肝硬変とは
肝硬変になると、この肝臓が硬く小さく変化していきます
肝臓は再生能力が非常に高い臓器で、手術で3/4切除しても元に戻る能力があります。肝臓が一時的に炎症を起こしても、原因となるウイルスやアルコールを排除すれば元に戻ります。
しかし、肝臓の炎症が長期間に及ぶと、さすがの肝臓も立ち上がることができません。肝細胞は、炎症による破壊と再生を繰り返すことにより繊維組織に置き換わり、ゴツゴツとした硬い肝臓になります。それに伴い人体の化学工場である肝臓の働きも低下していきます。
肝硬変はある意味、肝臓が行き着く終着駅。ここまで行き着くともう戻ることはできません。日々襲いかかる合併症に悩まされる生活を送ることとなり、生活の質は著しく下がります。
肝硬変の原因
日本では、肝硬変の原因の大部分はウイルスです。肝硬変の65%がC型肝炎ウイルス、15%がB型肝炎ウイルス、そして、13%がアルコールによるものです。その他の原因としては、原発性胆汁性肝硬変や原発性硬化性胆管炎、ヘモクロマトーシス、自己免疫性肝炎などの慢性肝疾患が挙げられます。最近では、メタボに関連した非アルコール性脂肪肝炎(NASH)からの肝硬変が注目されています。欧米諸国では、肝硬変の原因No.1はアルコールです。アルコールによるものがおよそ80%と大部分を占めています。日本でも、食生活の欧米化とともにアルコール消費量は増加傾向にあり、アルコールによる肝硬変が増加してきています。春一番さんや林葉直子さんもアルコールによる肝硬変です。
肝硬変の症状
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれており、進行するまで症状はありません。症状がでたときは、かなり進行した状態が考えられます。肝硬変の症状としては、以下のようなものが考えられます。- からだがだるい
- 食欲がない
- 疲れやすい
- 皮膚が黒ずむ
- からだがむくむ(浮腫)
- お腹がふくれる(腹水)
- 目や皮膚の色が黄色くなる(黄疸)
- 手のひらが赤くなる(手掌紅斑)
- 胸などに赤い斑点がでる(クモ状血管腫)
- 手が震える(羽ばたき振戦)
- 意識障害(肝性脳症)
症状がでたときにはかなり進行している可能性があります
肝硬変の検査・診断
- 血液検査:黄疸の指標となるビリルビンや肝臓の能力をみるアルブミン、プロトロンビン時間などを調べます。また、肝硬変になると血小板が低下するので血小板の値を確認します。血小板が10万をきると肝硬変が強く疑われます
- 腹部超音波検査:肝臓の形や大きさ、腹水や脾腫の有無などを調べます。ウイルス性の場合は特に肝臓癌ができやすいので、腫瘍の有無なども確認します
- 腹部CT検査:腹部超音波検査より詳しく肝臓の状態をみることができます
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ):肝硬変によりできる胃や食道静脈瘤の有無などを調べます
肝硬変の食事・生活
食事はバランスのとれたものをとるように心がけます。障害を受けた肝臓を再生し、機能を維持するためには必要な栄養素を十分摂る必要があります。また、肝硬変の患者さんは肝臓に栄養を蓄える力がないため、空腹時に飢餓状態となりやすいので注意が必要です。肝硬変の患者さんが夕方から朝まで12時間何も食べないのは、健常人が3日間絶食したのと同じと言われています。そこで就寝前に軽く夜食をとって、肝臓が夜間にエネルギー不足にならないようにする夜食療法「Late Evening Snack(LES)」(頻回食療法)という方法も勧められています。ただし、栄養過多になる可能性もあるので、他の食事のカロリーを抑えて1日の総カロリー数を増やさないようにすることが大切です。
肝性脳症を起こしている場合は、蛋白質が悪化の原因となるので蛋白質制限が必要となります。便秘も脳症の要因になるため、食物繊維を多くとり便通をよくすることも大切です。腹水や浮腫をきたしている場合は、塩分や水分制限が必要となります。進行した肝硬変では安静が必要です。
肝硬変の治療
適切な検査と治療で肝硬変は防ぐことが可能です
肝硬変まで行き着くと、最終的には黄疸や腹水、脳症などをきたす可能性が高くなります。そして、生活の質は著しく低下します。肝臓は「沈黙の臓器」であり、症状が出現したときにはかなり進行していることが多いのが現状です。
肝硬変になるまで自覚症状はほとんどありません。そして、肝硬変の治療は非常に困難です。しかし、肝硬変になるにはウイルスやアルコールなど明らかな原因があります。また、肝炎から肝硬変になるまでにはある程度の期間があります。定期的な検査や治療を受けることで、肝硬変は防ぐことができる病気です。現にウイルス性肝炎から肝硬変へ移行する人は、治療の進歩によりかなり減少してきています。