歌舞伎/歌舞伎関連情報

花魁はなぜ心変わりを?『籠釣瓶』 その2

惚れる男、恥をかかされる男、恥をかかせた女、殺される女・・・この一つの事件を描いた演目の現代性にも驚いた。また、歌舞伎の女形の役の中でも大役中の大役、吉原の傾城・八ツ橋に注目。

執筆者:五十川 晶子

八ツ橋はどんな女なのか。なぜ殺されたのか



みどころ
吉原の話だし、妖刀なんて出てくるし、江戸時代の作品なんだろうなと思っていると、これが初演は明治中ごろ。そのせいなのか、話は非常にわかりやすい。

吉原で遊ぶには、あばた面で田舎者といういかにもモテそうもない男・佐野次郎左衛門。花の吉原仲の町の目もくらむような花魁道中を目撃してしまった。
「ああ、宿へ行くのが、いやになった」

と、文字通り目がくらみ、へなへなと腰を抜かしそうになってしまう。それだけ花魁・八ツ橋がすさまじく美しいのだ。

花道から若い衆に傘を差し掛けられ、禿や番頭、新造そして他の傾城ら大勢を引き連れて、ゆったりと八文字型に足を交互に出して歩む。八ツ橋初め、傾城たちの打ち掛けが豪華絢爛だ。花道の七三で立ち止まり、次郎左衛門とも、誰ともつかず微笑む。この一瞬で、次郎左衛門は恋に落ちた。この花魁道中をじっくり楽しむためにも、この演目がかかったら、一階の座席を奮発することをおすすめする。衣裳の衣擦れの音が心地よいはずだ。
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