癌(がん)/がんの基礎知識・ステージ・転移

がん発生の原因とメカニズム

【医師が解説】「がん」は、私たち誰にでも起こりうる病気です。検査による早期発見・早期治療が大切なのはよく知られていますが、そもそもがんはなぜ発生するのでしょうか。がん細胞が病気の「がん」になるまでの仕組みをわかりやすく解説します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

がん細胞はミスコピーの細胞

がん細胞は細胞分裂のミスコピー

がん細胞は、細胞が分裂するときに間違ってできたミスコピーの細胞と考えることができます

私たちの体は、60兆個もの細胞からできています。これだけたくさんの細胞が、新陳代謝で、定期的に入れ替わっていきます。ちょっと、汚い話で恐縮ですが、皮膚は定期的に入れ替わって、垢がでますよね。ふけも古くなった頭皮です。このような新陳代謝は、細胞がコピーされることによっておこりますが、これは、皮膚だけでなく、すべての細胞で起こっており、そのサイクルは、概ね90~120日程度だと言われています。

「5年ぶりに会う彼女は、まるで別人のようだった」というようなセリフが小説などではありますが、5年も経っていると、全身の細胞は完全に入れ変わっており、まさに、「生物学的には別人」と言えるでしょう。

それは、さておき。私たちの体の細胞は、毎日、あらゆるところで寿命を迎え、新しくコピーされた細胞と入れ替わっています。このコピーがうまく行かず、ミスコピーが起こるときがあります。60兆個もの細胞の一部から生まれるミス。これが実は、がん細胞のはじまりなのです。

<目次>  

がん細胞は毎日作られているが、リンパ球によって防がれている

私たちの体内でもがん細胞は作られる
人間の体内では、毎日がん細胞が作られているということは、意外に知られていないようです
ではこのミスコピーは、きわめてまれな現象なのでしょうか? 実はそうではありません。細胞のミスコピーは、毎日、私たちの体の中で、起こっているのです。大体1000~2000個のがん細胞が、日々私たちの体の中でできていると考えられています。

1000個とか、2000個のミスコピーと聞くとびっくりするのですが、全身には、60兆個の細胞がありますから、割合としては微々たるものです。国家予算に対する、財布の中の1000円札1枚だと思ってみて下さい。

とはいえ、私たちの体内ではがん細胞が、日々作られているのは事実です。なぜ、がんにならずに済んでいるのでしょうか。実際にがんとして発症するのは65歳以下では、10人に1人、74歳以下では、5人に1人です。これには、もちろん理由があります。それは、私たちの体の中にはシュレッダーの働きをするものがあるからです。それが、リンパ球とよばれる白血球の一種です。


次のページでは、いよいよ、がんが発生する仕組みをご説明します。
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