財布の歴史を変えたm+が再び放つ財布の傑作
m+(エムピウ)の革財布「millefoglie」は、多分、日本における革財布の概念を大きく変え、財布のデザインをもう一度見直すきっかけになった製品です。これがあったからこそ、その後の、アブラサスの「薄い財布」や「小さい財布」、safujiの「ミニ長財布」や「ミニ財布」、rethinkの「Lim Wallet」といった、世界的に見ても日本にしかない新しい機能的でカッコいい財布が生まれました。
そのm+の「straccio」は、新しい構造の財布の本家であるm+による新たな傑作です。何というか、見た目では凄さが分かりにくいので、まず傑作だと謳っておきますが、実際、この財布の魅力は文章や写真、動画などでは伝えにくいのです。その割りに、触れば、実際に使えば、すぐに分かるのですが。ともあれ、何がどう凄いのかを書いていきます。
グニャグニャした小さな、でもフル機能を実現した財布
この「straccio」は、一言で言えば、「フル機能のマネークリップ」のようなものです。グニャグニャとフレキシブルに曲がる柔らかい革を使った、あまりカチッと固まった感じのしないデザインは、身を持ち崩した名刺入れのような感じですが、まずは、この、くるりと革を巻いただけの佇まいが、ガイド納富は大好きなのです。まるで時代劇に出てくる、当時の財布である巾着のような趣。まるで、剥き出しの札をポケットから取り出したかのようなラフなムードが素敵だなと思うのです。構造は、革二枚がL字に縫い付けてあって、その内側の革にポケットが二つ付いている、というだけの、とてもシンプルな構造。これだけだと、どこに何を入れるのかさえ定かではありません。この下のポケットにカード類を、上のポケットにコインを、二枚の革の間に紙幣を挟み込むのですが、この入れていく作業が、驚くほどスムーズです。つまり、紙幣もカードもコインも、とても入れやすいということなんですね。
気軽に使えるのは、使いやすく作られているから
使ってみて驚くのは、パッと見、こんなにシンプルであけっぴろげな感じもする財布なのに、使うと、カードを出す時はカードだけ、コインを出す時はコインだけ、紙幣なら紙幣だけを出し入れ出来るようになっていることが分かるのです。しかも「millefoglie」同様、持ち替えずに全ての機能にアクセスできます(持ち替えた方が使いやすい状況もありましたが)。そして、小さい財布なのに、カードを出す時にコインがこぼれそうにならないし、コインを出す時のコインケース部分の見渡しも良く、普通の二つ折り財布を使っているような感覚で使えるのです。紙幣も折り曲げずに差し込むだけです。もちろん、紙幣は差し込んだ後、くるりと丸められてしまうのですが、その動きは財布を閉じるための動きなので、特に面倒だとは思わないのです。ただ、一枚革で裏無しで作られているため、紙幣を入れる時の滑りは決して良くはなく、紙幣はキレイに並んで入るわけではありません。なので、几帳面な人には気に入らない入り方になるかも知れません。ただ、そのラフな感じも、紙幣を適当に丸める感じも、ガイド納富にはマネークリップっぽい構わない感じがあって良いなと思えるのです。
基本が、ポケットに入れても邪魔にならない小さな財布ですから、収納量はそれほど多くはありません。カードは4~5枚程度、コインはざっと20枚くらい、紙幣は15枚以上になると、丸めて閉じるのがちょっと大変になります。でも、それだけ入れば普段使いに充分ですし、とりあえず、ガイド納富が現在知っている「小さい財布」系の製品の中では、最も収納量が多いのです。
ゴート革のグニャグニャした柔らかさが広げる財布の可能性
本当にグニャグニャの革に札を挟んで、コインやカードを芯にして巻き付けているような構造ですから、内容量によってあからさまに大きさが変わるのが面白いのです。革財布で、ここまで内容量によってサイズが変わるのは珍しいと思います。コインやカードより紙幣の量がサイズを決定するので、ある意味、今、自分がどのくらいの現金を持っているかを感触で教えてくれる財布なのです(なので、ちょっと悲しくなる時もありますが)。このグニャグニャの革は、タンニン鞣しの山羊(ゴート)革。使い込むと艶が出て色が濃くなっていく、経年変化も楽しめる革です。それを最小限の縫製で、ギリギリ財布として成立するよね、という感じで作ったもの。そのプリミティブな構造が、見た目は似ていないのにマネークリップや布の巾着などをイメージさせるのでしょう。4500円(税別)という価格も、そのシンプルな構造あってのこと。実際は、それでは安過ぎると思えるほど「使える」財布になっています。
ガイド納富の「こだわりチェック」
製品名の「straccio」(ストラッチョと読むそうです)は、「端切れ・ぼろ切れ」転じて「存在感が希薄な」といった意味を持つ言葉ということで、確かに、それも間違ってはいないのですが、その存在感の軽さも含めて、この財布はとんでもなく新しい財布だと思うのです。存在感は薄いけれど、持っていたくなる感じは強力で、使うたびに、その支払いやお釣り受け取りのスムーズさや、それをクルッと丸めるようにしてポケットに突っ込む時の邪魔にならない感じに、ちょっと感動してしまいます。この使い心地は今までに無かったし、このくらい軽く財布を扱いたかったのだなと思ったのです。財布が財布であるための最低限の要素で作られているのにも関わらず、ストイックとか潔いとか合理的とか機能美とか、そんな言葉は全然似合わなくて、むしろ、緩いとか、ふわふわとか、適当といったムードが漂っているのも、ガイド納富はとても気に入っています。普段使いの、ポケットに突っ込んで使う財布に緊張感なんて要りません。でも、メチャクチャ使いやすいのです。そして、緩さがカッコいいのです。値段も手頃だし、しばらく、これをプレゼントの定番にしようかとも考えています。色も、チョコ、ブラック、キャメル、ネイビー、カーキと揃っているので、老若男女問わず喜んでもらえそうです。
<関連リンク>
・エムピウの「straccio」はエムピウのオンラインストアで購入できます。
・もう一つのエムピウの小さな財布はラウンドファスナーが特長の「zonzo」(15500円)。