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筆記時のガタつきだけじゃない!デザイン、重心もブレない、ゼブラの新作ペン「ブレン4+S」の開発秘話

ゼブラの「ブレン」は、筆記時のペン先のガタつきを軽減したベストセラー。そのコンセプトのまま、4色ボールペン+シャープペンシルのオールインワン筆記具「ゼブラ4+S」が登場しました。その書き心地の良さの秘密をゼブラの開発スタッフに聞きました。

納富 廉邦

執筆者:納富 廉邦

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ブレン商品写真

ゼブラ「ブレン4+S」1100円(税込)。軸色は写真のボール径0.7mmが左から黒、ブルーグレー、ミントグリーン、シェルピンク、白、ボール径0.5mmは黒、パウダーブルー、ココアブラウン、グレージュ、白。インクはエマルジョンインク(油中水滴型)、インク色は黒、赤、青、緑。シャープペンシルは0.5mm

ゼブラの「ブレン」が発売されたのは2018年12月。当時、まだあまり一般的に意識されることのなかった、ノック式ボールペンのペン先を筆記時にブレにくくする機構や、デザインオフィスnendoによる、独特な軸のデザインなど、注目度の高い要素を持ちながら、一般的な用途で使われる低粘度油性ボールペンのメイン価格帯で発売されたこともあって、発売当初から大ヒットとなりました。

今では、三菱鉛筆の「ジェットストリーム」や、パイロットの「アクロボール」などと並ぶ、普段使いのボールペンの代表的なブランドになっています。
ブレン定番品8色

ゼブラ「ブレン」165円(税込)。現在の定番商品は、この9色

「どうしても、『筆記時のブレを抑えるペン』というイメージが先行しているブレンですが、元々、そういうアイデアがあったとか、そういうお客様の声があったというわけではなくて、本当に新しいボールペンを作ろうというのが、プロジェクトの最初だったんです」と、ゼブラのプロダクト&マーケティング本部の瀬川美帆さん。

新しいボールペンを考えるにあたって、自社他社問わずたくさんのボールペンを書き比べていた中で、市販のボールペンの筆記時のガタつきが気になってきたのだそうです。

そこで、手作りで先端を固定したモデルを作って、さらにノック部分あたりもテープで押さえて、といったことを試すと、確かに書き味が変わることを確認。そこから、ガタつきを抑える機構が出来上がっていきました。
 

ストレスフリーの書き心地は、筆記時のガタつきを抑えるだけでは実現できない

ブレンファインドメカニズム写真

ゼブラ「ブレン ファインドメカニズム」は、ブレンの仕組みが分かる透明軸の限定モデル。2023年2月に販売された。一般的なボールペンに比べて内部パーツが多いのが確認できる

「元々、新しいボールペンの価値を提供する製品として開発していて、その中で、ブレないことを含め、“ストレスフリーな書き心地”というコンセプトが生まれました。なので、握りやすさや重心位置、デザインも含めて『ブレン』なんです。

“ストレスフリーな書き心地”というコンセプトから新しいペンを作るにあたって、見た目やブランドの印象も全く新しいものとして定着させたいという意図もあり、nendoさんとのコラボや、軸の色なども、一般的な事務用とは違うことが見た目からも分かるものにしたいという考えがありました。ブランドとして、ラインアップ全体の統一感も出せるようにと考えています」と瀬川さん。

現在のボールペンの軸色は、その多くがペールトーンや白軸などが主流ですが、ブレンはかなり早くから、そういった色やクリップの位置などを採用していました。ノック音の軽減、低重心なども含め、最初から、まるで現在のスタンダードを先取りしたようなペンだったのです。

面白いのは、それらが、未来を先取りしようとしたからではなく、「ストレスフリーな書き心地」というコンセプトの実現から生まれたということです。
 

4色ボールペン+シャープペンシルの「ブレン4+S」登場

軸の肉厚の薄さ

このように、従来の多機能ペンに比べて、「ブレン4+S」(右)の軸の肉厚が薄いことが分かる。ノックボタン周辺は、これよりさらに薄くなっている

2024年2月に発売された「ブレン4+S」も、そのコンセプトは変わらず「ストレスフリーな書き味」です。単色のペンには単色なりの、3色ボールペンには3色ペンなりの「ストレスフリー」があるように、4色+シャープペンシルという多機能ペンにも、それ相当の「ストレスフリー」があります。

「ブレンのシームレスな見た目は踏襲しつつ利便性を向上するにあたって、多機能ペンでもとにかくできるだけ細くしたいというのはありました。ただ、ブレンの多機能ペンである以上、ブレンの独特なシルエットは守りたいわけです。つまり、ノックボタンとクリップ部分が一体化していて、他社のノックボタンが独立したものに比べて頭が大きいシルエットを守った上で、細く見せるというのは、かなり難しい課題でした」とデザインを担当したゼブラの研究本部開発部の山本佳那さん。

これはつまり、軸の中に細い部分を作るのは難しいということです。そこで、クリップの取り付け方、ノックボタンのサイズ、ガタつきを軽減するためのパーツやリフィルの配置、ノックによってそれぞれのリフィルが干渉しないスムーズな芯の出し入れの実現など、設計やデザインのスタッフと試行錯誤を重ねる必要があったと言います。
 

