テクノポップ/海外のテクノポップ

共産テクノ序章~共産テクノとは何ぞや?

僕たちが耳にしてきたテクノポップ、そのほとんどは、資本主義陣営としての日本、欧米諸国からです。しかし、冷戦時代に於いても、世界はフラットだったのです。その検証のため連載「共産テクノ」を始めます。先ずは、「共産テクノとは何ぞや?」から始まりソ連の共産テクノのパイオニアを紹介します。

四方 宏明

執筆者:四方 宏明

テクノポップガイド

共産テクノとは?

forum

フォルム

「共産テクノ」というテーマで今後しばらく連載をしていきます。既に「ソ連のテクノポップ・バンド~フォルム」という記事を書きましたが、その時点はまだそこまで広範囲に「共産テクノ」という名の下に記事が書けるか自信がありませんでした。しかし、調査を重ねて行くと、当時のソ連はもとより共産陣営の国々にテクノポップ~ニューウェイヴと分類してもいい音楽が存在していた事が、分かってきました。

ソ連のテクノポップ・バンド~フォルム (All Aboutテクノポップ)

 

sovietflag

ソ連の国旗

先ずは「共産テクノ」の定義をします。第二次世界大戦後、世界はイデオロギーによって大きく二分されました。一つは米国を中心とした資本主義陣営。もう一つはソ連を中心とした共産主義陣営。その二陣営が対立していた状況は冷戦と呼ばれています。一般的にはベルリンの壁が崩壊し、ゴルバチョフとブッシュによる冷戦終結宣言のあった1989年を冷戦の終わりとしていますが、ここではソ連が消滅した1991年までをその期間とします。すなわち「共産テクノ」とは、冷戦時代にソ連を中心とした共産主義陣営で作られていたテクノポップ~ニューウェイヴ系の音楽を指します。テクノポップ~ニューウェイヴ系自体がムーヴメントとして始まったのが、70年代終盤ですから、実質は10年ちょっとの歴史ですね。ただ現在でも共産主義をイデオロギーの根幹とする国々があり(多くは共産党独裁という形で資本主義を政策としています)、またソ連崩壊後も共産主義から脱却したものの独裁政治的な要素が強い国もあります。よって、基本的に冷戦時代以降に於いて、それらの国々については、共産テクノの対象となっていません。

 

どうして共産テクノなのか?

では、何故、「共産テクノ」に興味をもったかを説明します。別に、ここでイデオロギーまたはプロパガンダ的な意図がある訳ではありません。よって、共産主義を賞賛するつもりは全くありません。同時に、資本主義が常に正しく、資本主義=民主主義または自由主義というつもりもありません。僕自身、左翼でも右翼でもありません。確かに共産主義には、“指導”という名の下に独裁的な政治が行われるケースが多い事も事実ですが。

僕の興味は世界中のテクノポップの発掘にあります。日本そして、英国・米国を中心とした欧米のテクノポップから始まりましたが、比較的マイナーなものを含めても最近まで資本主義陣営にいる国を対象としていました。「テクノポップ」をテーマとした書籍は数多く出ていますが、80年代のテクノポップを扱った場合、そのほとんどは資本主義陣営です。冷戦時代、僕たちが得ていた情報も資本主義陣営からくるものでした。共産主義陣営の国々でロックをやっていたというくらいの情報で、皆無ではありませんが、世間に認知されていた共産主義陣営におけるテクノポップ系アーティストは数少ない存在です。

現地での調査、例えば、博物館に行ったり、その時代のモニュメント的なものを現地で体感して来る事も、重要ですが、何しろ20年以上前の話です。現地に於いても地下に潜り込んでその情報を手に入れることは、よっぽどのマニアに偶然巡り会わない限り、難しい領域です。だからこそ、調べる価値があるんですけどね。しかし、ネット上で言語の垣根を越えていくと(特にロシア語は重要!)、資本主義陣営である日本の人たち、つまり我々が知ることの無かった情報、音源、映像に行き着く事が可能となりました。初心者ながら、ロシア語の勉強をした甲斐がありました。

 

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