多くの人の悩みに寄り添い、言葉を届けてきた彼女自身は、迷いや悩みに直面したとき、どのように「占い」と向き合っているのでしょうか?
自分らしい人生を歩むために、「占い」はどんなふうに力を貸してくれるのか。そのヒントを阿雅佐さんに伺いました。
選択に迷ったときの決め方
――どうしたらいいか分からない問いに出会ったとき、占いを活用する人も多いと思います。阿雅佐さん自身は、選択に迷ったらどうやって決めていますか?阿雅佐さん(以下、阿雅佐):「迷い」には2つの種類があると思っています。1つは、本当に「どうでもいい」迷い。例えば「今日カフェに行くかどうか」といった、どちらに転んでも困らないような悩みです。
こういう場合はタロットを1枚引き、「このカードが出たなら、今日は家で過ごそう」などと判断するようにしています。
一方、もっと重要な問題の場合は、より問題を掘り下げられるよう複数のカードを使ってスプレッド(注:タロットを特定の位置に並べて占う方法)を展開します。すると、悩みの背景にある要因や自分の本心、ポジティブ・ネガティブ両方の側面などが浮かび上がります。
そうして問題をひも解いていくことで、「なるほど。今はこういう状況で、こう考えているから、この悩みが生まれているのか」と腑に落ちるのです。ここまで掘り下げると、次に選ぶべき選択が自然と絞り込まれていることが多いですね。
――「迷いの種類」で使い分けているんですね。一歩進んでみた結果、後悔することもありますか?
阿雅佐:もちろんあります。でも大事なのは「その後どうするか」です。正直、人生はうまくいかないことのほうが圧倒的に多いもの。失敗も織り込み済みで、「こうなっちゃったか」と受け止めることが多いです。
その上で、「なんで自分はダメなんだ」と落ち込むのではなく、「なぜこうなったのか」を占いで読み解きます。「今日の星の配置ならこの人の影響力が強いから、この結果も納得できる」などと理解できれば、次の前向きな行動につながります。
感情が大きく沈んでしまったときは、もっと大きな視点で考えてみることもあります。例えば「宇宙」や「素粒子」といった壮大なスケールで捉えてみると、「自分の悩みなんてバグみたいなもの」と少し冷静になれます。この方法がハマらない人もいるのですが、私の場合は役に立っています。
占いを通して、自分や他者への理解がグッと深まる
――「悩み」からいったん離れてみることも大切なんですね。阿雅佐:そうですね。特に30~50代になると立場やしがらみにとらわれて、自分一人の努力ではどうにもならないことが増えてきます。そういうときこそ、視点を切り替える方法を持っておくことが大切です。
私の場合は「推し活」。歌舞伎を見に行く、アニメを見るなど、好きなことにエネルギーを注ぐと、容量いっぱいだったつらい気持ちが少しずつ減り、ポジティブな気持ちが増えていきます。
12星座によっても、悩みの対処法は異なります。例えば「風の星座」(ふたご座・てんびん座・みずがめ座)の人は「自己分析」で自分を客観視することが重要です。一方、「水の星座」(かに座、さそり座、うお座)の人は、自己分析よりも「感情の処理」のほうが大事だったりします。
自分をうまくコントロールする術を身に付ける上でも、占星術は役に立ちますよ。
――人付き合いを円滑に進めるために、意識していることはありますか?
阿雅佐:人間同士なので、「合う・合わない」は当然あると思います。その中で大切なのは「距離を保つこと」です。あまりにも距離が近すぎると、依存関係になったり、相手のささいな言動に過敏になったりしがちです。
相手が家族でも他人でも、「こういう人もいる」「こういう考え方もある」と少し距離を置くことが大事だと思います。よかれと思って言ったことでも、考え方が違えばこじれることもあります。価値観は人によって違うので、真正面からぶつかるより、距離を保つほうが建設的です。
親子関係だと、なおのこと距離感のさじ加減が難しいですよね。友人や職場の人よりも感情が絡みやすく、期待してしまう部分もあります。年齢を重ねることで親や子どもとの関係を客観視できることも多いですが、いずれにしても「相手は自分とは違う存在である」ことを認めることが大前提だと思います。
「当たること」がすべてではない。寄り添いの大切さ
――占い師として、人の相談に乗ることも多いと思います。悩みを聞くときに心掛けていることはありますか?阿雅佐:まずは「共感」を大切にしています。相談に来られた方の悩みをしっかり受け止め、「そうですよね」と寄り添うこと。それが、信頼関係を築く第一歩だと考えています。
占い結果だけを伝えて「こうしたほうがいい」と言っても、なかなか心には届きません。その人の背景や、問題が生まれた理由、感じ方の癖、相談に至るまでの経緯などを丁寧に探っていくことが大切です。占いは単なるアドバイスではなく、一緒に悩みを解きほぐす「プロセス」だと思っています。
天気に「晴れ」や「雨」があるように、運気にも波があります。例えば「今は雨の時期だから気持ちが沈みやすいんですよ」とお伝えすると、納得されることが多いですね。そして「いつ頃晴れるか」も一緒に伝えるようにしています。
また、親御さんから「子どもがなぜこういう行動をするのか」といった相談を受けることもあります。そんなときは、親子それぞれのホロスコープ(個人を占うための天体の配置図)を作成して、「お母さんはこういう傾向があって、お子さんはこう」と説明すると、互いの違いを客観的に理解できるようになります。
頭では「別の人間」と分かっていても、感情が先立つと見えなくなることもあります。そういうときに違った視点をもたらし、背中を押すのも占いの役割だと思っています。
――「占い」は今も昔も人気コンテンツですが、どのように付き合うのがいいと思いますか?
阿雅佐:占いとの付き合い方に、正解はないと思っています。例えば会社に向かう前に占い記事を見て、「今日は大事な会議があるから、ラッキーカラーの赤を身に着けよう」でも十分です。その結果、1日を気持ちよく過ごせるなら、とてもすてきなことだと思います。
もう少し興味を深めたいときは、ホロスコープを出してみるのもおすすめ。自分自身や家族、友人のホロスコープを眺めながら、「この人にはこういう性質があるんだな」と客観視するきっかけになります。
自分の気分を高めるために使うのもよし、自己や他者理解を深めるために使うのもよし。自分が心地よいと思える使い方を選べれば、それが一番いい付き合い方だと思います。
【お話を聞いた人:阿雅佐】
西洋占星術師/フォーチュンナビゲーター。テレビ、雑誌・書籍、Web、アニメ・ゲーム、メディアイベント、CMなど1万以上の占い&心理テストを作成。西洋占星術、四柱推命、夢占い、タロットカードなど、古今東西の占いに精通する。今までに鑑定した人数はのべ1万人以上。『ちいかわタロット 22枚のオリジナルカード付き』(講談社)など、著書約40冊。一部海外でも翻訳出版されている。
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【取材/文:奥山 はるか】
編集者・ライター。出版社で女性誌編集者として勤務したのち、フリーランスとして独立。女性向けのジャンルを中心に多数の記事を手掛け、占いや開運をテーマにした雑誌制作にも長年携わる。分かりやすい切り口で、幸運のヒントになる記事を執筆。