ネットオークションで出品者の「やっぱり返して」について
日本では、オークションに対する一般的な規制はなく、インターネットオークションについても一般的な規制はありません。従って、契約自由の原則のもと、消費者保護などの強行法規の適用が問題となる場合でない限り、利用規約が存在すればそれに従うことになります。
隔地者間の契約
規約に規定のない事項は、商行為であれば商法、そうでなければ民法が適用されます。対話者間のように申込と承諾がその場でなされるのではない場合を隔地者間の契約といい、インターネットオークションにおける売り手・買い手間の売買は、隔地者間の契約にあたるといえます。
隔地者間の契約は、承諾の通知を発したときに成立する(民法526条1項・発信主義)と規定されています。(もともと、民法が予定している隔地者間の契約は、時代的に手紙によるやりとりを想定していると思われ、現在のようにファックスやコンピューターを用いたやりとりが主流となっている時代では妥当性に欠けるところがありますが、本件を検討する上では支障はないでしょう)。
オークションでの契約行為とは
オークションは、通常、契約しようとする相手に競争させて最も有利な条件を申し出た者と契約を締結する方法であり、出品者がいくらで買うかと申し出る行為は、「申込の誘引」に過ぎません。そして、○○円で買うという行為が「申込」、出品者が最高額の申し出に応じる行為が「承諾」になります。
契約は、申込と承諾により成立し、その時期は、上記の隔地者間の契約の規定によることになります。承諾の撤回は、その効力が発生していない場合には認められますが、発信主義のもとでは発信した以上効力が発生していますので、撤回はできません。
商品を売る旨の意思表示で契約は成立します
そうすると、出品者が落札者にその金額で商品を売る旨の意思表示が発信されれば、契約は成立しますので、本件のように返却を求めるというのであれば、すでに品物が送られたあとであると考えられ、その時点では当然に契約は成立していますから、承諾の撤回は認められないと解釈することになるでしょう。
よって、「やっぱり返して」は認められないという結論になると考えます。
弁護士 柳原桑子 プロフィール
・第2東京弁護士会所属 |