経営環境の激変する現在、システム開発にもスピードが要求されます。秀吉の墨俣一夜城造りを事例に短納期のシステム作りを学びましょう。
秀吉、墨俣築城を願い出る
秀吉 一夜で墨俣城を築く
「猿ではないか。なんの用だ?」
「殿、この猿、普請奉行や台所奉行は相務めさせていただきましたが、とんと侍らしい仕事はさせてもらっておりません。そこで、今度は城造りがしとうございます」
「城造り! 城造りとは、佐久間や柴田が失敗したあの墨俣のことか?」
「さすが、我が殿、よくお分かりで」
「馬鹿もの! あの柴田らが失敗した城造りを、お主ごときにできるものか!」
今川義元を桶狭間に破った後、織田信長の次なる目標は美濃の斎藤龍興。清州から小牧山城に拠点を移します。難攻不落といわれた稲葉山城を落とすには、交通の要衝である墨俣に城を築くことが戦略上、重要となります。
そこで佐久間信盛に城造りを命じますが、斎藤龍興の軍に攻められ敗退、次に柴田勝家に命じましたが、これも敗退というありさま。信長自身断念しようかと考えていた時に登場したのが、秀吉です。 さて、秀吉を叱りつけた信長ですが、普請奉行での見事な働きなどを思い出し、話を聞いてみることにしました。
秀吉 城造りプロジェクトの秘策
墨俣に城を造る
「我が殿、兵は不要でございます。ただ、少しばかりの金子(きんす)をお願いします。」
「なんじゃと! 兵はいらぬと!」
「はい、さようで、これから蜂須賀殿のところへまいり、協力を頼んできます。彼らなら、大工や頭領の扱いも慣れておりますゆえ。ただし、殿、成功したおりには、彼らを取り立てると確約してくだされ」
「うーむ、野武士をなあ」
いよいよ城造りプロジェクトの立ち上げです。 川に囲まれた墨俣の城造りでは、時間が鍵になるスピード勝負です。佐久間や柴田という歴戦のプロジェクトマネージャが失敗したのは、時間がかかる城造りの最中に美濃勢に攻められ、後ろが川で引くに引けず、蹂躙されてしまったからです。
CSF(主要成功要因)を決めてアウトソーシングを活用
墨俣に城を造るには大工などの専門技術者が必要
次はCSFを実現するための方策です。 まず考えたのが、技術者の活用。戦国時代の城造りですので、天守閣などはなく、塀や柵、楼などが中心になりますが、やはり大工などの専門技術者が必要です。
彼らを統率しながら攻撃を防げるような人材は、残念ながら、まだまだ中小企業である織田株式会社にはいません。そこでアウトソーシングすることにしました。つまり野武士の活用です。
経営資源が不足する中小企業の場合、人材などを外部に求めることが必要になります。 特にIT導入においては、ITベンダーへのアウトソーシングがかかせません。 ドッグイヤ、マウスイヤと呼ばれるIT業界のため、自社に情報システム部を持つ場合は、技術者に絶え間ない教育を続け、最先端の技術にキャッチアップしない限り、技術が陳腐化してしまいます。
アウトソーシングの注意点
自社に情報システム部がなければ、アウトソーシングを活用するしかありません。ただ注意点が2つあります。(1)プロジェクトの目的に合致するソリューションを提供できるITベンダーをアウトソーシング先に選ぶ。
ITベンダーには得意分野があります。前回のシステム導入で実績のあるITベンダーでも、今回は得意分野でなく失敗するかもしれません。
(2)プロジェクトの責任はプロジェクトマネージャにある。
技術が分からないということでITベンダーまかせの会社も多いですが、これでは他力本願で失敗してしまいます。 システム作りをITベンダーにアウトシーシングするにしても、プロジェクトを監督して成功させるのはプロジェクトマネージャーのミッション(使命)です。
では、秀吉のプロジェクトの様子をみてみましょう。