ミステリアスなテナーサックス奏者 ウェイン・ショーター 「ナイト・ドリーマー」より「ヴァーゴ」(Virgo 乙女座)
Night Dreamer
乙女座は8月24日から9月23日生まれの人の星座です。こつこつと根気よく努力を続けることができるのが、この星座を持つ人の特徴。そういう意味でも、ウェインは練習熱心でなければ大成できない楽器と言われるテナーサックスがピッタリなのかもしれません。
それにしても、この曲の持つ神秘的な魅力はどう表現したらよいのでしょう。それは第一に、メロディの持つ超然としたイメージ、そして次にはやはりウェインの持つ音色が、影響していると思われます。
ウェインのテナーは、ジョン・コルトレーンの影響を感じさせつつも、独自の世界観を持っています。コルトレーンに見られる自己の内面への探究、研鑽というよりは、自然の神秘や超常現象を思わせる外へ向かったものです。
ライブハウスなどの狭い空間を支配するのではなく、ウェインにもっとも適しているのが、屋外の大きなステージです。ウェインのフレージングは、いわゆるテナーサックスの系譜では語ることのできない、自然と一体化したスケールの大きなものです。
そういう意味でも、この「ヴァーゴ」はまさにハマり曲。ウェインの独特のこもったようでいてピュアな感性を感じさせるテナーの音色と、神秘的なメロディが、すぐに聴くものを星の世界へと誘ってくれます。
また、伴奏陣の好演も特筆すべき出来です。この伴奏陣は、当時のジョン・コルトレーン・カルテットのメンバー。ピアノのマッコイ・タイナー、ベースのレジー・ワークマン、ドラムのエルヴィン・ジョーンズという面々。ここでも息の合ったところを十二分に聴かせます。
マッコイのピアノはコルトレーンの「バラード」を思わせる出来でとても美しく、エルヴィンのブラシはいつもながらのキレの良さ。そしてベースのレジー・ワークマンがいつも以上にメロディアス。そのクオリティの高さには、あらためて感嘆するしかないほど。
この作品はジャケットも秀逸。このジャケットを眺めながら、グラス片手に聴くひと時は、まさにナイト・トラベラー! 当時のブルーノート・レーベル作品のクオリティの高さに感心させられます。
また、CDになって、この「ヴァーゴ」の別テイクも聴くことができるようになりました。トータルな作品としての観点からは、ありがた迷惑な場合もある別テイクが、ここでは甲乙つけがたい出来でうれしいサプライズです。
本テイクの方は、音色もソフト。テーマ部分の雰囲気は神秘的で、美しさが際立っています。別テイクは、サックスが鳴っており、よりアグレッシヴなプレイです。どちらも、捨てがたいので、このCDを購入される場合は、ぜひこの「ヴァーゴ」の別テイクが付いたものを購入する事をおススメします。
次のページでは、ウェイン・ショーターが別の星座をテーマにした作品が登場します!
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