課題は、軸を細くしながら、多くのパーツを軸に収めること

円から楕円へとシームレスに変化する軸

このように、グリップ部分は円形だが、上部にいくに従って軸は楕円になっていくのが「ブレン」のデザインの特徴。多機能ペンでも、この特徴を守るため、ノックボタン部分は軸の厚さがさらに薄く、そこに多くのパーツが組み込まれた構造になっている

「まず、多くのパーツを収めるためにはある程度必要な太さがあるので、とにかく軸の肉厚をいかに薄くするかというのが、スリムに作るための一番のポイントでした。

実際に見てもらうと分かると思いますが、軸の厚みはかなり薄くなっています。外から見ると分かりにくいのですが、ブレンの軸の特徴の1つとして、尻軸に行くにしたがってだんだん円から楕円になっていくんです。

しかも、楕円になった部分はパーツも多いので、軸の厚みが極端に薄くなっているんです。この極限のところをどこに持っていくかというのは、デザインと設計でよく話し合って作りました」と、開発を担当したゼブラの研究本部開発部の細木真百合さん。

設計の細木さんと、デザインを担当している山本さんは、日ごろから一緒に業務に取り組んではいるものの、今回は、より一層連携を強めて、ほとんど一緒に作業を進めていったのだそう。

中に全部のパーツが収まるか、どのくらい肉厚を薄くできるか、消しゴムは入れられるか、リフィルはお互い干渉せずに動くか、ノックボタンの長さや大きさはなどなど、とにかく試作を繰り返して、実際に入るか、動くか、といったことは、設計とデザインをそろえて作っていく必要があります。
消しゴムキャップ部分のパーツ

消しゴムのキャップになっている、天冠部分のパーツの内部は、このようにかなり複雑な形状になっている。これがパチッとハマる設計と工作精度がすごい

実際、使ってみると分かりますが、この設計だからこういうデザインになっている、このデザインはこの設計の上で実現しているという部分があちこちに見られます。

分かりやすいのは、天冠の消しゴムのキャップ部分でしょう。外して中を見ると、楕円の中に円形のキャップが組み込まれている上に、ノックボタンが上にはみ出している分の切れ込みが入っているのも分かります。
 

「ブレン」のブランドを崩さずにオールインワンの筆記具を実現

バインダークリップ

シャープペンシルのノックボタンにもなっていて、天冠部と一体感を感じさせるデザインになっているクリップが、バインダークリップになっているという凝った設計も、このペンの魅力だ

「やはり、『ブレン4+S』という製品は、オールインワンで完結する筆記具でありたいということもあり、消しゴムは必須だと考えていました。また、シャープペンシルのノック部分でもあるクリップを、同時にバインダークリップにしたいというのも、オールインワンでありたいという考えから実現しました」と瀬川さん。

「このバインダークリップをノックボタンとシームレスに見えるように一体化させるのも、かなり難しかったんです」と山本さんと細木さんは口をそろえます。

隙間やバネ、穴などの、内部的な部分を全く見せないというのも、「ブレン」というブランドの重要な部分です。それを、4色+シャープペンシルという多機能にバインダークリップまで付けても守るというのは、相当な難しさだっただろうと思います。
ノックボタンのパーツ

ノックボタンは、このように上部からボタンの指に触れる部分までが、エラストマー製の一続きのパーツで作られている。これがノックボタンが戻るときの音を軽減し、操作性も向上させている

しかも、ノックボタンには、芯を戻すときの音を抑えるためのエラストマーパーツが入っていて、そのパーツがそのままノックの指が掛かる部分になっている、といった工夫もあります。

また、低重心を実現するための金属パーツが、グリップ部分全体に、3つのパーツに分かれて搭載されています。低重心といっても、ただペン先を重くするのではなく、手に収まる部分からペン先までを金属にして、重心を手の中に収めるようにすることで実現しているのです。

ただでさえペンの後ろが重くなりがちな多機能ペンですから、なるべく全体が軽く感じられるような重心バランスだと、書きやすく、扱いやすいのです。そういう点でも「ストレスフリー」を考えた構造になっているわけです。

筆者が使っていて感じたのは、ノックボタンの指に当たる部分が、大きめのエラストマー製のボタンになっていることで、芯の出し入れがとても気持ちよく、楽に行えるということです。また、ノックのストロークが少し短くなっているのも気に入っています。

これだけ詰め込んで、従来のブレンシリーズと比べて本体の長さがほとんど変っていないということにも感心します。山本さんによると「本体を少しでも細い印象にするため、わずかに全長を長くした」ということでしたが、よく実現できたものだと思いました。
ガタつきの防止機構付きのペン先

ガタつき軽減のためのペン先の細い穴はブレンシステムのキーポイントのひとつ。この穴から5種類のリフィルが干渉なしにスムーズに出入りするからこその、ストレスフリーなのだ

もちろん、ガタつきも抑えられているし、何より、持ったときのバランスがとても良いので、現在、取材用には、この「ブレン4+S」を1本を携帯しています。デザインと機能と使い勝手が、見事に融合していて、使っていて気持ちがいいのです。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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