お葬式に参列する際の喪服選びとは?
女性向けの喪服を多数取り扱うオンラインショップ「ディノス」によれば、近年は「準喪服」や準喪服より格下の喪服「略喪服」のニーズが高くなっているそうです。
30代、40代、50代の年齢別の選び方の違い、注意点の違い
今回マナー監修を行っていただいた、冠婚葬祭に詳しい中山みゆきさんに年齢別の喪服・ブラックフォーマルの選び方の違い、注意点の違いを伺いました。All About 冠婚葬祭ガイド 中山みゆきさん
AllAboutサイト運営に関わり、結婚式・お中元・お葬式等のマナーに関するアドバイス活動や情報を発信。新聞・雑誌等のメディアへの出演も多数。
◆50代
女性としての経験が増えるミセス層の50代ともなると、自分の両親や高齢の親戚を見送ることが多くなるため、ずっと重宝できるものを選ぶのがよいでしょう。葬儀に参列する回数も増えれば、喪服の出番も増えてくるので、値が張っても上質な生地のものを選びこと。また着脱しやすいもの。例えば前開きのワンピースタイプはいかがでしょうか。年齢が現れやすい部分をカバーしてくれる喪服を選ぶ。たとえば首元(年齢が表れやすい箇所)にフリルなどがあるデザインや立ち襟でカバー。
◆40代
少しずつ体型やボディラインが変化していく時期。サイズに余裕があり、ゆったりしたサイズを選びましょう。ワンピースならお腹周りのラインが多少変化しても目立ちません。セパレートタイプもサイズを調整可能なものを選ぶと体型の変化に対応できます。
◆30代
若々しさがありながらも、出産などで身体の変化が出たり結婚などでライフステージが変わったりする方も多い年代です。体型が変化しても調整できるものや、お腹周りに余裕があるものを選ぶのが無難。ワンピースにジャケットを合わせるワンピースアンサンブルは汎用性が高く、おすすめです。
次に、30代、40代、50代といった年齢別に、おすすめの喪服をご紹介します。
30代に相応しい喪服
30代になると、20代の頃に購入した喪服が少々古く感じるタイミングではないでしょうか。また、出産を経て今までのサイズが合わなくなり、買い替えを検討する方も多いと思います。30代の方が喪服を選ぶ時は、若々しさと落ち着きの両方を兼ね備えたものを選ぶのが正解。レース袖やラッフルフリルなど、フレッシュな印象のものがよく似合います。冠婚葬祭に詳しい中山みゆきさんによると、
「加齢に伴い、少しずつ体形が変化していく30代。後半になると喪服を着る機会も増えてきます。個人的なイチオシはワンピースタイプのアンサンブルです。若い方は喪服を2着以上を持つことは少ないと思いますので、アンサンブルタイプなら、ワンピースとジャケットがセットになっているので季節を問わず着られます」(オールアバウト 冠婚葬祭 ガイド・中山みゆきさん)
慶弔問わず比較的汎用性の高いアイテムをイチオシしましょう。
ブラックフォーマルアンサンブル(ジャケット+ワンピース) 2万5000円~2万7000円(税込)/セシール
ブラックフォーマルジャケット 1万2000円~1万6000円(税込)/セシール
ブラックフォーマル ストレートパンツ 6990円、7,990円(税込)/セシール
パンツも、ソフトでしなやかな風合いのストレッチ性のある素材が使用されています。ウエスト部分は、前はファスナー、両脇はゴム仕様なので、すっきり見えが叶い、楽ちんです。股下72cmと78cmの2丈から選べるので、体型に合わせてセレクトして。サイドには、ポケットが付いているので、ハンカチなどの収納にも便利です。
40代に相応しい喪服
親戚や職場関係の方を見送る機会も多くなってくる40代。この世代に必要なのは、デザイン性に富んだ喪服ではなく、大人女性の品格を表現できる、長く、そして美しく着用可能な品質のよい喪服です。また、自分が喪家側になったときを考慮して、最も格式の高い喪服である正喪服を揃えておくと安心です。冠婚葬祭に詳しい中山みゆきさんによると、
「ゆったりめのアンサンブルスーツが良いでしょう。40代は体形の変化も落ち着き、喪服の買い替えも考える時期。今後長く着られるように上質なものを選ぶことが求められます。10年後も自分に似合う、着てもおかしくないものを考えてみましょう。例えば、体に沿ったデザインよりも、ラインを強調しないアンサンブルタイプがおすすめ。
お勤めの方は特に、会社や取引先での弔事に着用することを想定してオーソドックスなスタイルも考えてみるとよいでしょう。
