泉質の種類と特徴
さて、温泉法の定義を簡単に紹介します。まず、地中から湧出した鉱水または天然ガス以外のガスである必要があります。さらに温泉法で温泉になるには、温度と成分の二つの基準があります。まず、温度が25度以上であれば無条件で温泉です。次に成分ですが、まず温泉1kgの成分合計が1g以上であれば、成分の種類を問わず温泉です。さらに成分合計が1g未満でも、特定の17の成分が規定以上含有していれば、温泉となります。つまり成分さえ基準を満たせば、24度以下でも、冷たくても温泉なのです。
次に、温泉法で温泉と認められた温泉を分類するのが、「鉱泉分析法指針」です。その中で、特に「泉質名」と関係するのが療養泉です。療養泉の定義は、温度と成分合計は温泉法と同一ですが、特定成分が7つしかなく規定の量も異なります。実は、すべての温泉に泉質名があるのではなく、療養泉と認められた場合に泉質名が付くのです。温泉法の定義をクリアしたのに、療養泉と認められない場合、泉質名はありません。この場合、「温泉法上の温泉」とか「規定泉」と呼ばれます。
療養泉の種類と特徴を簡単に紹介します。まず、特定成分7つに該当するものから紹介します。
■二酸化炭素泉(炭酸泉)
遊離炭酸1g以上を含む温泉です。加熱によって湯船では炭酸が減少している場合もありますが、基本的にイメージ通り泡が付く温泉です。
■含鉄泉
総鉄イオンを20mg以上含む温泉です。錆色の湯で、通称として赤湯と呼ばれることが多い温泉です。同様に銅イオンを含む温泉を含銅泉と呼びますが、日本にはほとんどありませんし、銅とともに鉄も含むので、見た目も含鉄泉と同様です。
■含アルミニウム泉
アルミニウムを主成分とする温泉です。明礬泉とも呼ばれます。アルミニウムが解けるくらいですから酸性であることが多く、酸性泉と同様に独特の酸っぱい匂いがします。酸性泉は水素イオンを1mg以上含有する温泉。特に強い酸性泉では、皮膚をこすると皮膚が剥けてしまう場合があると言われ、こすってはいけません。また、歯が解けてしまうので、飲泉可能な温泉でも薄めた方が無難です。
■硫黄泉
総硫黄を2mg以上含む温泉です。白濁した温泉が多いですが、緑色の場合や灰色など、色が変化する場合もあり、五色の湯などと呼ばれる温泉も多い神秘的な湯です。卵の腐ったような臭い(腐卵臭)が特徴で、温泉の匂いといえばコレだと思っている人も多いでしょう。
■放射能泉
ラドンを含有する温泉です。実際にはラドンを感じることはできませんが、発汗作用があると言われ、温度以上に汗をかくことで、間接的に体感することができます。
上記特定の成分に該当しなくても、成分合計が1g以上であれば療養泉であることは既に述べました。こうしたイオンの量が多い温泉を総称して塩類泉と呼びます。塩類泉は陰イオンの種類により、塩化物泉、炭酸水素塩泉、硫酸塩泉の3つに分類されます。
■塩化物泉
陰イオンの主成分が塩素イオンの温泉です。日本には後で述べる単純泉とともに、もっとも多い泉質と言われます。塩分が含まれた温泉ですが、味覚で塩辛いと感じるものは、かなりの濃度で、あまり塩辛くない場合もあります。
■炭酸水素塩泉
陰イオンの主成分が炭酸水素イオンの温泉です。さらに重曹泉と重炭酸土類泉に分類され、前者は透明ですべすべした湯、後者は錆色で析出物が多い温泉です。
■硫酸塩泉
陰イオンの主成分が硫酸イオンの温泉です。硫酸という名前とは異なり、おだやかな泉質です。舌先に残る独特の苦味があるので、苦味泉とも呼ばれます。陽イオンの主成分により、芒硝泉、石膏泉、正苦味泉にさらに分類されます。
最後に、単純に温度が25度以上で、成分は1g未満のものが、単純温泉(単純泉)です。要は温度だけで薄い温泉ですが、イオン溶液の特徴は成分の比率で決まるので、成分が薄いからといって馬鹿にできません。昔から名湯は単純泉に多いと言われます。