海外では“わび、さび”、“ミニマリズム”という印象の強い日本のアート、カルチャーだが、実際はそうばかりではない。その違った一面、華麗でゴージャスな日本文化にスポットを当てた展覧会「日本の美―かざり(Kazari:Decoration and Display in Japan, 15th-19th Centuries)がNYのジャパンソサエティ・ギャラリーで開催中だ。
左)友禅染小袖(18世紀)、右)当時の女性たちの風俗を描いた屏風(17世紀中期)
これは、室町時代(1333-1573年)、桃山時代(1573-1615年)、江戸時代(1615-1868年)の各時代の絵画、屏風、陶磁器、衣装などを展示するもの。日本をはじめ、アメリカのメトロポリタン美術館、英国の大英博物館の所蔵品も含まれるというラインナップだ。中でも見ごたえのあるのは、江戸時代の武士やその妻たちの着物、また19世紀の歌舞伎の衣装など。当時のファッション考現学としての見方や、現在のファッショントレンドとの関連を考えるのも面白い。
会場風景。右は19世紀中期の火消し羽織。とても繊細な刺し子のステッチが美しい。
特に17世紀後半からの元禄時代(1688-1704年)に本阿弥光悦(1558-1637年)、俵屋宗達(1640年代)、尾形光琳(1658-1716年)らの手がけた絵画や着物のパターンは豪華絢爛なもので、クラフトとアートが見事に結びついた時代だったといえる。
左は18~19世紀初期の歌舞伎衣装。右は葛飾北斎が1830~40年代に手がけた「鳳凰」。
ハンドメイド感覚に溢れたキルトのように、江戸時代の火消しの羽織に施された刺し子のテクニック、まるでジョン・ガリアーノのオートクチュールコレクションに出てきそうな豪華でグラマラスな歌舞伎の衣装…。他、葛飾北斎(1760-1849)の作品のパターンや色使いにも、今、ルイヴィトンとのコラボレーションで話題の村上隆の作品との共通性があるように見えた。
右)金、銀、そして珊瑚を使った豪華なかんざし。よく見ると梅や鳥籠がついている。左)19世紀の櫛たち。桜や長崎の出島のモチーフが面白い。
ここ数シーズン、トム・フォードの手がけるグッチなどに登場した「着物」風デザインのトレンドもそうだし、今、改めて日本の着物とそれにまつわる素材、色、縫製のテクニックが新鮮に感じられる。また、かんざしや櫛などは今尚、使ってみたい!と思わせるような美しさだ。この展示で、また新たなトレンドが生み出されるかもしれない。日本美術ファンならずとも、ファッションに興味のある人は見逃せない展覧会である。
■ 日本の美―かざり Kazari:Decoration and Display in Japan 15th-19th Centuries
Japan Society Gallery (333 East 47th Street, between 1 & 2 Avenues / 212-832-1155 / 月曜休館、火~金曜11:00~18:00、土日11:00~17:00 / 12月31日まで、2003年2月4日~4月13日まではロンドン大英博物館で開催)
●ジャパンソサエティ Official Website
●大英博物館 Official Website
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