爬虫類・両生類/餌動物飼育繁殖図鑑

餌用ウズラがマウスよりもおすすめ?マウスと栄養成分比較

今回は、ヘビキーパーには気になる「ウズラ」についてご紹介します。「飼育・繁殖」というより、餌ウズラの餌としての可能性を考えてみました。ちょっとグロい画像もありますのでご注意下さい。

執筆者:星野 一三雄

 
体 長 200mm 生息地 繁殖地:東日本、中国東北部、沿海州 越冬地:西日本、中国南部 用 途 ヘビ一般を始め中~大型の肉食性爬虫類 使用方法 冷凍したものを解凍して静置・ピンセットなどで誘いながら、など 解 説 (ここでの解説は日本に分布するニホンウズラに関するものです)キジ科の渡り鳥。キジ科の鳥は留鳥が多いため、本種のように渡りをするのは珍しい。茂みが多い草地や農耕地などで生活をし、地表で昆虫類や穀類などを食べる雑食性。鳴き声は繁殖期のオスで「クックルルクー」、メスは「ピピィー」。野生のウズラは年に7~14個ほどの卵しか産まないが、採卵用に養殖されている品種は多産系の改良品種であり、年間に200~300個ほどを産む。日本では愛知県を中心に卵を得るために養殖されている。両爬の餌として、孵化直後のヒナが冷凍されて利用される。野生個体は環境省レッドデータリストの「情報不足」のカテゴリーに属する。  
 

ウズラ(成鳥)の栄養成分

可食部100gあたりに換算
成分 ウズラ成鳥
エネルギー(kcal) 235
水分(g) 65.4
タンパク質(g) 24.7
脂質(g) 11.0
炭水化物糖質(g) 3.4
ビタミンA(IU) 2432 B1 (mg) データなし B2 (mg) B3 (mg) C (mg) D (mg) E (IU) 2.3
無機質 (mg) カリウム データなし ナトリウム 鉄 2.6 リン データなし カルシウム 1187 
 

なぜ餌用のウズラ?

ヘビ飼育の方々ならば、すでにおなじみであります。
そう。マウスの代替食としてです。
一般にヘビの餌には冷凍のマウスが使われるのですが、ウズラは同程度のサイズのマウスと比べると「安価」で売られていることが多いのです。
調べてみると、ピンクマウスのM程度で比較すると、マウスの方が平均して60円/匹、一方のウズラのヒナならば35円/羽程度で販売されています。ですから、体長1m未満のヘビならばピンクマウスよりもウズラの方が安上がりということになります。

ただし、ここでよく議論されるのがウズラの栄養評価です。
もはや、両爬飼育趣味界のセオリー
マウスは完全食品
が、浸透していますのでそれ以外の生き物を餌にすることは躊躇してしまうようになっています。特に、生まれたばかりの鳥類のヒナは体内に多量の卵黄を残しているそうなので、ヘビにとってはコレステロールの過剰摂取につながることが懸念されています。
それと、これはあくまで私個人の思いこみなのですが、ウズラの場合は体全体が羽毛に覆われていますので、なんだか食べることができる部分なんてほんのちょっぴりしかないのでは...と感じられてしまうんですよね。羽毛は食べても消化できませんから。
 

餌としてのウズラ

さて、そんな疑問を持ってしまったが最後、理科の教員という職業柄、ちょっと調べてみました。

とりあえずやってみたのが「冷凍ウズラの羽毛は体重の何%あるのか」です。
方法は簡単。
冷凍ウズラの羽毛を、ひたすらむしり取ってみました。
これって結構簡単だろうとタカをくくっていたのですが、苦労しました。と言うか挫折しました。
だって、羽をむしっていると皮膚まで「ずるり」って剥けてしまうんですよ...夢に出てきそうです。
それと、ウズラの羽毛って、いわゆるフェザーってよりもダウンって感じで、とにかく軽い。部屋の中がウズラの羽毛だらけになってしまいました。
それでも、どうにかこうにか頭の羽毛を除いて(だって頭の羽毛を抜こうとすると、頭の皮が必ず剥がれてしまうもので...)、ほとんどの羽毛をむしり取りました。
 
