都心の広大な緑地「自然教育園」(港区白金台5丁目)
入園してわずか10分たらず。事前に聞いてはいたものの、こんなに早くその光景が見られるとは。ホバリングから一瞬にして水中の小魚を捕獲、枝にとまり食べようとする姿が上の画像。「清流の宝石」と呼ばれるカワセミが見れる、都心では数少ない生息地が「自然教育園」である。江戸時代、高松藩主松平頼重の下屋敷がそのはじまりで、大正時代は「白金御料地」であった。手付かずの自然は多くの人が立ち入りできなかったことから守られ続け、現代においても入場は有料で人数制限をするほど保全が厳格である。400~500年もの歴史を有する大自然のスケールは約7ha。山手線内側のマンションで最大の敷地面積を誇る広尾ガーデンヒルズ(約6.6ha)より広い。
大きな緑地の点在は東京の特色。最近でこそタワーマンションが注目を浴びるが、希少な自然を「南に臨む高燥地のマンション」は高級物件の中でも根強い人気があり、名作と呼ばれるものも少なくない。該当する立地は千鳥ヶ淵や有栖川が好例。そして、白金台5丁目もそれに入る。
「芝白金ヒルズ」3Bedrooom 182.73m2
「芝白金ヒルズ」は「自然教育園」を南に隣接する分譲マンションである。地上7階建て、全21戸。分譲当時の売主は三菱地所である。専有面積171.15m2~207.32m2、1985年築は新耐震基準後である。ヴィンテージマンションとしての特徴は過去記事「高級マンションのリフォーム事例<港区白金台>」を。取材対象住戸は3階。3Bedroom、専有面積182.73m2。リビングダイニングを含め3室が南(「自然教育園」側)に面し、借景及び間口の広さに恵まれた角住戸である。以下、玄関から順を追ってリフォームのポイントを解説する。
上の画像は「内開き」の玄関扉を開けた状態から撮影したもの。視界が抜けているのは、書斎用に設けた居室扉がガラスのため。敲きの右側にガラスブロック窓があり、玄関の採光は十分。靴の着脱に便利なベンチを下部に施している。従前の上質な建具(木製扉)を残し、ダークな色合いに木目を消さないよう塗り直した。左奥を行くとLDのあるゾーン。住戸の特徴である「ゆったりとした幅の広い廊下」を活かすアイデアとしてクラシックなデザインの壁付け照明をしつらえた。規則性をもって配された7つの灯りは空間全体の静寂性を高める働きがあるようだ。
リビングダイニングは梁など構造のサイズにさえも合わせた造作家具(上の画像)がポイントのひとつ。なかでもメイン開口(南側「自然教育園」)に向き合う正面の飾り棚(下の画像)はサイズ以上の存在感がある。天板は黒地に山吹色の模様が滲んだ天然石を選択、落ち着きのある高級感を。面材には鏡を貼り、緑を部屋の奥にまで引き込んだ。
上部に施された二分割の装飾框は、照明とともにシンメトリにレイアウトされているのだが、中心線は部屋全体を貫き、対峙する大型サッシュのセンターに丁度交わる。両袖片引き窓(二番目の画像)はせっかくの借景を遮らないよう、サッシュ内に格納するプリーツ網戸に取り替えられた。巾木にも特徴が。壁と同系色でわかりにくいかもしれないが、特別背が高いものを貼り付け、造作家具の足元のサイズもそれに倣っている。
特筆すべきは、壁際の床のみ方向を違えたフローリングの貼り方である。大きな住空間ではゆとりをもって家具を置くことができるため、壁に沿って(目には見えない感覚的な)間を設けた。これが絵画における額縁と同じ役割を果たしているようで、内側の作品(家具インテリア)を引き立たせる効果があると推察する。
その他にもダブルボールに替えた洗面室や浴室、カットソーやカジュアルなパンツを多くしまえる棚にネクタイ掛けまでセッティングされた特大のウォークインクローゼットの設置など更新性と機能性の向上がはかられた。上の画像でご覧いただくとわかるように、扉内側には姿見が取り付けられてある。ファッションコーディネートのチェックはウォークインクローゼットの中で行わなければ、万が一思い通りの仕上がりでなかった場合に、その修正が容易に行えないからである。
参考資料:国立科学博物館附属自然教育園リーフレット、取材協力:カガミデザインリフォーム、大成有楽土地住宅販売三田営業所
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