防犯小説

更新日:2006年06月23日

女フリーランサー、身の守り方

取引先の男性が自宅にまで訪ねてきてしまった…。どう切り抜けたらいいのか? 洋美は考えていなかった事態にパニックになっていた。

女フリーランサー、身の危険を先にご覧ください。

拒絶する

オートロックなのに?
オートロックなのに?
目の前で酒臭い様子の相手が立ちはだかっていた。のどが渇いたなどとまるですぐにも家の中に入れてほしそうな気配だ。水も飲ませないのではひどすぎるだろうか? しかし、仕事場ではあっても女の一人暮らしの住まいに深夜、男性を入れるわけにもいかない。といって、追い返したら今後仕事上で気まずくなるかもしれない。最悪、この仕事を失うことにもなりかねない。絶体絶命のピンチだと感じていた。

だが、やはりどう考えても突然、女性の自宅に押しかけるのはおかしい。どんな理由があろうともだ。事前に電話一本よこしたわけでもない。非常識だと思う。いつまでも玄関先でうだうだされても困る。洋美は受け取った資料を持ったまま、○○の目を見てしっかり言った。

「すみません。今、他の原稿の締切を抱えているんです。このままお帰りいただけませんか」
「なに? 水の一杯も飲ませてくれないの? つれないなぁ」
「申し訳ありません。駅まで行く途中にコンビニも自動販売機もありますので」
「なんだよぉ。いいじゃないか、ちょっと君の仕事場を見せてよ」
「困ります。どうぞお帰りください」
「わざわざ資料を持ってきてやったのに、冷たいというか失礼じゃないの」

失礼と言われてカチンときた。深夜に女性の家に突然やってくるのは失礼じゃないのか? 

「資料を持ってきてくださったのは感謝してます。ですが、電話で連絡もせず突然にやってこられるのは困るんです」
「なんだ。君は冷たいな。そんなことじゃ、仕事も期待できないな」
「仕事は一生懸命やっています。こういうことは困ると申し上げているんです」
「わざわざ持ってきてやったことが迷惑だというのか」
「明日でも間に合いましたし、宅配便でもバイク便でもよかったんです。ご好意は感謝しますが」
「だって、君は仕事場が自宅なんだろう? 仕事場なら顧客に茶を出すくらいしてもいいんじゃないか」
「私がお客様のほうに伺います。普通は会社だけで用事は済むはずです。どうか会社だけでのお話にさせてください」
「そうか。わかったよ。洋美ちゃんはそういう子なんだ」

どういう子だと言いたいのかわからなかったが、もうどうでもよかった。
「すみません。締切が迫っていますのでこれで」
「わかりましたよ」
ムッとした顔でドアの間から身を引いて、うらめしそうに洋美をにらんでからドアを力いっぱい閉めた。洋美はホッとしてドアの鍵をわざと音を立てて締めた。
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佐伯 幸子

安全生活アドバイザー。92年より「頭を使って身を守る方法?知的護身術」を提唱。子どもや女性の安全対策…

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