はい。画像はコチラ!↓
 
俺、何やってんだろう...
冷凍ウズラの羽毛を取り去ったもの


で、重さの変化を調べてみたら羽をむしり取る前は6.6g、羽をむしり取ったとは6.2gでしたので、単純計算すると羽毛はウズラの体重の3%を占めていることになります。想像していた以上に羽毛は少なかったことがわかりました。さすが鳥類、羽毛は軽くできているんですね。そもそも鳥なんですから羽が重かったら飛べないって。

だいたいネット上で見た感じだと、餌用の冷凍ウズラ雛は15円/羽くらいがもっとも安い値段のようですから、仮に今回のように1羽が6.2gであるとすれば1円当たりの体重は0.41g/円ということになります。
一方、マウスの場合大きさ、重さともに冷凍ウズラのヒナと対比されるべきはピンクマウスL~ファジーといったところでしょう。ピンクマウスLは4g/匹くらいで35~50円くらい、ファジーは6g/匹くらいで45~80円くらいですから、1円当たりの体重はピンクLで0.1g/円、ファジーで0.13g/円ということになります。
乾燥重量は冷凍ウズラが水分75%(資料では65%になっていますが、これは成鳥なので、ちょっと多めに見積もって)引きとすると1.6gですから15円/羽とすると1円当たりは0.11g/円。ファジーの場合は水分80%引きで1.2gですから35円/匹とすると1円当たりは0.03g/円になります。
ですから乾燥重量で考えたとしても、決してマウスに引けをとらないコストパフォーマンスに優れた餌であると言えるかもしれません。

では、その他の栄養素はどうでしょう。
ここでは外国の論文から拾ってきたデータでマウス(ファジー)とウズラ(成鳥)の栄養成分を比較してみましょう。ウズラのヒナの栄養成分データは残念ながら見つかりませんでしたので、あくまで参考ということでご了承下さい。
 
ウズラ(成鳥)とマウス(ファジー)の栄養成分比較 可食部100gあたりに換算
成分 ウズラ(成鳥) マウス(ファジー)
エネルギー(kcal) 235 121
水分(g) 65.4 81.8
タンパク質(g) 24.7 8.0
脂質(g) 11.0 5.5
炭水化物糖質(g) 3.4 1.5
ビタミン A (IU) 2432 562
B1 (mg) データなし
B2 (mg)
B3 (mg)
C (mg)
D (mg)
E (IU) 2.3 3.2
無機質 (mg) カリウム データなし
ナトリウム
2.6 2.8
リン データなし
カルシウム 1187 268
 


あくまでもウズラの成鳥ですから、これだけで判断はできませんが、少なくともウズラのヒナはマウスの代用食くらいにはなりそうな気がします。もちろん、経験上からさまざまな判断ができるとは思いますが。
ファジーとウズラの比較
左:冷凍ウズラ 右:冷凍ファジーマウス
 

ウズラを飼う

最初にお断りしたように、今回は基本的にウズラのヘビの餌の代用食としての可能性を模索することを一番の目的にしていますので、飼育繁殖まではあまり詳しく載せる必要はないのですが、一応念のため。ただし私は未だにまともに鳥類を飼育した経験がありません。なんだかトンチンカンなことを書いていたらゴメンナサイ。
結構凛々しい
ウズラの成鳥


飼育ケージ
ケージ、文字通り「鳥かご」を使います。サイズは中サイズ以上。かつては「鶉篭」という専用のケージがあったようですが、現在は市販されていないようです。
鳥かごを使う場合は、下に敷く「すのこ」のようなネットは不要です。足をはさんで骨折するようです。
ただし、調べてみるとどうやら我々には飼育ケースとしておなじみの「衣装ケース」も良いようです。マウス飼育のようにバーベキューネットをフタにすればできそうです。
注意したいのは、良くジャンプするようなので、ケージにはできるだけ高さがある方が良いようです。通気が確保できるのならば天井にタオルやスポンジを設置するといいということです。

