この機会は見逃さないで!
ルネサンスを代表する画家 ラファエロの展覧会
今年は「日本におけるイタリア2013」とタイトルがつけられた全国各地でイタリアにまつわるさまざまなイベントが開催されれる楽しい年! ファッションやグルメはもちろん、大規模な美術展も続々と開催される予定です。
なかでも、現在注目を集めているのが国立西洋美術館で開催中の「ラファエロ」展。展覧会開催わずか1ヶ月強で20万人もの来場を記録している大人気の展覧会です。
じつは、この展覧会が開催されるまで、日本ではラファエロの大きな展覧会は開催されたことがありませんでした。世界中で人気が高く“人を呼べる”作品が多いラファエロの作品は、どこの美術館も手放したくないもの。そのため、海外の美術館からラファエロの作品を同じタイミングで借りることがとても難しかったのです。
けれども、このたびフィレンツェ文化財・美術館特別監督局の全面協力で世界中からラファエロの名品が上野の地に集まることになりました。ラファエロの作品が1点来るだけでも大ニュースなのに、23点も集まるのは画期的なこと。
だからこそ、この機会は逃さずに訪れたいもの。ラファエロ自身の手による自画像や、その優美さに心がときめく聖母子像などたっぷり堪能できます。
「ラファエロ」展 気になる主要な作品は……。
土日やゴールデンウィーク(GW)などの祝日時には混雑が激しいとされる「ラファエロ」展。じっくりと鑑賞するにはかなり余裕をもった計画も必要です。
限られた時間で鑑賞する場合、事前に若干の予習も大切。まず、展覧会で見ておきたいのは、ラファエロ20代前半のものと思われる《自画像》。
37年という短い生涯の間に数多くの名作を残した彼、当時は端正な顔立ちで非常にモテており、それが遠因で若くして亡くなってしまった……、とマニエリスム(ルネサンス末期からバロック時代の間の時代)の画家で著述家であったジョルジョ・ヴァザーリが記しています。
「彼が500年以上も世界中の人を魅了する絵を描いているのね」と思いながら鑑賞するのもいいかもしれません。
そして冒頭で紹介した絵画《大公の聖母》。
わずかながらに見上げる形で飾られている聖母子像は、優しいライティングでその神々しさが際立っています。柔和な表情の聖母マリア、若干ながら大人びた表情の幼子イエス、ふたりの肌や布の質感など、背景なし、登場人物たった2名というシンプルな構成の絵ではありますが、いつまででも見つめることができる奥深い絵です。
生涯に多数の聖母子像を描き、その名を響かせてきたラファエロ。《大公の聖母》は、彼の聖母子像のなかでも代表的な作品のひとつです。18世紀末、ナポレオン率いるフランス軍により、治めていたトスカーナの地を追われた当時のトスカーナ公フェルディナンド3世は、亡命先のウィーンでもこの絵をそばに置いていたそう。これが「大公の」という名の由来です。
また、近年の研究により黒く塗りつぶされた聖母子の背景は、じつは制作当時は建物などの背景が描かれていることもわかってきています。どうやら後世にだれかの手によって塗りつぶされてしまったようです。では、ラファエロ自身はこの聖母子の後ろにどのような絵を描いたのでしょう?
それは展覧会場にあわせて展示されている、《大公の聖母》の下書き(素描)でご確認いただけます。通常は別々の美術館にある二つの絵、同一会場で見られるのは本当に素晴らしいこと。ぜひぜひ見比べてみてください。
もちろん、この2点以外の23点も珠玉の作品ばかり。あらかじめ、図録を手に入れておき、見たい作品を予習しておくという手もあります。
ちなみに、「ラファエロ」展でチェックしておきたいのは、A4版の図録のほかに別に用意された「ミニ図録」という、148mm×125mmという小さなサイズの図録。展示されているすべての作品はもちろん、主要な作品のミニ解説も収録されたカバンに入るかたちの便利な図録です。通信販売で先に買っておくと、予習もできるし帰りの荷物はそんなの増えないし一石二鳥です。
さて、これらの絵を描いてきたラファエロ。いったいどんな人なんでしょう?
ちょっと詳しく解説します。
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