アロマテラピー/厳選アロマオイル・精油の効能と使い方

ブルガリアのアロマ文化「ダマスクローズ」

ブルガリアのダマスクローズは、毎年5月下旬から6月上旬にかけての約20日間に収穫され、水蒸気蒸留されます。今年のバラ畑や蒸留所の様子、カザンラクで行われたバラ祭りの様子をガイドがご案内します。

松田 さと子

執筆者:松田 さと子

アロマテラピーガイド

ダマスクローズの栽培に適した条件とバラの谷の特徴

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バラの谷は、バルカン山脈とスレドナ・ゴラ山脈にはさまれたエリアにあります。

ブルガリアの中央を東西に走るバルカン山脈とスレドナ・ゴラ山脈に挟まれた渓谷の中を流れる2つの川の流域一帯にはバラ畑が点在しており、バラの谷とも呼ばれています。16世紀頃にカザンラクでバラの栽培がはじまったのが最初で、現在では、全長150キロにも及び、バラ畑が点在しております。

バラの谷では、大きな山脈が北風や南風を止めるため、植物が生育しやすく、酸性度が低く水はけの良い土壌があり、昼は暖かく夜は涼しくなるなど、ダマスクローズの栽培に適した条件が整っているのです。

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咲き始めたダマスクローズは日が高くのぼると香りが揮発してしまうため、収穫は朝4時半頃からはじめ、収穫された花は次々と蒸留していきます。

このように、土壌、湿度、雨量、気温がダマスクローズの栽培に適していたため400年以上の年月を経てもなお、バラの谷は、世界のローズオイル生産の中心地となっています。しかし、このローズは、観賞用のローズとは違い、年中咲いてはくれません。

ダマスクローズを収穫できる期間は、1年に20日間程度(5月下旬~6月上旬)しかないのです。 収穫時期のバラの谷は、朝は晴れ、夕方頃から雨がまとまって降るというような天候で、この雨が香り高いダマスクローズを育てる大切な条件となっています。

 

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ダマスクローズ

ダマスクローズは、太陽の光を浴びた時に開花しますが、日中になって気温が上がり、花が開くと香りのもととなる香気成分が外に逃げてしまうため、早朝の朝もやの残る4時半ごろから太陽が昇りきる午前10時半ごろまでの数時間のうちに、ダマスクローズはひとつひとつ丁寧に手摘みで収穫されています。

それゆえ収穫にはかなりの人手が必要です。例えば、アルテヤファミリーでは、65ヘクタールのバラ畑の収穫に20日間で500~600人の人を雇ったそうです。前日の夕方にバラの状況をみて、翌朝、何人の人手が必要か算出し、翌朝の4時頃、バスを出し、町で必要な人員を集め、畑での収穫作業が開始されるのです。

ローズオイルやローズウォーターは水蒸気蒸留法で抽出

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水蒸気蒸留中の窯の中の様子です

ローズオイルやローズウォーターは水蒸気蒸留法によって抽出されます。水蒸気蒸留法の歴史は古く、今から1000年以上前の10世紀に、ペルシアの錬金術師、イブンシーナが初めて水蒸気蒸留法を確立し、その時使われた植物が、ローズだったと言われています。

古来に使われていたような蒸留窯は現在使用されておらず、蒸留所はプロセスが自動化され温度等が厳密に管理されています。また、ローズウォーターは、ローズオイルを得るときの副産物、とアロマテラピーの授業で習われた方も多いかと思いますが、今回、お話を伺ったブルガリアの企業では、ローズオイルを抽出する場合と、ローズウォーターを抽出する場合とで、蒸留時間を変え、入れる水の量を調節し、より質の高い製品作りに取り組んでおられました。

例えば、アルテヤ社では、10トンタンクに800kgのローズを入れ、水蒸気蒸留法で温度を厳密に管理されながら約3時間かけて250gのローズオイルが抽出されています。ローズウォーターのみを主に抽出する場合には、約4.5時間かけて蒸留が行われます。

では、次のページでは、ローズオイルの抽出量と環境の関係について お話ししたいと思います。
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