今回は、「PDA事始め」をお休みして、ソニーのクリエについて振り返ってみたいと思います。
ソニーがクリエを選択したことの意義
ソニーがPDA端末を選択したのは、当時人気の自社パソコンシリーズであるバイオの周辺機器という側面もあったと言えます。クリエ登場以前にも、バイオシリーズには周辺機器としての端末「バイオ インフォキャリー」が提供されていました。ソニーが目指したのは、バイオ専用の単機能ではなく、バイオとも連携できるより進んだ端末だったのでしょう。
この時点で、ソニーには選択肢は、2つあったはずです。一つは、現在のPalm OS互換機。もう一つはPocket PCです。
当時のPalmOS機は、PIM端末としては完成していましたが、通信やAV機能には非対応でした。一方、Pocket PCは立ち上がったばかりで、PIM機能こそ未成熟でしたが、通信・AV機能への対応はすで準備されていました。
そんな中、採用されたのは、Paim OS互換機でした。発表されたクリエ初号機は、カラー液晶採用やフォトビュワーなど、当時にPalm OS互換機と比べて明らかにAV機能を強化されたものでした。
初号機を見て考えれば、OSレベルでAV機能をサポートされてないPalm OSを採用するより、Pocket PCを採用するほうが、有利な点がいくつもあることは明らかだったと思います。
Palmを選択する上でのソニーの負担はいくつかあります。
OSレベルでAV機能を対応されてないため、AV機能を利用する端末を目指す場合は独自拡張が必要となります。また、当時のAV機能を拡張する端末としては、PalmOSのハードウェアは非力でありました。さらに、Windows環境のバイオブランドでのソリューションを展開していることで、Windows連携ではPocketPCのほいが親和性が高いと言える。
こうした負担をあえて選択してまでPalm OS互換機を選択したのには、社内的にもいろいろな要因があったのだとは思います。
理由は、どうであれソニーは安易な道ではなく、ソニーらしいチャレンジを選択し、新しい未来を切り開く道を選択したのです。
クリエが残した業績とは 現在のPalmへの礎
初号機以降のクリエの活躍は、私がここで述べるまでもないと思いますが、簡単に見直しておきます。クリエが残した業績は、Palm OSの限界をこえた新機能の搭載です。Palm OSを拡張することで、可能な限り市場で求められる新しい機能を実装し、次期Palm OSの拡張に大きく貢献してきたことです。カラー化、ハイレゾ化、音楽再生、画像表示や動画再生などの機能だけでなく、リモコンや様々な筐体デザイン、周辺機器による活用の提案など、多くのアイデアと機能を提供してきました。こうしたクリエのチャレンジ無くして現在のPalm OSの機能拡張は十分な品質を向上できなかったと思います。
ソニーがおこなった数々の独自拡張は、その後のPalm OSに活かされ現在のPalm OSに生き続けています。こうした活動は、単なる販売パートナー企業としての枠ではなく、非常にPalmという世界に貢献をしたと言えます。最近の経営方針では、いろいろと厳しい意見も寄せられているソニーですが、クリエに関してはソニーらしい活動であった評価できるものだと思っています。
クリエが撤退せざるを得ない理由とは
パソコンと連携する端末としてのPalmの機能が停滞したことによる市場の停滞が一番大きな要因でもあると思います。これは日本市場に限った問題では無いのですが、海外ではスマートフォンという音声通話融合機への展開が同時に進められていることで、PDAは新しいステージに向かっています。しかし、日本市場では、キャリアの問題が解決されておらず、スマートフォンという次のステージに移行できない現状の問題が大きいように思います。
Palm OSも新バージョンからは、スマートフォンを想定した設計が中心となることで、魅力的な機能やサービスは、クリエに搭載できなくなってきていました。,
それでもAVビュワー機能を強化や手帳端末への回帰など、様々な試みが展開されましたが、世界での大きな流れに追随できない状況でのクリエの開発・展開が限界を迎えてしまったという印象はぬぐえません。
クリエでの培った技術やノウハウは、PSP や動画プレーヤーなどで活かされていってほしいと願ってもいます。
ソニー、そしてクリエに送る言葉
ソニーならびにクリエが、日本のPalm OS互換機という市場、ユーザーに残した財産は大きく偉大なものであったことは、多くのユーザーが認知されていることと思います。クリエの生産が完了することは、残念なことではありますが、時代とは移りゆくから美しく、輝くものです。当然、いつかは、どのようなものでも時代というステージから退場をする時はやってきます。クリエも、今そのときを迎えたのだと私は考えています。
ソニーならびにクリエの企画・開発・製造・販売などプロダクトに関わったすべての方々に、この場を借りて、感謝の意を込めてお礼を言わせていただきます。
今まで、楽しい夢をありがとう。そしてお疲れ様でした。
最後に、クリエとは違う形で、私たちユーザーが夢をみれる新しいプロダクトが登場することを祈っております。