革靴の傷を修理する! 革靴に切り傷が……自分でできる修理方法とは
小生、服飾系の専門学校で講義をしています。自分も当時はこんなだったっけ?と思わずにいられない位に、20歳前後の学生さんはとにかく元気。時にはもの凄く鋭い質問を寄せてくれる刺激的な空間なので、こちらも負けじと45歳の体に鞭打ち、画像や実物を持ち込み身ぶり手ぶりを交えつつ授業を進めるのですが、彼らのパワーに圧倒されっぱなしで一日を終え帰宅すると……。あっ、履いていた革靴に傷が付いてる!恐らく机の角とかでやられてしまったのでしょう。薄い擦れ傷程度なら通常の乳化性クリームでのケア(参考:スムースレザー靴の手入れ法と揃える道具一覧)で簡単に回復できるのですが、上の写真のような切り傷系や捲れ傷系のものは、それを施しても痕がはっきり残ってしまう厄介者。
いや、履き続けた履歴を示す「名誉の勲章」だと寛容に割り切ってしまうのも大いにアリですが、その一方で完璧、とは言わないまでもできれば傷跡を目立たなくしたいと思う気持ちも理解できます。この種の傷については、小生に限らず多くの読者の方が悩んでいらっしゃるはず。近年伸長著しいプロのシューシャイナーさんにリペアを依頼するのも素晴らしい解決策ですが、そこまで酷いものでないなら、自分で何とかしたいなぁ……。
そこで今回の記事では、比較的簡単に出来るその解決、というか緩和方法をご説明申し上げます。適応可能なアッパーの革に制限がありますが、覚えておいて絶対損はしないですよ。
サフィールの補修クリームが効果的! 傷を修理しよう
■用意するもの- クリーナー
- 状況によっては、皮革専用の接着剤
- 紙やすり(400番・600番・1000番・1500番・2000番・3000番)
- SAPHIRのレノベイティングカラー補修クリーム(靴の色に合ったもの)
- 綿棒
- いつも使っている、靴の色に合った乳化性靴クリーム
■手順
- 傷の部分だけでなくその周辺部も含めて、まずクリーナーで汚れや古い靴クリームを落とします。注射を受ける前のアルコール消毒のようなイメージです。ゴシゴシ擦るのが禁物なのはいつも通りです(参考:液体クリーナーの使い方を深く考えてみる!)。
- 切り傷が深い場合や捲れ傷の場合は、皮革専用の接着剤でそれらを塞いで下さい。
- 紙やすりを使い、傷とその周辺部との段差を徐々に慣らして行きます。この工程がどれだけ丁寧に行えるかが結果に歴然と表れますので、横着せず紙やすりを「400番→600番→1000番→1500番→2000番→3000番」と段階的に用いて下さい。次に用いる紙やすりの番手を、一気に2倍以上に引き上げないのが上手く行くコツ。3000番まで用いれば色はともかく、傷自体はこの時点で殆ど目立たなくなるはずです。
- SAPHIRのレノベイティングカラー補修クリームを、綿棒を用いて傷とその周囲に塗ります。薄目に、境目をボカしながら塗るのを心掛けましょう。
- 4.が乾いた後、通常の靴に近い色目の乳化性クリーム(参考:乳化性クリームの選び方!革靴の手入れに良い色や形状は?)や必要に応じて油性ワックス(参考:革靴の手入れに使うクリームの選び方と使い方)を用いて仕上げます。
ヤスリと補修クリームで傷は目立たなくなります
実は上の靴、つま先の小指側先端部にグサッと切り傷ができてしまったのですが、ほぼ隠すのに成功しました。近目で見ると「あ、ここかも?」と漸く分る程度で、ここまでできればもう文句無しでしょう!要は、革の表面を削って傷との段差を無くしてしまう結構大胆な作戦な訳ですが、紙やすりの使い方のコツとかは小さい頃にやったプラモデルの製作を思い出してしまいます。
今回用いた「SAPHIR レノベイティングカラー補修クリーム」は、この種の補修・補色専用乳化性靴クリームとしてはダントツの品質を誇る、このメーカーの隠れた名品!色が42色もあるだけでなく、それらのミックスが可能で靴に合わせた微妙な色調が出せます。
一方で、「あ、色付け失敗した……」と思ったら塗った直後ならクリーナーで落とせるので、プロの修理業者にも愛用者が多いのも頷けます。色数があまりに豊富なので、購入の際はできれば修理する靴を売り場に持参して、色合いをチェックした方がいいかも?
とは言え、紳士靴の場合は自己流のアンティーク仕上げ(参考:靴に使う「牛革」を深く考えてみる)を施してしまうという恰好の逃げ道もあるので、そこまで神経質にならなくてもいいかな。
ただし、念の為お断り申し上げておくと、この方法が有用なのは、いわゆる「牛の銀付きスムースレザー」を用いたアッパーで切り傷系のトラブルが起きた時のみです。
ガラス張り革やエナメル革、それに撥水レザーのように表面がコーティングされたアッパーの革の場合、更にはシュリンクレザーや型押し革のような表面に意識的な段差が施された革の場合はには、表面をやすり掛けすることで周囲と明らかに質感が変わってしまうのでお勧め致しません。
あと、履きジワの劣化が進行したひび割れを直すのは、さすがにこの方法でも不可能ですので、この点もご注意いただければと思います。
【関連記事】