床材
新聞紙を敷くだけでも良いようですが、新聞紙をちぎったりして汚れるので小動物用の牧草やシュレッダーくずを敷く事が多いようです。ただし細かいと散らかすので、なるべく長いものがよいようです。

温度
夏の過度の暑さと冬の寒さに対する対策は必要です。爬虫類の温度管理に準じていいでしょう。


基本的に植物質中心でミネラル補給必須です。「ウズラの餌」なるものが市販されているらしいですので、それを主食にすれば良いようです。ただしご多分にもれず、配合飼料はカロリー高めということらしいので、その辺は注意した方がよいとのこと。
鳥の飼育はあまり詳しくないのですが、おなじみらしい「ボレイ粉」というのがあるそうで、カルシウムの供給源だそうです。カキの殻を粉砕したものらしいのですが、鳥関係のサイトを見るとあまり洗浄されていないということで、洗浄してから使う方もいるようです。

アクセサリー
ケージ内には餌容器、水容器を設置します。散らかしたり、ウズラが入って汚してしまわないような工夫が必要です。
必須なのが「砂浴び」をするためのスペースです。砂浴びでは、かなり散らかすので体全体が入る大きさのプラケなどに浅く砂を敷いておくと良いでしょう。

病気
鳥インフルエンザでもわかるように、家禽には「法定伝染病」があります。飼育しているウズラが万一、それらの病気になってしまった場合には届け出をする義務があります。
 

餌用ウズラを殖やすには

ウズラは、実はマウスやラットに匹敵するほどの優れた実験動物であるそうです。特に年間に200卵以上も産むわけですから、餌動物として向いていると言えば、向いています。以下にライフサイクル、繁殖及び孵化、ヒナの育て方に関して触れておきます。

ライフサイクル
産卵~孵化・・・17~21日
孵化~性成熟・・・6週間前後
その後25時間おきに1個を産卵(養鶉場で長日管理下)
1年程度で産卵のピーク終了
寿命は10年程度だが、採卵目的で飼育された場合は2年程度


繁殖
基本的に雌雄がそろっていれば繁殖に至ります。ただし、繁殖期のオスはガンガンメスにアタックをするので、1羽のオスに対して、複数のメスを入れたハーレムにする必要があります。

孵化
野生のウズラは、もちろん産んだ卵をメスが抱卵します。しかし家禽化されたウズラは抱卵をしませんので、人工孵化を行います。孵卵器はネット上でウズラ飼育に関するサイトに、さまざまな工夫をこらして紹介されていますので、参考にするといいでしょう。
爬虫類の孵化と異なる点は以下の2点です。
1.37℃前後に保温する
2.一日に数回、転卵(卵の上下を変える)する

産卵後17~21日で孵化します。

ヒナの飼育
ヒナの飼育のポイントは「保温」です。文字通りヒヨコ電球などで35~37℃に保温をします。また過度の乾燥は禁物なので、濡れたティッシュなどを置いておくと良いようです。
孵化後2~3日は体内の卵黄を使っていますので、餌は食わないようです。
ヒナの餌は成鳥と同じで良いのですが、消化を助けるために水で練って与えるようです。ただし、高温に保っていますので、すぐに傷みますのでマメな交換を心がけます。
最初は自分から餌を食べないことも多いようなので、そんな場合は棒の先などに餌をつけてヒナの口に持っていって与えます。

と言うわけで、私にとって不慣れな鳥飼育に関して書いてみましたが、詳しくはネット上にウズラ飼育のサイトがたくさんあり、とても参考になりますので探してみて下さい。

何にしても餌用に自家繁殖させるには、鳴き声とか世話の大変さとかから現実味は薄いと思いますが、マウスとバランス良く使ったりするには十分な可能性を持っていると考えられます。ヘビの餌代に頭を痛めているみなさんは、ぜひご検討下さい!

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※ペットは、種類や体格(体重、サイズ、成長)などにより個体差があります。記事内容は全ての個体へ一様に当てはまるわけではありません。

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