蒸気機関車9600形について
9600形は、1913(大正2)年から製造が開始された国産の貨物用蒸気機関車である。使い易い機関車として重宝され、四国を除く全国で800両近くが活躍した。あとから誕生した他の形式の機関車が引退しても働き続け、1975年12月に国鉄最後の蒸気機関車牽引旅客列車(C57形)、最後の貨物列車(D51形)が走り去った後も、1976年3月まで北海道の室蘭本線追分機関区で入換用として3両の9600形が地道に働いていた。これが、国鉄最後の蒸気機関車であり、9600形は、国鉄蒸気機関車の歴史の幕引きの役割を果たしたのである。その後、不定期で動いている蒸気機関車は、すべて保存用の機関車である。これだけ、各地で活躍して馴染みがあった9600形なのに、博物館や公園などで展示される静態保存機ばかりであった。今回、「SLキューロク館」で展示されることとなった49671号機は、1920(大正9)年に製造され、主として北海道で活躍、1976年に引退した。その後、真岡市内の井頭公園で長年保存されていたものである。車体の保存状態から、蒸気の力で本線上を走ることは無理だが、圧縮空気を送り込むことで、僅かな距離を動かすことなら可能となった。その結果、今回のようなデモンストレーション運転を行うことになったものだ。
展示運転は、日曜、祝日に一日3回、建物を出て、数十メートルの線路を二往復する。僅かな距離とは言え、動く以上は線路の周囲にロープを張って、安全対策も怠りない。ゆっくりとロッドを回しながら動く蒸気機関車を野外で見るのは、実にわくわくする。たとえ、圧縮空気であるとはいえ、動いてよかったと思う。
<おことわり>
9600形蒸気機関車の写真は、関係者のご厚意により4月28日のオープン以前に撮影したもので、見学者の安全を守るロープなどは写っていません