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ジャズで踊る……スウィングからアシッド・ジャズまで

はたしてジャズは鑑賞のためだけの音楽なのでしょうか。実はジャズには、踊るための音楽として発展してきた歴史があります。ジャズで踊る。スウィングからアシッド・ジャズまで、今回は、踊れるジャズをご紹介します!

大須賀 進

執筆者:大須賀 進

ジャズガイド

スウィングからアシッド・ジャズまでのジャズ

ジャズで踊る!スウィングからアシッド・ジャズまで

ジャズで踊る!スウィングからアシッド・ジャズまで

ジャズと踊り。今となっては何となく結びつかないワードになっていますが、実はジャズにはダンス・ミュージックとして発展してきた歴史もあります。約120年の歴史の中で大きなダンスの波は二回ありました。1930年代~40年代スウィング・ジャズ1980年代から90年代にイギリスから起こったアシッド・ジャズです。
 

スウィング・ジャズで踊る

1900年ごろに生まれたとされるジャズ。酒場の音楽としてどんどん浸透しましたが、第一次世界大戦のあおりで、ニューオリンズの繁華街は火が消えてしまいます。そして1920年代は33年まで続いた禁酒法によってミュージシャンは大打撃を受けました。

有名なギャングのアル・カポネが闇の酒場を仕切っていたシカゴと悪玉政治家のトム・ペンターガストが州ごと実権を握っていたカンザスシティの二か所でしぶとく生き残るしかありませんでした。広いアメリカでもこの二か所だけが、なかばおおやけに酒場があり、バンドを必要としたからです。

そして、いよいよ30年代半ばになって、一気に各所に大型のボールルーム(ダンスフロア)ができ、ダンス音楽としてのスウィング・ジャズの全盛期がやってきます。このブームは45年の第二次世界大戦の終戦まで続くことになります。

この約10年間のジャズは、まさに踊るための音楽。そして、あらゆる音楽ジャンルの中でも最もポピュラーで売れた音楽だったのです。

その黄金時代も、45年以降ビ・バップ、つまりはモダン・ジャズの台頭により終幕を迎えます。そして、踊るための音楽の座もロックンロールやソウルに明け渡すという事になりました。

これぞ踊るためのジャズ:グレン・ミラー楽団「イン・ザ・ムード」
ベスト・オブ・グレン・ミラー

ベスト・オブ・グレン・ミラー

息の合ったアクロバティックなタップダンスで有名だったプロ中のプロ「ザ・ニコラス・ブラザース」から一般のカップルまで、幅広い層がそれぞれのスタイルで踊りまくったのがこの曲。それこそ全米中が踊ったスウィング・ジャズのパワーはジャズの歴史の中でももっとも華やかな時期だったと言えるでしょう。

スウィング・ジャズは当時の最も豪華なダンス・ミュージックだったのです。

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アシッド・ジャズで踊る

ジャズで踊る。二度目の波は、本国アメリカではなく、海を越えたイギリスから始まりました。ビ・バップに代表されるモダン・ジャズは、ヨーロッパ中を席巻しましたが、そんな中なぜかイギリスだけはあまりモダン・ジャズの影響を受けませんでした。

むしろロックンロールやブルースに影響を受けたミュージシャンが60年代からビートルズやストーンズなどに代表されるイギリス発のロックを爆発的にヒットさせていきました。

イギリスでのジャズは、不毛ともいえる状態が80年代まで続きました。そして、80年代も後半になって、突如としてジャズで踊る文化が、発生したのです。

最初は「レア・グルーブ」と呼ばれるブームが来ました。レア・グルーブとは、60年代70年代のジャズやフュージョンの中で、当時は全くと言ってよいほど評判にならなかったB級C級盤を見つけてきて、その曲で踊るというブームでした。当然そこでの主役は、DJです。

個性的なDJが誰もが知らないような、しかも踊れるという条件のレア盤をかけることから、レア・グルーブと言う名がつきました。ここにきて、イギリスのダンス・シーンにジャズがようやく主役として躍り出たのです。

そして、昔のレコードだけでは物足らなくなった聴衆のために、昔のテイストを現代のサウンドで甦らせた新しいバンドが求められました。そのバンドのサウンドによって踊るブームが「アシッド・ジャズ」と呼ばれるものなのです。

アシッド・ジャズにはまさに「アシッド・ジャズ」と言うレーベル(レコード会社)が後押しして続々と新しいバンドが生まれました。その中でも有名なのが「ザ・ブランド・ニュウ・ヘヴィーズ」そしてちょっと遅れて「ジャミロクワイ」と「インコグニート」が現れました。

このアシッド・ジャズを代表する3つのバンドを聴いてみると、それぞれが別の特徴を持っていることに気がつきます。ザ・ブランド・ニュウ・ヘヴィーズはソウルの帝王JBことジェームズ・ブラウンヒップホップの融合。ジャミロクワイはポップスディスコ。インコグニートは、ジャズ・ファンクフュージョンをもとにしたサウンドとはっきり分かれています。

つまりはアシッド・ジャズとは音楽ジャンルではなく、1980年代後半から1990年代までのクラブDJが、踊らせるために選ぶ音楽ジャンルの総称と言ったものになります。ですから、ジャンルとしては、ヒップホップ、ラテン系、ディスコ、ジャズ・ファンク等様々です。

そしてその特徴として、当初はダンス音楽らしい打ち込み(ドラムやベース、キーボードなどのパターンをコンピューターであらかじめ作成しておき、そのリズムに乗って他が演奏されること)が多いという傾向があり、後半になってアコースティックなサウンドも次第にブームなっていきます。

アシッド・ジャズで踊る:インコグニート「トーキョー・ライブ・1996」から「オールウェイズ・ゼア」
last night in tokyo incognito live Live

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インコグニートも打ち込みからアコースティックに変わったジャズ・ファンクバンドです。この東京でのライブでは、リーダーのギター&ヴォーカル、プロデューサーのジョン・ポール・エドワード「ブルーイ」モーニック、通称ブルーイと看板シンガーのメイサ・リークともに絶好調。彼らの代表曲がライブならではの熱気の中で聴くことができます。

なかでも、最初にインコグニートをスターにした大ヒット曲、「オールウェイズ・ゼア」は思い入れの入った熱演になりました。

このインコグニートはジャンル的にはジャズ・ファンクになります。ジャズ・ファンクは60年代ごろから流行ったオルガン・ジャズに代表されるような、ベースパターンやコード進行の繰り返しの多いアーシーなジャンル。ソウルとも影響しあって、ダンス音楽にこれ程向いているものもありません。

この90年代後半以降、現在では、ジャズで踊るというブームは来ていませんが、次になにか面白いジャズで世界的なダンス・ブームが来ることを期待してやみません。ダンスいいですね! ジャズ最高ですね!

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