人の失敗を笑う、不幸を笑う……シャーデンフロイデと子どもの心
人の失敗を笑う……シャーデンフロイデと子どもの心
これは、ドイツ語で「欠損のある喜び」「恥知らずの喜び」の意味。他者の不幸、悲しみ、苦しみ、失敗を見聞きした時に生じる、喜び、嬉しさといった快い感情、と定義されています。日本語のシャーデンフロイデの類義語としては「他人の不幸は蜜の味」「ざまを見ろ」という表現が近いものとして挙げられます。
哀しいですが、シャーデンフロイデは、人間の感情の1つ。最近の研究で、シャーデンフロイデはストレスを緩和する効用があるという研究結果まで出てきました。
シャーデンフロイデとは人間の裏の部分であり、しかも、美しくない感情です。それでも消えることなくしっかりと存在している……。私自身、育児コンサルタントという立場以上に、1人の母親として、とても気になるのが、このシャーデンフロイデの存在。
- 私達はいつ頃からシャーデンフロイデを感じるようになるのか?
- 子ども達は、シャーデンフロイデを感じるのか?
子どものシャーデンフロイデ:ドイツの大学の研究
この研究には、100人の子ども(男児48人、女児52人、4~8歳)が参加し、次のような展開のストーリーを紙芝居形式で聞いてもらいました。- ある女の子が、自分の弟のためにプラムを取ろうと木に登っていたら、運悪く、下に落ちて怪我をしてしまったというストーリー
- ある女の子が、自分の弟めがけてプラムを投げつけようと木に登っていたら、運悪く、下に落ちて怪我をしてしまったというストーリー
結果、4~8歳全ての年齢で、シャーデンフロイデを示した子が確認されたそうです。そして、それは、女の子が良い行動をしているときに起こったものなのか、悪い行動をしているときに起こったものなのかで違いが見られました。
シャーデンフロイデを示した子ども達にとって、2のケース(悪い事をしていたために痛い目にあった)は面白可笑しく映り、その子を助けようとは思わないと答えたそうです。そして、この傾向は、7歳以上の子に顕著で、登場人物の行動がモラル的に良いのか悪いのかが、シャーデンフロイデを示すかどうかに影響していたそうです。
これだけ聞くと、「そんな幼少時からシャーデンフロイデを……」と思われるかもしれません。でも、全体的に見ると、子どものシャーデンフロイデは総じて低いことも分かりました。良いことをした例だけでなく、悪いことをした例に対してもです。
以下が主な結果です。
- シャーデンフロイデを示したレベルは、平均すると、0~8点の2.37点に留まった
- 登場人物に同情し、あわれむ気持ちの方が、常にシャーデンフロイデを上回っていた(5点以上)
- 良い行いをしたのにもかかわらず不幸な目に合ってしまったケースでは、子ども達の示すシャーデンフロイデはほぼゼロだった
親としてホッとする結果ですね。また、この結果はこのようにも捉えられます。
- シャーデンフロイデは、成長とともに出てくるもの
*出典:イギリスの学術誌 British Journal of Developmental Psychology 「Daniel has fallen into a muddy puddle - Schadenfreude or sympathy?」
メディアの影響も侮れない
何かが起こるとき、それには「きっかけ」や「原因」があるはずです。シャーデンフロイデも例外ではありません。テレビやゲームなどは、少なからず影響していると考えられます。例えば、テレビのバラエティー番組。ボケ⇒ツッコミ⇒笑い。これもパターンによっては、シャーデンフロイデのきっかけになりえます。見ていて「ここまでやる?」と感じるやりとり、ありますよね。お笑い芸人の方からしたら「笑いを取るためには何でもやる」のでしょう。大人にはその気持ちが理解できても、純粋な子ども達は、そんな笑いから少しずつシャーデンフロイデを覚えていくこともあるでしょう。
シャーデンフロイデは人間の感情の1つで、私達が持ってしまっているもの。世の中はきれいごとばかりでは済まされないのが現実かもしれません。でも、子どもの心はキレイに守ってあげたい。矛盾に気づきつつも、親ならこう思います。
できることからはじめよう!
■好ましくないシーンを見せない
年齢が上がるとともに、子ども達の見たがるテレビ番組や夢中になるゲームも大人レベルに近づいてきます。横で一緒に見ていれば、「これはよくないかな」に気づけるので、まずは一緒に内容をチェックしてあげましょう。
■好ましいシーンに触れさせる
相手が困っているときに示すいたわりの気持ち、同情心、何か役に立ちたい、そんな美しい気持ちは、シャーデンフロイデと相反する存在。お子さんに、ご主人に、ご両親に、ママから積極的にいたわりの心を伝えていってあげましょう。
どちらも、書くまでもない基本的なことかもしれません。大切なのは続けることです。これを地道に続けることこそ、心育につながります。ゆっくりコツコツと、子ども達に優しい気持ちを伝えていきたいですね。
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