ガイド土橋:
そうしたスケッチを描く時は、描きながら考えるタイプですか、それとも始めにしっかりと考えてからですか?
井上さん:
どちらかと言えばはじめに頭の中でじっくりと考えて、その上でペンを握ります。
場合によっては、ペンで描かずにその頭の中に出来上がったイメージをスタッフに口頭で伝えて任せるということもあります。
ガイド土橋:
イメージを言葉で伝えるとは、難しそうですね。しかもそれを受けとめられるスタッフの方も、すごい受け取り能力ですね。
さて、ノート以外にメモパッドなどは使っていますか?
井上さん:
メモパッドという形ではありませんが、このコンパクトな手帳を使っています。
これもミケリウスのもので名前が「ブラックリスト」というユニークなネーミングも気に入っています。
これを外出の際に持ち歩いて打ち合わせなどに使っています。この手帳には、特に気に入っているラミーのステュディオのボールペンとあわせて使うことが多いです。このペンのデザインがとても気に入っているんです。
外出時に必ず持って行くミケリウスのブラックリスト」ノート、背表紙に「black list」と書いてある。そしてラミー ステュディオのボールペン。 |
井上さんの仕事机。幅180センチ、奥行き90センチというかなり大きめな机。ご本人いわくゴチャゴチャといろんなものを置いていまして、と言いますが、実にすっきりとした印象。たしかにものはそれなりに多いがゴチャゴチャ感はあまり感じられなかった。きっと、それは色をブラック系に統一しているためだろう。 |
だいたい10くらいのプロジェクトが同時進行で動いているという。意外にもその管理法はクリアホルダーに入れておくというシンプルなものだった。 |
井上さんのオススメガジェット
ブルートゥース搭載のテンキーボード。マイクロソフト製だが、Macにも対応とのこと。右にあるのもコードがないマウス。マウスの左下からUSB が飛び出してきてそれを PC につないで使う。 |
薬のカプセルのようなこれは、キーボードのホコリとり用のブラシ。ユニークなデザインだ。 |
金ならぬ銀の延べ棒は、携帯用ハードディスク。遊び感覚たっぷり。 |
これはキーボードを打つときの腕枕。ちなみにテンピュール製。 |
ガイド土橋:
では、最後の質問を。
井上さんにとって文具とは?
井上さん:
「楽しみ」です。
例えば、ある時は「持つ楽しみ」であったり、「使う楽しみ」など、文具はいろいろな場面で私たちに楽しみや満足感を与えてくれます。この満足感はとても大事なことだと考えています。自分に合った文具を使うと何だかいいものが描けそうな気がしてきます。文具にはそんな力があると私は思っています。今やデザインの作業といえば、そのほとんどがパソコンでという流れになっていますが、やはりデザインの最初の段階は、私はペンと紙を使って書くようにしています。今後も、このスタイルは、変わらないと思います。
すっきりと整理されたワークスペース。 |
ガイド:
本日はありがとうございました。
取材後記
アートディレクターというデザインの最前線で活躍しておられる井上さん。井上さんにとっては、デザインを制作しているときだけでなく、日常のすべてのことがデザインなのだということを強く感じました。
それは例えば、ペン選び一つにしてもそうです。書く紙の紙面レイアウトに応じて0.1mm単位でペンの字幅を変えるというこだわり。書けばいい、書ければいいということではなく、書いたものがしっかりと目的を持って存在する、ある時は目立ち、またある時は自分のひらめきを具現化する、といったそれぞれの目的にかなうものを選んでいるのが印象的でした。
そして、私自身考えさせられたのが「書く」ということについて。「書いたものはほとんど見返さない」というのは衝撃的でした。
書くという作業をすごく集中して行っているので、その時点で、同時に頭の中に焼きついているのでしょう。
とりあえず書くのではなくしっかりと頭に刻み込ませるために書くということをもっと意識しなければと思いました。
<関連リンク>
ORYELサイト(井上さんの作品がご覧になれます。)
ラミー ステュディオ記事
<「隣の文具活用術」バックナンバー>
「隣の文具活用術」朝4時起き編
「隣の文具活用術」結果を出す人のノート編
「隣の文具活用術」カメラマン編
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