの侵入を最小限に抑えられます。また、咳や唾液の飛散を防げるため、自分がウイルスを持っていた場合に感染拡大を予防する上で、有効です。

手洗いとうがいと合わせると、有効な感染予防法と言えるでしょう。妊婦や子ども、持病を持っている人など、インフルエンザ感染で重篤化する恐れがある人は、あらかじめ予防接種を受けることを検討するとよいでしょう。
 

大量生産できないのはなぜ? インフルエンザワクチンの製法と効果

少し専門的になりますが、インフルエンザワクチンは、日本では鶏卵から作られています。ワクチン株のインフルエンザを鶏卵で増殖させることでウイルスを精製濃縮し、卵の成分を除きます。この段階で生ワクチンが作られます。さらにできたウイルスを分解し、HA(ヘマグルチニン)というウイルスの成分だけを取り出して、体に抗体を作るためのワクチンを作り出しています。

鶏卵を使用するため、製造には数カ月以上の時間が必要になります。鶏卵に頼らない培養細胞を使ったワクチン開発なら、一度に大量のワクチンが製造できますが、日本ではまだその段階には至っていません。日本で製造しているのは不活化ワクチンで、生ワクチンは海外で製造されています。

不活化ワクチンについて、季節性インフルエンザの場合、65歳未満の健常者で70~90%の発病を抑え、65歳以上の健常高齢者の入院や肺炎を30~70%抑えることができます。施設入所65歳以上高齢者の死亡は、80%抑えることができるとされています。ただし、子どもにおいては効果が高くなく、1~6歳までの子どもの発熱を20~30%程度抑える程度にとどまっています。(出典:Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)2007vol56,CDC)

また、インフルエンザワクチンを予防接種していたからと言って、感染しないわけではありません。感染防止と流行の阻止の効果は期待できないのです。メリットはあくまでもかかってしまった場合の発症をどれだけ防ぎ、症状をどれだけ軽く抑えられるかという点です。この点を誤解しないようにしましょう。

不活化インフルエンザワクチンの予防接種方法

現時点では、13歳以上の場合、インフルエンザワクチンは1回予防接種となりました。13歳未満は2回接種ですが、13歳以上でも2回接種は可能です。子どもの場合は1回の接種量が少なく抗体ができにくいので、原則2回接種が必要です。

  • 3歳未満……0.25ml
  • 3歳以上……0.5ml
で、1~4週の間隔で接種します。できれば抗体を上げるには、3~4週空けて接種する方がいいでしょう。
 

不活化インフルエンザワクチンの安全性

季節性インフルエンザと同じ製法ですので、安全性については季節性とほぼ同程度と考えられています。副作用が起こるのは10000人当たり0.01913人と非常に少ないです。副作用の種類としては、39度以上発熱が14.9%と多く、全身の発疹が10.4%。アナフィラキシーや蕁麻疹、痙攣、脳炎などの重篤な副作用は10%以下です。

一方、輸入の不活化ワクチンは、国内での使用経験のない免疫補助剤と使用経験のない細胞株を用いた細胞培養による製造法が用いられていますが、海外での有効性、安全性は報告されています。
 

不活化インフルエンザワクチンの優先順位

季節性インフルエンザには、A型/ソ連型(H1N1)、A型/香港型(H3N2)とB型2種が含まれています。

もし、新型インフルエンザワクチンが実施される場合は1種類のみです。両方にかぶりがないため、これからの季節にインフルエンザで重症化するのを防ぐためには、季節性と新型インフルエンザ両方を予防接種をする必要があります。

新型インフルエンザでは抗体を持っているヒトが非常に少ないため、3~8週間あけて2回接種することが推奨されています。この新型ワクチンはどうしても生産数が限られたワクチンになりますので、重症化しやすいヒト、感染症を治療にあたる医療従事者から優先される事になります。基礎疾患とは、喘息などの呼吸器疾患、狭心症などの心疾患、慢性腎炎や透析を行っている人などの腎疾患、慢性肝炎、肝硬変などの肝疾患、神経疾患、神経筋疾患、血液疾患、糖尿病などの代謝性疾患、AIDSや悪性腫瘍、抗がん剤の治療中などの免疫抑制状態があることです。
 

不活化インフルエンザワクチンの費用

自費診療ですので、医療機関によって異なります。従来の季節性インフルエンザでは1回3000円~5000円、2回の場合は割安にしている所もあります。住んでいる自治体によっては補助を出していますので、自治体や自治体のホームページで確認しておきます。

不活化インフルエンザワクチンを接種できる医療機関

従来の季節性なら大抵の小児科・内科の医療機関でできますが、事前に確認しておきましょう。例えば、皮膚科や眼科などの医療機関では、予防接種を行っていないことが多いです。

また、2024年度から2歳から19歳未満に対して、生ワクチンも販売されました。経鼻接種で1回で1年間効果があります。このワクチンは高齢者には効果がありません。
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また、今後、RNAワクチンが開発される可能性があります。特に新型インフルエンザに対しては、速やかに多くのワクチンを確保するためには、RNAワクチンが開発されると思われます。

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