多汗症とは
多汗症(たかんしょう)とは、体温調節に必要な量以上に、汗の量が多くなってしまう状態のことです。必要以上にたくさんの汗が出てしまう多汗症。自律神経の失調が原因と考えられています
緊張や不安感で汗が増える状態とは異なり、自律神経の失調により発生する病気と考えられています。単に汗の量が多いだけでは多汗症と考えませんが、日常生活に支障をきたす場合には病気と判断します。
2012年11月いままで保険の適応のなかったボツリヌス毒素の注射が、腋窩多汗症(わきの下の多汗症)に限って保険が認められるようになりました。
多汗症の分類
多汗症は、全身性多汗症と局所性多汗症の2つに分けられます。腋窩多汗症は局所性多汗症に分類されます。
部位別以外の分類法としては、以下のものがあります。
原因がはっきりしている、続発性多汗症と原因不明の原発性多汗症があります。腋窩多汗症は原発性多汗症となります。
多汗症の治療法
現在、原因不明の「原発性局所性多汗症」に対しては日本皮膚科学科の治療ガイドラインが作成されています。その中で推奨されている治療法として、以下のものがあります。
・塩化アルミニウム液の外用……腋窩
・イオントフォレーシス(電流を患部に流す装置)……手、足に有効
・ボツリヌス毒素の注射……手、足に有効ですが、今回腋窩(わきの下)に保険の適応が認められました
・交感神経遮断術……手に有効
■塩化アルミニウム液の外用
塩化アルミニウム液という薬は、汗の量を減らす作用があり副作用も少ないので、最初の治療薬としてよく使用されます。ただし製薬会社の製剤がないため院内製剤として処方されています。
治療の初めにこの治療をまず受けることが最善と考えられています。この治療が無効な場合、次の治療に進みます。
■イオントフォレーシス
特殊な装置で患部に微弱な電流を流すと、発汗が抑えられることが知られています。健康保険の適応もあり、安価なので、病院にこの装置があれば、治療を行ってみる価値のある治療法です。
■ボツリヌス毒素の注射
今まで自費診療で限られたクリニックで行われていた治療ですが、効果が確実で比較的安全性も高いことから、2012年11月に健康保険の適応が認められました。2013年の時点でこの治療を保険で施行している病院は500程度です。その中で多汗症の治療を扱っている病院のリストを示します。今後この治療が普及してくるものと期待されています。
ボツリヌス毒素は、ボツリヌス菌で生産され人間に作用する毒素です。熊本県の名物である「辛子蓮根」や蜂蜜に少量含まれていた事例が報告されています。この毒素は神経筋接合部に働き、神経伝達物質であるアセチルコチンの作用をストップし、結果として筋肉が弛緩したままの状態となります。筋肉に対する適応症として、眼瞼痙攣、片側顔面痙攣、痙性斜頚、下肢痙縮、上肢痙縮、小児脳性麻痺の下肢痙縮に伴う尖足があります。神経汗腺接合でもアセチルコリンの作用をストップし発汗をほぼ抑える作用があります。一度注射すると効果も数ヶ月持続します。副作用もほとんど認められません。手、足、わきの下など限局した部位では有効です。
わきの下の汗腺が分布する部位にボトックスを注射します。
●使用する薬剤
・ボトックス……両方のわきの下の治療に、1瓶(100単位)92,249円で、約6ヵ月に1回注射します。副作用は神経筋接合部麻痺等が増強、呼吸困難、嚥下障害、全身潮紅、血管浮腫、発疹、嚥下性肺炎、痙攣発作、痙攣発作再発、 ショック、アナフィラキシー様症状、血清病、呼吸障害、過剰な筋弛緩作用、乾癬様皮疹、斑状出血、皮膚異臭、皮下結節、注射部位過敏反応、気胸、腹痛、不器用、運動低下、弾発指、滑液包炎、聴力低下、ウイルス感染、耳感染、尿失禁、関節脱臼、起立性低血圧、脱神経性萎縮、脱神経性筋肉萎縮、発疹、皮膚そう痒感、多形紅斑、脱毛、睫毛眉毛脱落、皮膚炎、注射部腫脹、注射部出血斑、注射部疼痛、注射部ひきつり感、近隣筋疼痛、近隣筋緊張亢進、注射部熱感、注射部不快感、注射部感染、白血球減少、血小板減少、嚥下障害、食欲不振、嘔気、嘔吐、口内乾燥、下痢、頭痛、感覚鈍麻、眩暈、失神、感覚異常、傾眠、神経根障害、筋緊張亢進、筋痛、四肢痛、筋痙縮、関節痛、倦怠、倦怠感、肝機能検査値異常、脱力、脱力感、CK上昇、CPK上昇、発熱、発汗、腋窩部以外からの発汗が増加、感冒様症状、肺炎、耳鳴、呼吸不全、構語障害、頻尿、転倒、挫傷、歩行障害、ほてり、呼吸障害、嚥下障害、呼吸困難、嚥下性肺炎、呼吸機能低下、筋無力症、中和抗体産生、転倒、抗体が産生、肺炎、重度衰弱、胎児死亡、妊娠への影響、胎仔への影響、脱力、筋肉麻痺、眼瞼下垂、構音障害、呼吸器症状、ボツリヌス中毒症状、全身性脱力、不整脈、心筋梗塞、心血管系障害、致命的転帰、妊娠率低下、受胎率低下、授胎率低下、胎仔体重減少、骨化数減少、筋萎縮、筋重量減少などです。
しかしながら初回治療で少量からスタートし、徐々に使用量を上げていけば副作用を発生させることなく投与量を決定できるので、副作用の少ない安全な薬剤です。
いままでの治療ですが、手の多汗症に有効な治療として手術療法があります。
■交感神経遮断術
入院、全身麻酔の上で内視鏡を使用して、交感神経を永久に遮断する方法です。手に対して有効。効果は確実ですが、遮断した部位のまわりの発汗が増加する副作用がありますので、副作用について納得した上で、治療に慣れた病院で手術を受けることをお勧めします。健康保険の適応があります。入院期間1週間、治療費用30万円程度(高額医療の対象となります)。