Savers use no leverage, investors use leverage
節約家と違って投資家はレバレッジを効かせられる
Savers use no leverage, investors use leverage 「節約家と違って投資家はレバレッジを効かせられる」
不況続きで世の中はすっかり節約モード。まるでお金を使うのは罪とでも言わんばかりに、外食だって洋服だって安いものばかりが売れています。でも、それで良いの?と警鐘を鳴らすのが「金持ち父さん」ことロバート・キヨサキ氏。節約なんてとんでもない!とばかりに言ったセリフが、“Savers use no leverage, investors use leverage”というものです。“Saver”、“Investor”はそれぞれ「節約家」、「投資家」を指しますが、ちょっと分かりにくいのが“leverage”(レバレッジ)という言葉。ヒントは単語の中に隠されている“lever”という言葉。日本語に訳すならば、いわゆる「レバー(操作棒)」ですが、そのココロは?
と言う時に思い浮かべて欲しいのが、テコの原理です。支点・力点・作用点なんて言葉を中学校の理科で習ったかと思いますが、要するに長い棒(レバー)を使えば、小さい力で重いものを動かせると言うことです。これをマネーに応用したのがキヨサキ流の表現で、投資家は小さい元手で大きく儲けることができる、ということを指します。
一方節約はと言えば、仮に500円節約したとして、それにレバレッジがかけられるわけではありません。むしろ、節約ばかりしているとストレスが溜まって、最後にはハジケて大散財しちゃったりして…。金持ち父さんの世界観では、節約はまったくと言っていいほど重視されていません(納める税金を「節約」する、つまり節税を除いて)。
さあ、では、レバレッジをかけられる取引にはどのようなものがあるでしょうか?代表的なものと言えば、FX(外国為替証拠金取引)。元手となる「証拠金」は少額でも、実際にはその50倍もの金額で取引ができます。はたまた、キヨサキ氏が好きな不動産投資でも、自己資金は少額でも銀行から借金をすることで大きな物件を買って大もうけすることができますね。企業の経営だって、元手(資本金)は小さくても、銀行からお金を借りればそれで大きなビジネスができて、これまたレバレッジを効かせることができます。ちなみに、全産業を通しての企業の自己資本比率の平均値は37.0%(経済産業省、平成18年企業活動基本調査)。ということは、おおむね元手の3倍ぐらいのレバレッジをかけてビジネスをしていることになります。
「なるほど。じゃあさっそくレバレッジを効かせて投資するか!」と思ったら、ちょっと待って!利益が出ている時にはあれほどありがたいレバレッジ効果は、損失の時には投資家に牙をむくのです。たとえば、FXの例で考えてみましょう。元手が10万円で取引をして、仮に円とドルの為替レートが自分の想定と違う方に1円変わったら、ザックリ計算すると約1,000円の損失です。まあ、自分でリスクをとった結果ですからしょうがない…と思える範囲。
でも、もしこのとき50倍のレバレッジをかけていたら?当然、損失額も50倍ですから5万円。為替レートがたった1円動いただけで、元手の50%が一瞬にして吹っ飛んでしまうわけで、もし元手が100万円とかではじめていたらと思うと想像を超えたリスクの大きさにゾッとします。そう、レバレッジとリスクは表裏一体の関係にあって、「おいしいとこどり」はないのです。
実際、個人投資家があまりに大きくレバレッジをかけるのはお勧めできなくて、最近為替が大きく動いた昨年9月ごろは、FXのトレーダーの間ではパニックが起きていました。このために、投資家保護の観点から金融庁も規制をかけるべきだと動いており、今年の8月からはFXのレバレッジ上限が25倍までに限定されます。
と言うことで、金持ち父さんのセリフをもう一度おさらいすると、
“Savers use no leverage, investors use leverage”
というのはウソではありません。
でも、その背後にある、
“Savers take no RISK, investors take RISK”
というのも忘れてはなりません。FXの取引例で見たとおり、レバレッジとリスクは分かちがたいものなのですから。
この連載のバックボーンとなる考え方、「経済ダイヤモンドモデル」は、その名の通り経済に関することなので、レバレッジなんか関係ない…と思いがちですが、そんなことはありません。レバレッジは、投資だけでなくありとあらゆる場面で使える原則、つまり、「マネーの公理」です。
一国の経済運営もその例外ではなく、たとえば、景気を良くするために公共事業を行うというのは良くある話なのですが、ここでもレバレッジが効くと言われています。つまり、公共事業が与える経済効果は、実際に国が使った予算以上を期待できて、実際の公共事業→それが誰かの給料に回る→給料が増えた人はお金を使いたくなる→別の場所で消費を活発になる、というサイクルを通してレバレッジが効いているのです(経済学の用語では「乗数効果」と言います)。