これぞ理想のハーレーダビッドソン5モデル
「ハーレーダビッドソン」とひとくちに言っても、そのスタイルやタイプはさまざま。「カスタム」という選択肢も手伝って、オーナーの好みによっていろんな姿へと変貌していくのが醍醐味でもあります。星の数ほど存在する「この世に一台だけのハーレーダビッドソン」のなかでも、「これぞハーレー」と呼ばれる完成度に達したハーレーとはどんなものなのか。ハーレー専門媒体での編集経験やフリーランスとして多種多様なハーレーを見てきたガイドが「これぞ」と呼べる珠玉の5モデルをタイプごとにご紹介します。
人気のボバースタイルの究極形
今、旬のハーレーカスタムのスタイルとも言われる「ボバー」。その原点は1950年代アメリカで、当時のレースに持ち込まれたレーサーバイクのスタイルをストリートシーンに落とし込んだものを指します。
ベースとなったのは、現ハーレーのラインナップにも並ぶ人気モデル「ファットボーイ」。前後17インチのディッシュ(皿)ホイールにビッグツインエンジン、サスペンション構造をフレーム下に内蔵するリジッド型ソフテイルフレーム、そしてネイキッドでありながら大柄な体躯という、映画『ターミネーター2』で人気に火がついた一台です。
レーサーは軽くてナンボ。なので、大柄なファットボーイから無駄を取り除くべく、フロントフェンダーは外してしまったうえにリアフェンダーも短く切り落とし、シンプルで軽量なスタイルへと移行しています。ファットボーイのアイコンでありながら車両を重くしているディッシュホイールを思い切って軽量スポークホイール(サイズも前後17インチからフロント19/リア16というクラシックスタイル)にしたのも、ボバースタイルを目指したからこそ。それでいて大柄でパンチ力のある太いタイヤとしているところはショップのセンスと言えますね。
1950年代ハーレーのタンクグラフィックを再現したり、コンパクトなサドルシートをチョイスするなど心憎いディテールの数々。これらがバランスよく組み合わさることでマシンとしての完成度が高まるのです。しっかりとしたコンセプトとカスタムビルダーのセンスがあってこそ実現できる理想的な一台と言えます。
伝統のスプリンガーフォークが似合う一台
古き良き時代のハーレーダビッドソンの象徴とも言われる「スプリンガーフォーク」。ご覧のとおりフロントフォークのスタイルのことを指しており、オイルを用いるという発想がなかった時代に「バネでフロントタイヤが受ける衝撃を吸収させよう」と開発されたもの。現在はアメリカにおいて法的にスプリンガーフォークが禁じられることとなったため、現ラインナップにはスプリンガーモデルは存在しません。だからこそ憧れる人が数多く存在するのです。
ベースモデルがこちら、2000年前半までラインナップされていたスプリンガーモデルのひとつ「スプリンガーソフテイル」。一見するとリアサスペンションが見えない往年のスタイル「リジッド」型のソフテイルフレームとの組み合わせが、半世紀以上も前のアメリカを走っていた当時のハーレーを思い起こさせるよう。
一見すると「変わっているのはカラーリングだけ?」と思えるこの一台、ノーマルモデルと見比べると大柄な前後フェンダーやサドルシート、マフラーなどクラシカルテイストなものへ取り替えられています。反対側に目をやると、エンジンのシリンダーヘッドも1940~1960年代のハーレーの心臓であった「パンヘッドエンジン」風に見えるものに。そしてカラーリングですが、現代テイストのギラついたりグラデーションが派手なものではなく、1950年代の単色ネイビーカラーとしたのも明確なコンセプトから。
スプリンガーフォークが生まれた1950年代のテイストを前面に押し出した、カスタムビルダーの思い描いた世界観からそのまま飛び出してきたようなネイビーモデル。ファッションも合わせれば、ハーレーだからこそ演出できるノスタルジックな気分を思いっきり味わえることでしょう。
飽きないスタンダード・スポーツスター
いわゆるビッグツインモデルと並んでハーレーにラインナップされるカテゴリー「スポーツスター」。ハーレーのなかでは小ぶりながら、そのサイズ感が日本人にとってぴったりなところから スポーツクルーザーとして大いに人気を集めています。そのスポーツスターをよりシンプルに仕上げつつも、1970年代のデザインを与えて「スポーツスターらしく」まとめたのがこの一台です。
ベースモデルはこちら「XL883L」。「L」はロー、つまり車高が低い設定のスポーツスターということ。現ラインナップではXL883N アイアン883が同タイプのモデルになります。滑からで細長いスポーツスタータンクにフロント19/リア16インチというホイールサイズ、そして流れるようなシルエットと、半世紀以上に渡って受け継がれてきたスポーツスターのフォルムをしっかり継承しています。
