外国株

フェイスブックを超えたテンセントは何が凄い?

中国のネット業界の雄であるテンセントの株価が急伸し、フェイスブックの時価総額を超えてきました。株価が急伸した理由と、それでもテンセントは買いなのか?に迫ってみたいと思います。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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時価総額でフェイスブックを超えたテンセント

時価総額でフェイスブックを越えたテンセントは今後も業績を拡大し続けるのでしょうか?

時価総額でフェイスブックを越えたテンセントは今後も業績を拡大し続けるのでしょうか?

米国のハイテク成長株ビッグ5は「FAAMG」の頭文字で呼ばれるアップル、アルファベット(グーグル)、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブックです。アップルはすでに100兆円を一時突破、他の4社も100兆円は時間の問題という企業です。これにアリババ(米国ナスダック上場:BABA)とテンセント(香港メインボード上場:00700)を合わせると世界のハイテク成長株ビッグ7と呼べると思います。

そのテンセントの株価が急伸し、フェイスブックの時価総額を超えてきました。テンセントはアップルの6掛け程度の時価総額となったものの、前期売上高はアップルの10分の1、利益も6分の1というサイズです。追い越したフェイスブックの前期売上はテンセントより25%大きく、利益は7割以上も多いところを見ると、テンセントの株価は買われすぎとも思えるところです。

しかし、市場の評価はそうでなく、現時点のテンセントの売上、利益額は株価に見合わない高さであるものの、将来の成長スピードや可能性はこの中で一番高いと思われている可能性あります。このことが同社の突出した高いPERに表れているところです。

モバイル広告にのびしろ

テンセントの強みは圧倒的なユーザー基盤にあります。今後の成長が期待されるモバイル市場において、同社の微信とQQのアプリは、ユーザーの利便性を高める工夫やコンテンツ強化がなされ、コミュニケーションツール以外にゲーム、音楽、読書、ニュース、オンラインショッピング(出資先のJD.comサイト)などが詰め込まれています。

中国のモバイルアプリにおいて、「微信」の月間アクティブユーザー数は9億人に迫り、「モバイルQQ」も6億人近いもので、他社を大きく上回ります。ほかにも動画専用アプリ、QQブラウザーやニュース、音楽専用アプリも別途配信しています。

そしてモバイル利用者の時間消費量の6割以上を同社アプリが占めているとされ、その割に現在の売上高水準はまだ小さいものです。ゲーム収入はかなりあるのですが、広告はユーザー基盤のわりにまだまだ少ないと言えます。

かつて中国のオンライン広告市場はバイドゥがほぼ独占に近い状態でした。しかし現在はアリババとテンセントが急激にシェアを増やしており、他社もバイドゥからシェアを奪ってきているところです。ただアリババの方が広告シェアで上回っており、最もユーザーが時間を使っているテンセントが収益化において遅れている状況です。

逆に言えばユーザーが6割以上も時間を費やすテンセントの広告余地は大きく、今後は動画などの充実したコンテンツ投資を活かし、AIでの分析によってモバイルアプリからの広告収入を一段と強化していきたいところです。日本のLINEなどと比べても、テンセントのモバイルアプリはゲーム収益に偏りすぎており、広告収入の比率はごく僅かでしかなく、今後の成長余地を大きく残します。

2017年第3四半期決算は大幅増収増益も営業利益率低下

2017年第3四半期の業績は売上が61.5%増の652億1000万元、純利益が69.1%増の180億600万元と大幅増収増益となっています。第3四半期の業績は第2四半期の延長線にあるような決算内容であり、順調に売上を拡大させています。売上高は市場予想平均を+7.3%、一株利益は+15.6%上振れて着地しました。

売上の41%を占めるオンラインゲームが好調です。部門粗利益率も高く、84%増となったモバイルゲームが成長を牽引します。11月にも続々と新作ゲームを投入し、すでに2500万人の予約登録を受けているゲームもあります。

ネット映像や音楽などのコンテンツ収入を得るSNS部門とオンラインゲームを合わせた「Value added services(付加価値サービス)」事業の粗利益は、引き続き全体の8割を占め、粗利益率は52.9%です。

オンライン広告事業は、PC向けコンテンツから派生するメディア広告と、微信を中心とするスマホからのソーシャル広告があります。今期から区分けが変更されたため、前年同期での比較がありませんが、第2四半期に比べてそれぞれ1%、14%の売上増となり、広告全体の粗利益率は34.8でした。

引き続き「その他事業」が大きく伸び、具体的には決済事業とクラウド事業となります。広告事業を上回る売上規模となっていますが、特に決済事業は粗利益率が低いため、その他事業のマージンは18.0%となります。

利益率の低いその他事業が大きく伸びたことに加え、ビデオなどコンテンツ充実の為の積極投資により、取得した無形資産の償却費用も嵩んできています。研究開発費を含む一般管理費も54%増加するなどし、全体にコストの増加によって利益率は低下しています。ただ、これも第2四半期から続いている流れであり、予想通りとも言えます。

テンセントは投資した事業を比較的短期間で収益に結び付けてきた実績があり、現在の費用増加の流れはそれほど懸念されていない模様です。なお、QQや微信などのユーザー数はもう限界に達しており、殆ど伸びていないか、若干減少に転じています。それでもテンセントのユーザー基盤は規模的に中国最大であり、これ以上人数が伸びないとしても、マネタイズ力(一人当たりユーザーから稼ぐ力)を強めた結果、上記のような増収増益につなげています。

依然として長期には有望、調整時に仕込みたい

香港ハンセン指数は約10年ぶりに3万ポイントの大台を回復し、金融危機前の水準となりました。指数上昇を牽引しているのは、全50銘柄ある中で一社で2割強を占めるテンセントであり、建設銀行、ペトロチャイナ、チャイナモバイルなどを2倍以上も上回る圧倒的な巨人です。

ここに来て株価が急伸している理由は前述の第3四半期決算が良かったからというより、同社の将来に対する期待・楽観の高まりにより、PER倍率というバリュエーションがアップしたからと思います。従来なら、如何に好決算が続こうとも、30倍台でのPER倍率が同社に適用されていましたが、今は40倍、50倍が許容されてきている様子です。

8月以降の世界相場が非常に良好で、どの国でも一段高展開となる銘柄が続出していることがあり、投資家マインドも一段と強気になっている事で、高バリュエーションに繋がっていると見ます。

依然として長期には有望であり、同社の他に類をみないユーザー基盤を今後フルに活かせば、今後ますます進むマネタイズ化の進化によって大きなのびしろを残します。ただ短期には、50日線からここまで上方に大きく乖離したところでわざわざ買う必要もないだろうと思います。長期チャートを見てみれば明らかですが、必ずこの先どこかで50日線を割り込む時も出てきます。調整時に仕込み、長期で持ちたい銘柄です。

参考:中国株通信

※記載されている情報は、正確かつ信頼しうると判断した情報源から入手しておりますが、その正確性または完全性を保証したものではありません。予告無く変更される場合があります。また、資産運用、投資はリスクを伴います。投資に関する最終判断は、御自身の責任でお願い申し上げます。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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