第二回廊から13mの急勾配の階段を登って入る「第三回廊」
インドシナ半島のほぼ中心、カンボジアのシェムリアップの郊外に、3層の回廊をもつ巨大な寺院、「アンコール・ワット」が建造されています。最上層の第三回廊には、現在のカンボジアの国旗の図案となっている塔堂がそびえ建っています。第三回廊には、第二回廊から13mの急勾配の階段を登って入ります。階段は垂直に近い角度でそそり立ち、真上を見上げ断崖をよじ登るような感じです。一段一段を踏みしめるように登ると、天に向かって歩みを刻んでいるような感覚となります。
第三回廊は、4つの沐浴池と十字の回廊で構成されています。そして、回廊の4隅と中央に、砲弾のような形をした尖塔が5塔、青空に向かって聳立しています。プラサートと呼ばれるクメール式の塔堂です。中央祠堂は、回廊の床からは34m、地上からは65mの高さでそびえ、平面的な広がりに垂直的なスケールを加えています。
アンコール・ワットを建立したスールヤヴァルマン2世は、自らの絶大な王権を神格化し、独自の宇宙観をこの寺院で表現しようとしたのです。
中央祠堂は、神々が宿るメール山、須弥山を象徴したものです。祠堂の周囲に層を重ねる回廊は、雄大なヒマラヤ連峰、環濠は無限の広がりをもった大洋を表現しています。中央祠堂にはヒンドゥー教の三大神、ヴィシュヌ神が降臨し、王と神が一体化する場所であったと考えられています。往時にはここで、厳かな儀式が行われたと伝えられています。
回廊の4隅の祠堂と中央祠堂は、4つの直角二等辺三角形を作り上げ、幾何学的な安定感を生み出しています。おのおのの祠堂の外壁には、ヒンドゥー教の神々の像や、装飾的なレリーフが刻みこまれ、堂々とした構造物の細部には、繊細な装飾が満ち溢れています。
■アンコールワット
住所:Angkor Archaeological Park, Siem Reap, Cambodia
営業時間:終日
定休日:年中無休
ホームページ:アンコールワット
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