ハーレーダビッドソンの意地?
孤高のモデル ブレイクアウト
2013年3月、ハーレーダビッドソンのニューモデルとしてデビューしたFXSBブレイクアウト。先日ご紹介したFLSTN ソフテイルデラックスと同じソフテイルファミリーに属したモデルですが、パッと見た感じの印象はデラックスとはずいぶん違うことと思います。240ミリという「スポーツカーか!」と突っ込みたくなるような極太リアタイヤに前方に突き出した長いフロントフォーク、一文字型のドラッグハンドルバー、フォワードコントロール、そして無駄のないフォルム……ソフテイルベースながらチョッパーカスタムスタイルを踏襲したFXシリーズの代表作としてこのFXSBブレイクアウトが存在するのです。「そもそもチョッパーって何?」というところですが、諸説はたくさんあります。有名なのは、1960年代のアメリカにおいて、盗んだバイクをオーナーに見分けられないようにするため、あらゆる部品を削ぎ落す(チョップする)ところがバイクのカスタムスタイルへと昇華していったという説。そのチョッパースタイルのハーレーダビッドソンとして有名なのが、1969年に封切りされたモーターサイクルムービーの金字塔『イージーライダー』に登場するキャプテンアメリカ号です。チョッパーカスタムの代表的スタイルと言っていいでしょう。ちなみに、東日本大震災によってカナダに漂着したことで有名になったハーレーダビッドソンがあったのを覚えている方も多いかと思いますが、モデル名はFXSTBナイトトレインといい、このブレイクアウトと同じFXソフテイル仲間なのです。
さてこのブレイクアウトですが、さまざまな試みを経て誕生したモデルでもあります。その血統をたどっていくと、2008年に登場したFXCWロッカーおよびFXCWCロッカーCというモデルにたどり着きます。右の写真を見てもらえば分かりますが、カンパニーが徹底的にカスタムした『ファクトリーカスタムモデル』と呼ばれるモデルで、「おいおい、メーカーがここまでやっちゃうのかよ!」と、当時は大きな反響を呼びました。そう、ハーレーに乗る楽しみのひとつがカスタムなのですが、ここまで完成度が高いと、「これ以上、どこをカスタムしていいのやら」と同モデルのオーナーらも頭を悩ませるほどのレベルに達していた至高のモデルだったのです。
ロッカーCが姿を消してまもなく、2013年にFXSBSE CVO ブレイクアウトというモデルが登場しました。名前こそ同じモデルですが、ハーレーダビッドソンのモデルラインナップでも最上級シリーズとして冠される『CVO』(カスタム・ヴィークル・オペレーション)としてのデビューがその始まりでした。通常、CVOとして登場するのはFLHTCUウルトラやFLHRロードキング、FXDFファットボブなど、ベースとなるモデルありきで、それをカスタマイズしたものばかり。このCVOブレイクアウトはフレームこそロッカー仕様とされるものの、まったく新しいモデルとしていきなりCVOデビューを果たしたのです。
CVOブレイクアウトはその申し分ないスタイリングと完成度の高さから世界の注目を集める存在となり、一気に人気モデルの仲間入りを果たしました。そして、CVOブレイクアウトのもととなるベーシックモデルとして、このFXSBブレイクアウトが登場。新顔ながらカンパニーのさまざまな試みから誕生したという経緯を持つブレイクアウト、当然ながら各部に特徴的なパーツを配した個性派モデルです。次は、特徴的な各部位とライドフィールについてご紹介していきましょう。