Yankee victory in the series has historically been bullish for the stock market.
歴史上、ニューヨーク・ヤンキーズがワールドシリーズで優勝すると、株式市場は強気になった
bullish for the stock market 「株式市場が強気になる」
明日から始まる日本シリーズ。純粋に楽しみでもありますが、投資をする人ならば株価に与える影響も考えたいもの。そんな時にヒントになるのが今日の表現で、米国においてはニューヨーク・ヤンキースがワールドシリーズに優勝した年は、株価が上がるとのデータがあるのです。1936年から2008年までの73年間でヤンキースが勝った年は22回。その年のS&P500株価指数は、平均すると10%上昇しているとのこと。かなりの「勝率」と言えますね。
英語に関しては、実は今回の例文はちょっと難易度が高いものです。というのは、スポーツ関連の「専門用語」がありますからね。“Yankee victory”、“in the series”などスポーツ特有の表現は、ニューヨーク・ヤンキースが米国を代表する人気プロ野球チームであることや、全米ナンバーワンを決めるトーナメントが「ワールドシリーズ (The World Series)」と呼ばれることを知らなければチンプンカンプンでしょう。なので、本文を読んで分からなかった人も気にせずに、ぜひ英文の「背後」にある考え方に触れてみましょう。
というカギを解くのが、なぜヤンキースがワールドシリーズで優勝すると株価は上がるのかという疑問。もちろん偶然の要素はありますが、あえて考えるならば、それだけ経済への波及効果が大きいと言うことでしょう。ニューヨークという、人口800万人を超える全米最大の都市に本拠地をかまえており、しかもその人気は全国区、というか、全世界的。昨期まで松井秀喜選手が所属していたこともあり、日本でも人気が高いですよね。
そうすると、世界各国でもグッズが売れますし、あるいはニュースで見たことがある人もいるかと思いますが、優勝パレードをやった日には、数十万!とも言われる人が集まります。となれば、その人たちを目当てにしたお土産屋さん、ホテル、飲食店などでは売上アップ間違いなし。「経済効果」なんて言いますが、たかがスポーツというなかれ、人気チームの優勝が経済に与えるインパクトは侮れないものがあるのです。
翻って、日本シリーズ。ここまでの議論からも分かるとおり、人気と伝統に裏打ちされたチームが優勝する方が経済効果があるので、その分株価も上がりそう。さらに、日本の場合は、優勝チームの業種も関係してきます。米国ではプロ野球チームのオーナーは個人である場合が多いのであまり関係ないのですが、日本では優勝したチームの親会社が「優勝記念セール」をやる場合がありますよね。
そんな時、どんな業種・業態の会社が一番経済波及効果が高いのか、今後の株価を占うヒントになるかもしれません。ファンの数を度外視すれば、新聞を発行している会社よりもお菓子を作っている会社の方が経済効果は大きそうですし、あるいは今年は実現しませんでしたが、インターネットのショッピングモールを運営している楽天に関連する楽天イーグルスが日本一に輝く日が来たら、インターネットのショップで一斉に記念セールが始まって、経済効果も莫大になるかもしれません。
もちろん、○○チームが優勝したら株価が絶対上がる、と言えるほど経済は単純なものではありません。でも、一見複雑な経済を身近に感じるためにも、「どちらのチームが優勝した方が経済効果は大きいのか」なんて視点を持ちながらスポーツも観戦したいですね。
この連載のバックボーンとなる考え方、経済ダイヤモンドモデルの中で、今回は「株価」にフォーカスがあてられました。ただ、株価はそれ自体で存在しているわけではありません。その背後にある実体を持った企業の業績や、将来の見通しこそが株価を押し上げる要因であることは念頭においておくべきでしょう。