スルー力とは?
枝のようにしなる「スルー力」を身につけよう |
スルー力とは、その名の通り「受け流す力」です。それは単に無視するなどという単純なものではありません。具体的に見ていきましょう。
スルー力の究極は、「やらないで放っておく」こと
最も無駄な時間の使い方は、意味のない仕事や誰の役にも立たない仕事をやることです。しかし、気まぐれとか思いつきでモノを言う上司がいる場合は、せっかく時間と労力を割いたのに無駄だった、という事態に直面しやすくなります。優秀なビジネスマンの知人に、上司から同じ指示を2回言われたら取りかかるという人がいます。彼は上司が思いつきで仕事の指示を出す傾向を知っていたため、「?」と思える指示についてはそんな風に対処しています。1回の指示だけだと、その場の思いつきで言うこともあり、すぐ忘れてしまうのですが、2回言われたら本当にしなければならない仕事だと捉えてすぐに取りかかるそうです。
私もかつて、毎週の会議に提出するレポートをやめてみたことがあります。「必要ですか?」とストレートに聞くと、「とりあえず出しておいて」になるので、ひっそりとやめてみたのです。本当に必要な資料であれば、誰かからクレームが来るから、その時にはやはり必要だとして出せばよいと思っていました。
結局……誰からもクレームが来ることもなく、自分の仕事を一つ減らすことができました。結局私は、誰も使っていない資料、なくても困らない資料を毎週一生懸命作っていたということです。
あえてすぐに動かず放っておく。無駄だなと思える仕事は一旦やめてみる。もちろん、本当にやらなくてもいい仕事かどうかを見極めることが大事ですし、周囲に確認することも必要です。上司や顧客との信頼関係が強くない状況ではリスクを伴います。
ですから、周囲との関係性を見極めて使えば、思いのほか、無駄な仕事を回避することにもつながります。
部下やサポートスタッフに「スルー」で振る
自分にしかできない仕事や、自分がやってこそ価値がある仕事だけに絞り、それ以外の仕事は全て部下やアルバイトに任せたり外注に出したりしましょう。自分で全部抱えてしまっては、時間がいくらあっても足りませんから。本当に自分がすべき仕事かどうかを見極め、自分じゃなくても問題ない仕事であれば、他の人に振り、自分の時間を脅かされないようにすることも大切です。
ただ誤解しないでいただきたいのは、単なるコピー取りであっても、自分の立ち位置によって、投資の時間か浪費の時間かが変わってくるということです。例えば自分が新人社員であれば、こうした小さな作業を確実にこなすことは、仕事の基礎を学んだり自分の信用力をつけたりするための立派な投資の時間です。
しかし、あなたが役職者で意思決定をする立場であれば、コピー取りは時間の浪費です。会社もあなたにそんなことをさせるために高い給料を払っているのではありませんから。
スルーで振るといっても、振った仕事のクオリティや責任は自分にありますから、任せて何もしない、というのではなく、適切な指示とアウトプットのチェックは必要でしょう。
他人の批判や噂をスルーする
組織の中には相手のモチベーションを下げる天才が少なからずいます。それは無責任な批評家や、頭ごなしの否定論者です。また、社外での活躍を始めると、決まってネット上で批判する輩が出現します。彼らはあなたの仕事や企画をこてんぱんに否定し、勝手な理屈で論評します。「そんなの無意味」「売れるはずがない」「つまらない」「話にならない」「価値がない」……。
そうした声は、私たちの仕事に対するモチベーションを大きく下げ、やる気をそぎ、落ち込ませ、悩ませ、私たちに無駄な時間を生じさせます。でも、こんなことで落ち込むのは非常にもったいないことです。
なぜなら、そのほとんどが、その人の単なる勝手な憶測に過ぎず、根拠がないからです。根拠がありそうに見えても、その人の価値観という限定された中での発言ですから、見方を変えれば当たらないことも多いのです。実際、意味のある批評というのは、あなたの仕事に新しい付加価値を与える提言を伴っているものですから。
もちろん、批判は改善のタマゴでもあるので、謙虚に受け入れる姿勢も必要です。無視したりマヒしたりしてはいけません。しかし、自分のモチベーションを維持するためには、ムーディ勝山ではないですが、「左から右に受け流す」ことも時として必要なのです。
そして、スルー力を身につけないと、日本大虐殺が起こる……?次ページへ