デザインについていちばん格が高いのは無地で深い黒に見える素材。とはいえ、サテンやリボンがあしらってあったり、刺繍が施してあるものも問題ありませんが、おしゃれを楽しむ場ではないので、あまり華やかにならない程度に。
マナーの範囲でご自身をきれいに見せたいときは、装飾やデザインよりも自分の体型に合っているものを選ぶのがコツです」(オールアバウト 冠婚葬祭 ガイド・中山みゆきさん)
「NIKKE」 マフ クレープジョーゼット カシュクール ワンピース 5万4780円(税込)/DAMA Premium(ディノス)
「首もとのVライン(胸元の角度)がポイント。深く入っているとシャープな印象に。ワンピースについては、個人的な意見として夏の暑い時期のお葬式や法事なら涼しくて着やすいのですが、マナー的にはワンピースにはジャケットを合わせ、上に羽織るものをプラスして着こなしていただくのがおすすめです。温度調節をするためにもワンピースにジャケットの組み合わせはオールシーズン使いやすいでしょう」(オールアバウト 冠婚葬祭 ガイド・中山みゆきさん)
とのことで、ジャケットを持参するのが安心のようです。
ブラックフォーマルアンサンブル 4万9500円(税込)/dinos(ディノス)
ジャケット+ワンピースのアンサンブルスタイルは、真夏を除く3シーズン活躍してくれるので、基本の一着としてぜひワードローブに招き入れたい。エレガントなフリルカラーが気になる首元を程よく隠してくれるうえ、デコルテの華奢見えが叶います。
東京ソワール ブラックフォーマル アンサンブル風ワンピース 3万6300円(税込)/dinos(ディノス)
「ブラックフォーマルを着ていて、汗だくになったりほてりやのぼせを感じた経験があると、涼しい喪服を持っておこうと思うもの。既に喪服を持っていて、二着目として春夏用の購入を考えている方にもおすすめです。年齢とともに隠したくなる首元を、立ち襟でさりげなく隠せるところがポイントですね」(オールアバウト 冠婚葬祭 ガイド・中山みゆきさん)
50代に相応しい喪服
経験を積んだ50代は、社会的立場や周囲との付き合い方が20代や30代とは異なってきます。葬儀に参列する機会も多くなり、弔事におけるしきたりや作法も、教える側へと移行します。本物を知る大人女性は、安っぽいものは避け、格式高い喪服を選ぶのが正解。デザインは、シンプルかつオーソドックスなものなら、間違いありません。冠婚葬祭マナーに詳しい中山みゆきさんによると、
「ポイントは色。深く濃い漆黒を選ぶことが重要です。年齢が上がってくればなおさら、グレーがかった黒は避けるのが吉。同じ黒でもさまざまな濃淡があることを覚えておきましょう。デザイン面では、スカート丈はひざ下より長め、襟元の開きがより小さいものが基本です」(オールアバウト 冠婚葬祭 ガイド・中山みゆきさん)
実際の商品を見ていきましょう。
「NIKKE」 マフシングルジョーゼット ウエストタック ワンピース 4万3780円(税込)/DAMA Premium(ディノス)
「上品であり、可愛さも兼ねた大人のワンピースです。前後身頃のウエストにタックが入っているので引き締まり、すっきりと着用できます。ひざ丈も程よい長さなので、おしゃれ歴を重ねた50代にはぴったりだと思います」(オールアバウト 冠婚葬祭 ガイド・中山みゆきさん)
「NIKKE」 マフ クレープジョーゼット ジャケット 4万9500円(税込)/DAMA Premium(ディノス)
「NIKKE」 マフ クレープジョーゼット フレアスカート 3万1900円(税込)/DAMA Premium(ディノス)
フレアスカートはジャケットと同素材で、座った時にも膝が出ない、安心感のあるロング丈。タイスカートよりも動きやすく、動くたび美しいドレープを描いて揺れるフレアシルエットがエレガントな一枚です。
「喪服でウール100%でありながら、いかにも喪服というイメージがありません。二度染めしたスーパーブラックの深みのある黒が、洗練されたデザインをシックに引き立てています。50代ならではの着こなしに期待です。漆黒のウールで存在感のあるスカート。フレアスカートはしわになりにくく、動きやすいので扱いやすいのも◎。50代以上の方にもおすすめできます」(オールアバウト 冠婚葬祭 ガイド・中山みゆきさん)
続いて、冠婚葬祭・中山みゆきさんに喪服マナーについて詳しく教えていただきました。
