一挙上演。昭和を代表する歌舞伎戯曲『元禄忠臣蔵』
2006年10月、11月、12月の3ヶ月間、開場40周年を記念して、東京三宅坂の国立劇場では『元禄忠臣蔵』全篇を通しで上演する。「演劇史上初の試み」(国立劇場)となる珍しい企画だ。
歌舞伎で「忠臣蔵」といえば、あの『仮名手本忠臣蔵』を思い起こす人は多いだろう。人形浄瑠璃の原作を基にした義太夫狂言の人気演目の一つだ。
その後いわゆる赤穂浪士事件を題材とした作品は数多いが、中でも全10篇40場という壮大な歴史劇にしたてられた大作が、真山青果作『元禄忠臣蔵』。綿密な考証を基に歴史劇を発表していた真山青果の代表作としても知られる。
また、この3月に亡くなった真山青果の娘である真山美保は、国立劇場で真山作品がかかる月には演出に携わることが多かったが、この作品が通しで上演されることをずっと楽しみにしていたという。
『仮名手本忠臣蔵』が、赤穂浪士の事件をあえてフィクションにしたてて、お芝居の面白さが満喫できる”お芝居”だとしたら、『元禄忠臣蔵』は、その事件性、歴史性を真っ向から描いた近代的なドラマといえるかもしれない。
初演は昭和9年。青果が最初に書き始めたという終盤の『大石最後の一日』の幕で内蔵助を勤めたのが、近代歌舞伎の名優として知られる二代目市川左團次だった。
今回の通し上演は、大石内蔵助を勤める役者が毎月替わるというぜいたくな試みだ。10月は中村吉右衛門、11月は坂田藤十郎、12月は松本幸四郎と、現代の歌舞伎界を代表する大立者が揃う。
大石内蔵助を勤める三人。 |