エスティマが「10年目のマイナーチェンジ」をする理由
エスティマがマイナーチェンジを行った。現行モデルのデビューは2006年なので、本来ならフルモデルチェンジをしてもおかしくない。というか、普通なら当然の如く全面刷新である。しかしエスティマの売れ行きはアルファード&ヴェルファイアと違い好調でなく、直近だと月販1000台に届かない。加えて輸出していないため、コスト掛けてフルモデルチェンジしても回収出来ない。かといってユーザーの安全を担保することなど考えたら、自動ブレーキなど今やマストになっている装備も必要である。トヨタにとって300万円以上するクルマが毎月1000台売れるのだから、販売中止はもったいない。そんなこんなで「10年目のマイナーチェンジ」という中途半端な落としどころになったのだろう。以下、どういった変更を行ったか紹介してみたい。
新たに自動ブレーキ機能を搭載。しかし決定的な魅力に欠ける……?
機能面で最も大きい差が、前述の自動ブレーキである。現在、トヨタはヴィッツやシエンタに代表されるベーシックモデル用として開発した赤外線レーザー+単眼カメラを使う『セーフティセンスC』と、プリウス以上の上級モデル用に開発されたレーダー+単眼カメラを使う『セーフティセンスP』という二つのタイプの自動ブレーキを持つ。違いは自動ブレーキ性能だ。Cの場合、停止車両に対し自動停止出来るのは10~40km/h程度となり(カタログを見ると10~30km/hと書いてあるが、実際はもう少し高い性能を持つ)、歩行者の検知は出来ない。
Pなら自動停止可能速度は10~50km/h程度に上がり、昼間であれば歩行者も検知可能。
300万円以上するエスティマだけに高機能型のPかと思いきや、ヴィッツと同じCでした。10km/h差であれば気にならないし「Pだって歩行者も夜間には検知出来ないからCでいい」と割り切れるなら問題ないか? 確かに付いてないよりずっと安全性を確保出来る。また、センサーに測距性能が低いレーザーを使うため、300万円級のクルマなら装備されている、ロングドライブや渋滞時に絶大な威力を発揮する『先行車追尾クルーズコントロール』は付かない。
エンジンバリエーションはパワフルな3,5リッターV6を廃止。2,4リッターの4気筒と、ハイブリッドの2タイプとした。販売比率が少なく、燃費も悪いので不要だと判断したようだ。残念なのは2,4リッターにアイドルストップが付いていないこと。これまた新型車なら当然のように付いてくる装備である。そんなことから燃費は11,4km/Lで10年前の初期型と変わらず。
ハイブリッドは前期型と同じく、後輪をモーターで駆動する4WDのみ(FFの設定はない)。燃費18km/Lとなる。ちなみにガソリン車の4WDとハイブリッドの価格差は82万円。燃費の良いハイブリッドながら、ガソリン代を節約しても82万円の差額を回収出来ない。ハイブリッド好きでない限り、普通のエンジン車を選ぶのが得策。FFのガソリン車ならさらに安い。
ここまで読んで「決定的な魅力はないですね」と思うかもしれない。トヨタだって十分承知。けれどフロントのデザインはイッキに新しくなったし、インテリアも明るくなった。自動ブレーキも付く。マイナーチェンジ前より売れることだろう。車両価格が大幅に上がり、アルファードとバッティングするようになったことだけ厳しい?