正喪服・準喪服・略式の違い
喪服には「正喪服」「準喪服」「略式(略喪服)」があります。意外と知らない人が多く、単に黒を着ていけばいいものではありません。簡単に違いを説明すると、「正喪服」は最も格式高く、主に喪主や遺族など主催する側の人が着る喪服。「準喪服」は一般参列者として着る喪服。「略式(略喪服)」は名前の通り、黒や濃紺などのダークカラーの服装に。
一般的に、一周忌の法事までは「正喪服」、その後、法事の回を追うごとに「略式(略喪服)」になっていきます。
回を追うごとにダークグレーや濃紺など、色も薄れていき、三回忌以降は、地味なワンピースやスーツなどの「平服でも可」ということが多いでしょう。服装に迷うなら同席する親戚や年配の方に尋ねます。
施主側は、基本的に喪服を着ますが、最近では葬儀の時以外は、略式(略喪服)というケースも見られます。ただし、納骨法要や一周忌には、喪服着用することがマナーです。
基本的な喪服マナーと小物やアクセサリー選びについて
まず、慶事と違って弔事はオシャレする場ではないことを心得ておきましょう。◆基本のマナー
身体のラインが出すぎない、流行に左右されない上質なものが基本です。夏でも基本は肌を出さない、式場では上着を着るのが基本です。女性がスーツを着る場合は、ブラウスも黒を選びます。デザインは、襟が開きすぎていないもの。
持ち物・用意するものとしては、数珠、袱紗(ふくさ)、布製バッグ、黒い靴、黒のストッキング(予備も)、無地の白か黒のハンカチ(グレー、紺も可)のハンカチを持っていきましょう。
◆髪型はまとめ髪
当日のヘアはまとめるのが基本。肩より長い髪を下ろしたままにするとだらしなく見えるので、すっきりまとめていきます。ヘアアレンジはハーフアップ、もしくは一つに束ねるのがマナー。髪は黒いゴムやピンなどでシンプルに清楚にまとめましょう。
◆メイクは色の少ない薄化粧
色や下地を控えめにナチュラル仕様に。基本は薄化粧にし、色を控えめに。昔は「方化粧(かたげしょう)」といって口紅を使わないしきたりがあり、「悲しみで紅もひけない」ということを意味していました。しかし現在ではナチュラルな化粧をするのは、むしろマナーとされているので、口紅は薄く塗る程度が無難。反対に、ノーメイクで行くのもフォーマルの場ということで避けたほうが好ましいでしょう。
その他、よくあるNGポイントについて
◆アクセサリーは真珠真珠・パールのネックレスを身につける場合は二重にしないこと。黒真珠でもOKです。
◆カバン
身内であれば布製がマナー。一般参列者であれば、金具がついていないものならレザーでも大丈夫です。光ったり、つや感がないものは必須です。
デザインとしては、ショルダーバックはカジュアルなのでなるべく避けたいところ。会社帰りの場合などやむなくショルダーバッグで参列する場合は、肩に掛けずに紐を結んで持つなど、持ち方を工夫し、ご遺族に失礼にならない心遣いを。
◆ワンピース、スカート丈の長さ
膝下はOKです。やや長め、膝丈からくるぶし丈までの間で選びましょう。
◆黒タイツの選び方
ストッキングは基本的に無地の黒色で。肌が少し透ける程度の濃さのものがベスト。できれば肌が透ける程度の厚さ、30デニール以下がちょうどその透ける程度の境界線。
◆ジェルネイルをしている場合
完全にOFFしなくても、ジェルネイルの上からマットなベージュを塗って対応してもOKです。または、喪服に合う手袋があるので、黒の手袋をはめて参列する手もあります。お焼香の時は外さなければいけないけれど、一瞬なので大丈夫です。立体的なネイルの場合は、最悪絆創膏をはって対処するケースもあります。
◆靴の種類やデザイン、お手入れの注意点
靴は、飾りや光沢のない黒のパンプスを選び、爬虫類などの革製品は、殺生を連想させるのでNGです。
黒を基調とするシンプルなデザインを選びます。ローファーを履くよりも、パンプス。ヒールの高さの目安は、3センチ~5センチ程度が無難です。先の尖っていない無難な形状で、オープントゥでない靴。エナメル素材や派手な金具が目立つものはNG。パンプスのかかとが削れていると音が響いてしまうので気を配りましょう。
小物についてはこれらに当てはまるものをセレクトしていきましょう。
以上、30代、40代、50代といった年齢別に、おすすめの喪服をご紹介しました。お葬式では何事も控えめにするのが基本。ご遺族の気持ちを考慮して、失礼にならない服装を心がけていきましょう。