レディースファッション/ファッションショップ情報

キッチュな80年代のリアリティ

「80年代のファッション」が、意味を変え、キッチュにスタイリングされる時、そこには独特の刺激が存在する。バブルを経験した後では、やたらと空虚に見えてしまう80年代の盛り上がり。だがそこに行き着くまでには、東京のファッションが異様な興奮を生んでいた時期があった。日本が金満になり、そして破綻する前の話。

執筆者:森田 剛

「トレンドは80年代」なんて言われると、ゾッとした。あのバブルで金ピカの時代のファッションだけは、戻ってきてほしくないと思っていた(シーズンに入るまでは)。


当時六本木に行くと、外車のオープンカーの助手席に花束を置き、どこかのパーティへと向かう、全身をイタリア物のスーツでキメたコテコテな人に必ず遭遇した。まだクラブというものが文化圏域になかった時代に、栄えていたのは金メッキとミラーボールでケバケバしく飾りたてられたディスコ(!)で、そこに入るには「服装チェック」があり、ジーンズをはいていると、「黒服」と呼ばれた化粧をした男の店員に、いちゃもんをつけられ、入店拒否されるのだった。

もうお気付きの方もいると思うが、サッシュベルトにしても、過剰な装飾にしても、ボディ・コンシャスにしても、現在の服に80年代のテイストを加える事は、スタイリングにわざとキッチュ(悪趣味的)な要素をとり入れるものとして捉えられている。当時は真面 目にオシャレだとされていた物が、意味を変えているのだ。

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