世界選手権での演技に期待が高まる川口選手
2月1日に終了したヨーロッパ選手権のペアでは、川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ組(ロシア)が2度目の優勝を果たしました。ソチ五輪シーズン序盤の2013年10月の試合中、スミルノフ選手が右膝の靭帯を断裂し、五輪出場を断念せざるを得なくなった2人。
ソチ五輪シーズンを最後に引退も考えていた2人でしたが、現役続行を決め、今シーズンはスケート・アメリカで優勝、NHK杯も2位でグランプリファイナルにも進出したのち、ヨーロッパチャンピオンになりました。3月末の世界選手権での演技に期待も高まります。
その川口悠子選手に、ヨーロッパ選手権後、お話を聞きました。
――昨シーズン前までは、ソチ五輪を集大成と考えていた川口組ですが、今シーズンも競技を続けようと思ったのはどうしてですか?
「昨シーズンが終わった時点ではもう、『五輪に出られなくて残念』という思いは消えていました。ただ、五輪シーズンのために作ったフリー『マンフレッド交響曲』を試合で滑れていないことが心残りでした。だから今シーズンも続けることにしました」
――とても深く美しいプログラムですよね。
「今自分にできる最大の表現が入っているし、ああいう(重厚でドラマティックな)プログラムを今までやったことなかったこともあって、大好きです。サーシャ(パートナーのスミルノフ選手)もタマラ(・モスクヴィナコーチ)もあのプログラムが大好きです」
――ソ連やロシアのペアの系譜を継ぐ王道のプログラムの香りがします。4分半のストーリーは?
「気が狂って遠くの世界へ行ってしまいそうな私を、サーシャの愛で連れ戻す。それが振付けした時の最初のストーリーでした。曲はオリガ・スペシフツェワというバレリーナの人生がもとになった『赤いジゼル』というバレエで使われています。ですからこのバレエを参考にした時期もありました。振付師、サーシャ、私、タマラとそれぞれ自分の解釈があって(笑)、今は、サーシャの私を振り向かせたいという気持ちは最後まで叶わず、私は自分の人生を踊り続ける……という感じのストーリーだと思います」
――序盤でサーシャに全体重を支えられて寝ているような場面の意味は?
「最初から最後まで彼を突き放すのではなく、女性として気持ちが揺れる場面があってもいいのでは(笑)?」
――みんなの解釈が違っても、何かすごいものがある感じが伝わってくるプログラムですよね。
「曲と振付けが私たちをひとつにしてくれます。私個人としては『これがストーリーです』と観客の皆さんに押しつけたくありません。ファンタジーの世界を滑っているわけではないので。曲と演技(私たちの動き)から感じるものは人それぞれだと思う。観ている人が自身の経験を重ね合わせたり、心の奥底にあった感情が湧いてきたり。そこからそれぞれのストーリーが生まれた時に、このプログラムが『作品』になるのだと思います。そう考えると、私たちが果たすべき役目はかなり難度が高いかも(苦笑)?」
――終盤、サーシャがダン、ダンと氷を強く踏み鳴らして怒る演技ですが、これまでああいうのをフィギュアスケートであまり見たことないですね。
「サーシャ自身、あの振付けはとてもお気に入りのようです」