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介護福祉士取得条件が厳しくなる

2006年7月3日の「介護福祉士のあり方及びその養成プロセスの見直し等に関する検討会」において、介護福祉士の資格取得条件を厳しくする案が示されました。その内容を紹介します。

執筆者:宮下 公美子

2006年7月3日に開かれた「介護福祉士のあり方及びその養成プロセスの見直し等に関する検討会」において、介護福祉士の資格取得について、介護職のレベル向上のためにハードルを高くしていくという案が示されました。

現在、介護福祉士の資格は、養成施設に1~2年(条件により期間が異なります)通学し、所定の単位を修めて卒業することで取得できるほか、福祉系高校を卒業後、国家試験を受験し合格する、あるいは3年以上の実務経験を積み、国家試験を受験し合格することで取得できます。しかしこれが大きく改定される案が検討されています。

※平成18(2006)年12月に、厚生労働省の社会保障審議会福祉部会の「介護福祉士制度及び社会福祉士制度のあり方に関する意見」が発表になり、この記事を書いた時点より詳細の案が示されました。そのため、平成19(2007)年1月18日に記事を一部加筆してあります。

養成施設卒業後に試験を実施

これまでのように、養成施設卒業=介護福祉士資格取得ではなく、卒業後に国家試験受験を課されることになることがほぼ決まりました。養成施設の履修時間についても現在の1650時間から1800時間程度に増えます。

以前から、卒業後に試験が必要ではないかという声はありましたが、ついに来たかという感じですね。看護師も社会福祉士や精神保健福祉士、理学療法士なども、みな養成施設を卒業後に国家試験を受ける仕組みになっていますから、これは自然な流れと言うこともできます。

介護福祉士の資格取得を考えている方は、試験なしで資格取得できる間に卒業できるよう、あるいは、後述しますが養成講座に通わずに3年の実務経験だけで受験できるように、できるだけ早く行動に移した方がいいと思います。新制度がスタートすると、最初はごたごたして、受験生が何かしら迷惑を被ることになりがちですしね。

ただ、新しいシステムになると、養成施設卒業者は実技試験も介護技術講習会も受ける必要がなくなります。在学中にみっちりと介護実習をやってきているのですから、これも当然のことと言えるでしょう。

履修内容も大幅に見直し

時間数拡充とともに、養成施設での履修内容も、抜本的に見直されます。
これまでは、基礎科目120時間、社会福祉概論、老人福祉論、リハビリテーション論、介護技術などの講義と、介護実習450時間を併せた専門分野1530時間の計1650時間でした。

それが、詳細は決まっていませんが、大きく分けると、「人間と社会」「こころとからだのしくみ」「介護」の3分野、1800時間になります。

「人間と社会」は現行の「基礎科目」に当たります。
この「人間と社会」では、介護を実践するものとしての総合的な判断力、豊かな人間性を身につけていくため、現行の120時間より大幅に拡充される予定。介護における尊厳の保持や個別ケア、他職種との協働のために、高いコミュニケーション技術を身につけます。また、説明責任や根拠に基づく介護が実践できるように、わかりやすい説明、記録を重視。IT導入を勧めていくために情報処理に関する学習も取り入れられます。

さらには、介護保険法、障害者自立支援法を中心に、介護実践のために必要な知識として社会保障制度の仕組みについての理解も深めます。同時に、利用者の権利擁護のために個人情報の保護や消費者保護のついての視点も含めるとされています。社会福祉士ほどではないにせよ、ソーシャルワーク的な知識と技術を深めるカリキュラムになるようです。

これらの教育内容について、現行の「基礎科目」は養成施設任せの内容でした。しかし、新しい教育体制では、基本となる教育内容がシラバスとして示されるようです。

「こころとからだのしくみ」は、介護の基礎の部分に当たります。
医学、看護、リハビリテーション、心理などの分野についてのカリキュラムが組まれます。予防からリハビリテーション、看取りまで、地域社会で暮らし続ける利用者のさまざまな要望に応えていくため、他職種協働のチームアプローチが可能な教育内容になるようです。

また、これまでの介護現場では食事、入浴、排泄などの身体介護が重視されがちでしたが、認知症や知的・精神・発達障害などの分野に対応できるよう、心理的社会的なケアも重視することになりそうです。

「介護」のうちの「介護技術」については、介護予防からリハビリテーション、看取りまでを一貫して理解できる内容になります。また、これまで欠けていた自立支援の視点を入れ、若年の障害者の就労支援などについての理解も深めます。

また、今後は小規模多機能拠点が増えていくことが考えられることから、少人数の拠点でもさまざまな介護ニーズに対応できるよう、一人一人の介護技術の幅を広げる教育が施されます。利用者だけを見るのではなく、家族など、利用者を取り巻く人に対する精神的支援や援助のためのコミュニケーション技術も身につく内容とされるようです。

最後に「介護実習」ですが、実習の充実を図るため、施設での受け入れ人数の上限5人を撤廃。その代わり、施設は実習生5人に付き一人の実習指導者をおくこととなります。実習施設の望ましい基準として、「一定割合以上の介護福祉士がいること」「介護基準、介護手順が作成され、活用されていること」「介護に関する諸記録が適正に行われていること」「介護職員に対する施設内研修が計画的に実施されていること」があげられています。

実習先には、2006年度から規定された「小規模多機能拠点」が加えられ、在宅も重視し、施設に偏らない実習を目指すようです。

履修内容のバージョンアップ、内容の拡充に比べて、実習については達成目標などがほとんど示されていません。実習先の施設についても、あまり条件をつけると受け入れ先がなくなることを考えてか、少しゆるいのではないかと検討会の委員からも指摘がありました。

>>次は「実務経験者も養成講座受講へ」「早ければ2009年度から実施!?」
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