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1月~3月の不動産売買は要注意!

不動産に関する税制はたいてい毎年4月に改正されますが、その内容が1月1日に遡って適用されることも多くなっています。この「遡及適用」について、改正で不利になる場合はどう判断されるのか、最高裁による判例やその自衛策を知っておきましょう。

執筆者:平野 雅之


住宅など不動産に関する税制(租税特別措置法など)は毎年のように改正されていますが、4月1日の施行でありながら、その年の1月1日まで遡って適用される場合も少なくありません。

この「遡及適用」をめぐる裁判で、2008年1月29日の福岡地裁は「違憲で無効である」との判決を下しました。ところがその約2週間後、2月14日の東京地裁ではほとんど同様の訴訟でありながら、逆に合憲であるとの判決を下し、原告の請求を棄却しています。

その後どうなるのか注目されていましたが、2011年9月に相次いで出された最高裁判決(対象は東京と千葉の訴訟)は、いずれも「納税者に不利益となる税制改正後の法律を遡って適用しても違憲ではない」、つまり合憲とするものでした。

税制改正によって税金の負担が数千円増える、という程度であればまだ我慢できるでしょうが、とくに売却をめぐる税制の改正では、それが適用されるかどうかによって数百万円から数千万円もの違いが生じることもありますから、決して些細な問題ではありません。

改正法の施行は4月でも、通常であればその前年12月に与党や財務省の「税制改正大綱」が公表されているため、「1月からの適用は納税者も予測できる」というのが地裁段階における国側の主張として報道されていました。

しかし、新聞などに掲載される税制改正大綱をつぶさに読んで理解している国民が、いったいどれくらいいるというのでしょうか?

さらに「税制改正大綱」を最終決定事項のように取り扱うのであれば、その後の国会審議を国自体が軽視していることにほかなりません。

それはさておき、自己防衛手段としては「1月~3月に不動産の売買を予定している人は、税制改正大綱の内容をしっかりと確認しておくべき」ということしかないのでしょう。

ところで、遡及適用を合憲とした東京地裁の裁判長は「同じ年の土地売買によって所得税の取り扱いが異なると不平等が発生する」と指摘したのだそうですが、不動産税制は1月1日からの適用ばかりでなく、過去の分も含めて調べてみれば、4月1日から適用のものや7月1日から適用のもの、あるいは3月31日までのもの、6月30日までのものも数多くあります。

東京地裁の考え方(合憲支持)に従えば、逆に不平等で違憲状態のものがたくさん存在することになるのですが……。


>> 平野雅之の不動産ミニコラム INDEX

(この記事は2008年3月公開の「不動産百考 vol.21」をもとに再構成したものです)
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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