新型インフルエンザ予防接種は、お母さんが打つと赤ちゃんにも抗体をあげられます。 |
この記事は、予防接種の優先権獲得に尽力された斎藤滋先生(富山大学医学部産科婦人科学教室教授)にお話をうかがってお届けします。
予防接種がなければ、今年は20~30万人の妊婦さんが新型インフルエンザに感染するでしょう
斎藤先生によれば、新しいタイプのインフルエンザが出ると人口の20~30%が発病するそうです。これを妊婦さんに当てはめると、もし予防接種がなければ今年は20~30万人という大変な数の妊婦さんが新型インフルエンザにかかります。そして、妊娠中のインフルエンザは重症化しやすいと言われています。なぜ妊娠中はインフルエンザが重症化しやすいの?
斎藤先生は、重症化しやすい理由はおもに2つだと言います。「ひとつは妊娠中は免疫機能が落ちることです。赤ちゃんとは半分は自分ですが、半分は夫という他者。そして免疫とは自分ではないものを攻撃し、排除する仕組みですから、妊婦さんは赤ちゃんを受け入れるために免疫の力を弱めるんですよ」
妊婦さんはふだんの半分しか免疫が働いていない
私たちの身体には「ナチュラルキラー細胞(NK細胞)」というものがあって外部から進入するウイルス、がん細胞などを退治しているのですが、妊娠中はその機能が3分の2から半分くらいになってしまうそうです。肺が押し上げられているので、肺炎も心配
「重症化しやすいすもうひとつの理由は、妊婦さんは心臓や肺が病気で弱っている人と似た状況になっているのです。妊娠中は血液循環量が普段の1.5倍になり、心臓に負担がかかります。また大きい子宮が横隔膜を押し上げ、肺も圧迫します。小さくなってしまった肺は、少しダメージを受けただけですぐに大きな影響が出てしまうのです。そこへ来て今回の新型インフルエンザは、肺炎になりやすいタイプだと言われています。」(斎藤先生)免疫機能の低下は妊娠してすぐに起き、心臓や肺への負担は妊娠週数が進むにつれて出てくる変化です。