このカスタムスポーツスター、ローダウンモデルのXL883Lの車高を"あえて"アップさせています。それはオーナー自身が「しっかりスポーツライドできるようにしたい」という要望を持っていたから。ローダウンモデルは足つきが安心するなどのメリットを持つ反面、路面の衝撃を受けた際の度合いが大きかったり、バンク角が少なくなるなどのデメリットも有しています。元々ラインナップに存在したスタンダードモデル「XL883」への回帰をはかった、というのが正解ですね。
スタンダードスタイルへの回帰ということから、ディテールに派手さはありません。しかしながら滑らかなシルエットを生み出すコブラシートを付与し、1970年代モデルのHARLEY-DAVIDSONロゴを与えてテイストを一新するなど、ハーレーの歴史を詳しく知るカスタムビルダーだからこそのまとめ方と言えるツウ好みのマシンです。ここをスタート地点に、さらなるカスタムを楽しむ……というのが、ハーレーライフの王道と言えるのでしょう。
フォルムにこだわった美しきチョッパーモデル
カスタムジャンルのなかでもとりわけよく耳にする「チョッパー」。語源は「チョップ」、いわゆる「削ぎ落とす」から来ているもので、諸説ありますが、半世紀以上前のアメリカで 盗んだバイクがオーナーに見られてもわからないほど あらゆるパーツを削ぎ落としたカスタムがチョッパーと呼ばれるようになったとか。映画『イージーライダー』に出てくるキャプテンアメリカ号がもっとも象徴的なモデルですね。
冒頭にお見せしたカスタムバイクのベースモデルがこちら、人気モデル「ローライダー」。見比べると一目瞭然、リアフェンダーはもちろん、フューエルタンクまでコンパクトなものに変えられています。
ノーマルのローライダーもシルエットが美しいですが、カスタムされたこちらのチョッパーローライダーはまた違った美しさを与えられています。タンクからリアエンドにかけてのシルエットはもはや別物、さらにうず高く持ち上がったロボットハンドルでよりチョッパーモデルとしてのキャラクターを強めています。
ディテールに迫るとわかるのですが、大柄なフューエルタンクをコンパクトなスポーツスター用タンクに載せ替えているのです。カンタンなようですが、板金加工が必要な大掛かりカスタムなのです。「大柄なバイクをより小さく見せる」というチョッパーカスタムの基本どおりとも言える仕上がり、現車を目の当たりにしたときは「ううむ!」と唸らされました。クローム仕上げのエンジンをあえて引き立てるダークな雰囲気もさらに良し!
メガストリート「バガー」入門スタイル
重量が400kgオーバーのモデル群「ツーリングファミリー」。慣れた方でないと取り回しが難しいこの超重量級モデルをあえて街乗り仕様にカスタムする……そんな冗談みたいなカスタムカルチャーがアメリカには存在します。そのスタイルを「バガー」と呼び、文字どおりアメ車のような派手でインパクトのあるデザインを目指すものなのです。
誰がどう見たって「こんなの取り回せるかいな!」とツッコミを入れたくなるこのバイク「ストリートグライド」。このベースモデル自体、本来ロングツーリング仕様であるウルトラを「バガーカスタムで楽しんでもらうため」とストリートテイストにまとめたモデルなのです。リアシート上のトップケースが取り除かれ、フロントホイールを大きくしつつローダウンスタイルにしています。
フロントホイールがさらに大きくなり、リアエンドも流麗かつシャープなデザインに加工されています。こちらはバガーカスタム用のリアパーツが採用されているのですが、ただ取り付けただけでなく、より美しいシルエットとなるよう加工が施されています。
今流行のダークカスタムを方向性としつつ、コントラストをなすビレットパーツを各所に配して見た目でも楽しませよう……という意図を感じます。確かに都心部でこのメガクルーザーを乗り回すオーナーをあまり見かけることはありませんが、それこそカリフォルニアやロサンゼルスにはわんさかいるわけです。ちょっと人とは違うアメリカンマッスルスタイルを楽しみたい人に、このバガースタイルをオススメしたいですね。
まとめ
「ハーレーらしい」という言葉から導き出されるイメージが漠然としているので、改めて「どういうスタイル?」と問われると答えに窮してしまうオーナーも少なくありません。このようにタイプもさまざまあるので、どれが正解で不正解とは言えませんが、ひとつの指標として見ていただければ、誰のハーレーにも「ハーレーらしさ」が宿るのではないかと思います。【関連記事】
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