新規分譲と中古流通の大きな隔たり
シアタールームに巨大なジオラマ、数タイプ用意されたモデルルーム。大規模マンションの販売センターは、アミューズメントパークさながらの様相である。不動産はスケールと魅力が正比例の関係にある。それを建設途中に理解してもらおうと売主はあの手この手を試みる。完成したら、その迫力は(たいていの場合)イメージを凌駕するだろう。巨大なエントランス、ロビーから見る緑と水の借景、上層階からの眺望、どれをとってみても実物がはるかに良い。しかし、ハード(建物)にも増して、そこから生まれるコミュニティはもっと注目に値する。戸数によっては、住宅というよりもひとつの街ができるほどのインパクトが大規模マンションにはあるからだ。
ところが、新規分譲のときにはあれほどPRを繰り広げていたにもかかわらず、中古流通時の宣伝(チラシやネット)告知はじつにあっさりとしたもの。所在地、駅からの距離(徒歩分数)、専有面積、価格。広告ルールに基づいた最低限の表記のみ。規模を問わず情報量は同等、そんなケースが珍しくない。
「情報発信の方法」は物件特性が決める
理由はコスト負担が仲介会社だから。彼らにとって売主は等しく顧客。大規模だからといって特別に優遇するわけにはいかないはずだ。付加価値を伝えるのはオーナー側の責務だと認識しなければならない。建物は、存在そのものが媒体の役割を果たす。だから人目につきやすく、ゲストの絶対数も多い大規模マンションは圧倒的に有利だ。年が経てば緑も豊潤に、季節ごと話題にのぼる。称賛の声はやがて需要にかわり、その総和が資産価値へとつながる。「広尾ガーデンヒルズ」などはその典型だろう。しかし、外から見えるランドスケープや外観デザインとは違い、共用施設や眺望、コミュニティの成長などは異なる情報発信の手段が必要。外からだけでは伝わらないからだ。
先日、こんな体験をした。まったく異なるタイプの2つのタワーマンションが並んでいる。片方は、スタイリッシュな外観に高級ホテルさながらの重厚なエントランス。夜間、照明に浮かび上がった車寄せは迎賓館のよう。もう片方は、建物の中に特徴が。キッチンスタジオにヒーリングスペース、眺望ラウンジに屋上も開放されている。
前者は、現地前を道行く人にさえその魅力が浸透するかもしれない。が、後者はオーナーと招かれたゲストだけが知る充実感。どちらのタイプが好みかは当然人それぞれだが、中古流通市場のなかで検討の土台に上がりやすくするためには、後者のタイプはその魅力を表現できるコンテンツを別途設ける必要があると感じた。大規模はスケールから生じる利点を伝わりやすくすることが重要で、さらにその方法は個々の特徴によって左右されるのではないかということ。
お手本になりそうな事例が次々と
つい最近、こんなメールが届いた。中古マンションの情報開示の必要性を説いた記事「今すぐできる、マンションの資産価値を高める方法(2012年7月掲載)」をきっかけにマンションの公式サイトを作った、という報告。実際のサイトはこちら。パートナーの発掘が奏功したのか、外観は非常に高い完成度。特にご覧いただきたいのは「Blog」。屋上デッキでビアガーデンを開くまでの記録などは画像を見る以上にこのマンションを理解できると思うのだが、いかがだろう。
他にも少しずつではあるが、公式サイトを設置する管理組合が出てきたようだ。住人のイベント活動や管理規約にとどまらず、防災への取り組みなどもいざ購入を検討しようとする場合は参考になる。新たな試みを見つけたら、下記サイトでリンクを追加していきたいと思っている。
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大規模マンションの管理組合<公式サイト添付>
分譲マンションの公式サイト例
パークシティ武蔵小杉ミッドスカイタワー
ワールドシティタワーズ
ブリリアマーレ有明