"Gold is the only actual bull market currently. But it’s certainly not safe and, it’s not going to last forever."
金は最近の相場の中では唯一強気だが、それが永遠に続くわけじゃないし、安全でないことは間違いない。
Gold is the only actual bull market currently 「金は最近の相場の中では唯一強気」
金(gold)の価格が最近急上昇してるって知ってました?
2004年には1グラムあたり1,500円ぐらいだったのが、10月に入ってからはなんと!3,800円以上をつけて、2倍以上の値上がりになっています。しかも、さらに時間をさかのぼって10年前と比べると、値上がり幅は3倍以上で、この間の株価の低迷を考えると、金を買っていた人は押さえようとしても顔がにやけてしまいますね。ちなみに、1グラムって重さのイメージってつきます?そう、ちょうど1円玉1個分ぐらいですから、「もしこれが金だったら3,800円かー」、と考えると、そのインパクトの大きさが分かるでしょう。
じゃあ、金はこのまま値上がりを続けるの?と言う時に、チェックしたいのが今日のセリフ。世界三大投資家の一人、ジョージ・ソロス氏のもので、これ以上の金の上昇はないと考えているようです。前半の“bull market”と言う表現の“bull”は「雄牛」。ブルファイト=「闘牛」に出てくる勇ましい雄牛が、ツノを下から上に突き上げて攻撃する様子が、まるで価格の上昇を示すグラフのようで、値上がりが続く状態を指します。
しかし、問題なのは後半。“last forever”=「永遠に続く」を否定しているので、現在の上昇基調がいずれは終わることを予想しているのです。おまけに、“not safe”=「安全ではない」ですから、なにやら暴落すら予想しているようですが…。ちなみに、価格が下がることを英語では“bear”と言って、今度はクマがカギ爪を上から下に振り下ろして攻撃する様子が、株価が下がる時のチャートの形に似ていますね。
でも、金価格が下がると言う見込に、なぜソロス氏はここまで自信を持っているのでしょうか?実は、これが分かると“not safe”という英語に込められた皮肉が読み解けて、ソロス氏の言葉はますます味わい深いものになります。というか、そもそも金相場はなんでこんなに上がっちゃったの?というのに先に答えると、それは「他に選択肢がなかったから」。
伝統的な投資先である株も債券も不動産も、現状ではどれも価格の低迷が続いていて、投資家にとっては手を出したくなるようなものではありません。かといって、手元に現金をジャラジャラ持っててもしょうがないし、銀行に預けたって利息はごくわずかなうえに、こないだなんかはペイオフ騒動がありました。どこかに「安全な」投資先はないのか…と言う時に、消去法的に金が浮上してきたのです。ちなみに、こういう発想を指して、「金が逃避先になっている」なんて言いますね。
加えて、日本と中国の間も領土問題でなにやらギクシャクしていて…。「有事(ゆうじ)の金」なんて言ったりしますが、「事」つまり、国際的な紛争が起こると、金が買われるのは昔からの習慣で、これは、どんなことがあっても、どこの国に行っても通用という金の持つ力といえるでしょう。実際、日本で金価格が最高値をつけたのは1980年で、「ソ連によるアフガニスタン侵攻」なんていう、国際的な大問題が発生した年でありました。もちろん日本と中国の関係は、修復の兆しもあるのでそこまで悪化しないとは思いますが、それでも金の値段が上がっていく間接的な要因になりそうです。
いや、それは分かるけど、最近の金はいくらなんでも値上がりしすぎじゃない?
というのが、ソロス氏の立場。投資家の多くが「安全性」を求めて金を買ったら値上がりしすぎて、いつの間にかバブルになっているのではないか…。結果として、金本来の価値である「安全性」が損なわれてしまっていることを皮肉を交えて解説しているのが今日の本文なのです。
この連載のバックボーンに据えられている「経済ダイヤモンドモデル」の中から、今回は「物価」にフォーカスがあてられました。他の3つの要素に投資をするよりも金が安全と思われていて、まるで、「物価」を表す金色(黄色)の丸におカネが吸い寄せられているようです。ただ、経済ダイヤモンドモデルには自動的にもとの状態に戻ろうというはたらき(ビルトイン・スタビライザー)がありますから、早いか遅いかは別にして、金に集まったおカネはまた離れていくのではないかと思います。平常時ならば、ね。