掌蹠膿疱症とは……無菌性膿疱が出現する皮膚疾患
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)とは手掌、足底に対称性に無菌性膿疱(細菌感染が原因でない膿の塊)が出現する慢性の皮膚疾患です。胸鎖肋間骨化症(胸骨と鎖骨、肋骨の間の軟骨が骨化する病気)を10%程度の確率で合併するといわれています。<目次>
掌蹠膿疱症の頻度・性差・年齢
中年の男性に好発します。喫煙がきっかけで発症することがあり、それも男性に多い理由の一つと考えられます。掌蹠膿疱症の原因
喫煙、慢性扁桃腺炎、虫歯、歯肉炎、金属アレルギー(歯)などが原因となっている例があります。長期間の喫煙が原因となっている方が多いです。掌蹠膿疱症の検査
・採血…白血球数、CRPを測定します。・扁桃誘発試験…扁桃腺を綿棒で刺激し、掌蹠膿疱症の症状を観察します。
・金属パッチテスト…歯の金属がアレルギーとなっているか確認するテストです。
・胸部X線…胸鎖肋間骨化症の診断に施行します。
胸部単純X線画像。軟骨が骨化して白くなり画像として診断可能
掌蹠膿疱症の症状・画像
初期には、手掌、足底、特に土踏まずの部位に小さな水疱が多数生じます。この水疱が膿疱(膿のある皮疹)に変化し、膿疱の周辺に紅班(赤い斑点)を生じます。紅班が拡大すると複数の紅班が融合し大きな紅班となります。爪の点状陥凹や爪の肥厚が高度に合併します。膿疱が1ヵ月程度で繰り返し発生し、慢性に経過します。手足以外の膝、頭部などに発生することもあります。胸鎖肋間骨化症を合併すると骨化した部位の痛みが発生します。
両手に生じた多数の膿疱
足底に生じた多数の膿疱
掌蹠膿疱症の病理
通常、掌蹠膿疱症の診断は皮疹の形、大きさ、性質、部位などで診断がつきます。難しい鑑別診断が必要な場合、病理検査が行われます。掌蹠膿疱症では表皮層に無菌性膿瘍が見られます。
掌蹠膿疱症の皮膚標本の顕微鏡写真。単房性の膿瘍が認められます
掌蹠膿疱症の治療法・薬・副作用
●原因のはっきりした掌蹠膿疱症に対しては根本的な治療を行います。■禁煙
長期間の喫煙が原因となっている場合、禁煙をすることで治癒が期待できます。
■慢性扁桃腺炎の治療
抗菌薬、扁桃腺切除などで扁桃腺炎が治癒できれば掌蹠膿疱症が治癒する可能性も高いです。
■アレルギー原因金属の除去
アレルギーが原因となっている金属がわかった場合、その金属を除去することで掌蹠膿疱症が治癒します。
●原因が不明である場合、皮膚科的な治療を行います。
■活性型ビタミンD3外用薬
• ボンアルファ(濃度0.0002%):1g112.2円。後発薬では1g 57.4円と安価です。副作用は頭痛、皮膚のヒリヒリ感、刺激感、発赤、肝障害、白血球増多、血清リン低下。
• ボンアルファハイ(濃度0.002%):1g272.3円。後発薬はありません。副作用は頭痛、皮膚のヒリヒリ感、刺激感、発赤、肝障害、白血球増多、血清リン低下。
• ドボネックス:1g134.4円。後発薬はありません。副作用は高カルシウム血症、急性腎不全、接触性皮膚炎、総痒。
■ステロイド外用薬
安価ですが、皮膚の副作用として皮膚萎縮、毛細血管拡張症、長期投与で全身の副作用として副腎機能低下などが見られることがあります。
●外用薬が無効であったり、全身に症状が強く出た場合、全身の療法に移行します。
■光線療法
PUVAと省略されますが、Pはソラレン(psoralen)という薬剤の内服、外用後にUVA(長波長紫外線 320-400nm)という光を照射することで治療を行います。副作用として、日焼け、白内障、皮膚癌の発生などがあります。
■ビオチンの内服、注射
ビタミンHの成分ですが、免疫機能を調整し効果を発現します。ビオチン散剤は1g11.7円と安価で、1日9-12g程度内服します。この薬はビタミンですので、副作用はないとされています。ビタミンC、パントテン酸、ミヤBM(酪酸菌製剤)を同時に服用します。
■ビタミンAの誘導体
エトレチナート(チガソン)を1日50mg服用します。1270円と高価です。後発薬はありません。副作用ですが、中毒性表皮壊死症、多形紅班、血管炎、口唇炎、口内乾燥、皮膚菲薄化、掻痒、脱毛、肝障害、胃腸障害、結膜炎、頭蓋内圧亢進といろいろあります。
■免疫抑制剤
リウマトレックス:1週間に6mgの服用で898.5円です。後発薬では459.6円と約半額になります。
副作用は、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー様症状、骨髄抑制、呼吸不全にいたるような肺炎(ニューモシスティス肺炎等を含む)、敗血症、サイトメガロウイルス感染症、帯状疱疹、劇症肝炎、肝不全、肝組織の壊死・肝組織の線維化、肝硬変等の重篤な肝障害(B型肝炎ウイルスによる肝障害またはC型肝炎ウイルスによる肝障害を含む)、急性腎不全、尿細管壊死、重症ネフロパチー、間質性肺炎、肺線維症、胸水、中毒性表皮壊死融解症(Toxic Epidermal Necrolysis: TEN)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens - Johnson症候群)、出血性腸炎、壊死性腸炎、膵炎、骨粗鬆症、脳症(白質脳症を含む)などがあります。
あまり重篤でない副作用として、発疹、そう痒、発熱、蕁麻疹、好酸球増多、出血、低ガンマグロブリン血症、リンパ節腫脹、肝機能障害(GPT上昇、GOT上昇、ALP上昇等)、LDH上昇、黄疸、脂肪肝、BUN上昇、血尿、クレアチニン上昇、蛋白尿、嘔気、腹痛、下痢、口内炎、食欲不振、嘔吐、舌炎、口唇腫脹、消化管潰瘍・消化管出血、メレナ、イレウス、脱毛、紅斑、皮下斑状出血、皮膚潰瘍、光線過敏症、皮膚色素沈着、皮膚色素脱出、ざ瘡、結節、頭痛、眩暈、意識障害、眠気、目のかすみ、しびれ感、味覚異常、項部緊張、背部痛、錯感覚、咳嗽、呼吸困難、無精子症、卵巣機能不全、月経不全、流産、倦怠感、動悸、胸部圧迫感、低蛋白血症、血清アルブミン減少、浮腫、膀胱炎、結膜炎、関節痛、耳下腺炎などです。
ただし掌蹠膿疱症に対しては健康保険の適応が認められていません。
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