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消費税が20%に?! ヨーロッパに学ぶもの(2ページ目)

日本の借金はついに800兆円を超えてしまったという試算がでました。借金返済のために、消費税の増税は必ずあるでしょう。でも上げるにしても、ヨーロッパのように生活品の税率は低く抑えておく方法もあるのです。

執筆者:鳥羽 賢

ヨーロッパではどこも高い消費税

ここでちょっとヨーロッパ諸国に目を向けてみましょう。もともと日本の消費税は、ヨーロッパにある税金をモデルにして導入されたものでした。ヨーロッパの消費税は「付加価値税」または「VAT(Value Added Tax)」と呼ばれています。基本的な仕組みは日本の消費税と同じで、買い物をすると小売価格に一定の率をかけた税金が取られるというものです。

さてこの付加価値税ですが、ヨーロッパ諸国ではどこもとても高い税率になっています。一例を挙げますと、付加価値税発祥の国であるフランスは19.6%、ドイツは16%、イタリアは20%などです。さらに福祉先進国のスウェーデンでは、なんと25%もの付加価値税がかかるのです。

これだけ高いとさぞかし庶民の生活は苦しいのだろうと思ってしまうでしょうが、実際はそうでもありません。というのも、付加価値税の基本税率は高くても、生活必需品の税率は低く抑えられているからです。こういった点は、日本もこれから学んでいくべき点かもしれません。

生活必需品は安い付加価値税

イギリスの軽減税率一覧表
イギリスの軽減税率表
イギリスでは3段階の軽減税率が適用される
ではイギリスの例を見てみましょう。イギリスの付加価値税の標準税率は、17.5%です。つまり、一般的に物を買ったら17.5%の間接税がかかることになっているのです。ですが、生活必需品になると軽減税率が適用され、17.5%も払わなくていいのです。その軽減税率は3段階もあり、必要度が高い物ほど税率が低くなっています。

生活に最も必要な食料品や、新聞・雑誌、電車・バスなどの交通費は、ゼロ税率といって付加価値税は全くかからなくなっています。これによって、庶民の生活の中ではあまり負担感が大きくならないようになっているのです。

それから医療、教育、郵便などは非課税です。これも付加価値税がかからないという意味なのですが、ゼロ税率とはどう違うのでしょうか?それは小売業者の仕入れ額に対する控除の違いになります。これらの違いについては一般の消費者はあまり関係ないので、深く考えなくてもよいでしょう。

そして家庭用燃料や電気代は、5%の軽減税率が適用されています。以上のように、イギリスの付加価値税率は17.5%であるのですが、庶民の生活にはあまり負担がかからないようになっています。

「海外がそうだから」に惑わされてはいけない

このような生活必需品に対する軽減税率を導入すれば、たとえ消費税が10%、20%になっても、庶民の生活はそれほど苦しくはならないのです。しかし、政府関係者の中には、ヨーロッパ式の軽減税率制度を導入したがらない者もいます。その理由としては、結局軽減税率を導入すると、たとえ基本税率を上げても税収はあまり増えないからです。結局、政府としては税金による収入をなるべく上げたいのです。

「軽減税率付きで消費税を上げるくらいなら、最初から贅沢品だけに課税した方がいい」という人もいます。それは1つの意見でしょう。ただ一般の消費者が覚えておいた方がいいのは、ヨーロッパでは付加価値税率が高くても、ちゃんと市民生活に負担がかからないような工夫がされているということです。「海外では高いから日本も消費税を上げるべき」という言葉だけに惑わされず、生活が苦しくならないような増税を政府に望むようにしましょう。

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